今回のゲストはフリーライターの菅野久美子さん。

一人誰にも看取られずに、その最期を迎える痛ましい「孤独死」にスポット当てて、この度書籍を出版されました。

何故このジャンルにスポットを当てられたのか。その真相を伺ってみました。


Photo:えがお写真館

孤独死にスポットを当てたきっかけ

高木優一:最新作「孤独死大国」や週刊誌の記事を拝読しましたが、強烈かつ目を覆うような内容でした。何故女性の菅野さんがこのジャンルを取材しようと思ったのですか?


菅野久美子:事故物件掲載サイト「大島てる」を取材するにあたり室内でお亡くなりになった事故物件の中でも、とりわけ「孤独死」物件が多いことに気づかされたんです。それがきっかけですね。



高木優一:因みに今の日本で孤独死される方ってどれ位いらっしゃるんですか?


菅野久美子:ニッセイ基礎研究所の調査では、年間約3万人と言われています。そして、この孤独死が、30年前に比べて、約7倍以上にも膨れ上がっているのです。(東京都監察医務院のデータより)


高木優一:えー。それは驚愕の数字ですね。



菅野久美子:取材を重ねるにあたり、孤独死の増加要因は生涯未婚率の上昇、単身生活者の急増、非正規雇用など様々な社会的要因が挙げられる事が見えてきました。しかし、なんといっても、一番の問題となっているのは、会社に代表されるような社縁や、血縁、地縁、趣味縁など、諸々の縁から隔絶された末に起こる「社会的孤立」なんです。


高木優一:いやー考えさせられるなぁ・・・。



実は高齢者だけではない孤独死の現状

菅野久美子:高木さん、孤独死する方って高齢者だけだと思っていませんか?


高木優一:はい。


菅野久美子:実は取材するにあたって意外と団塊世代ジュニアの方々が多いことに気づかされたんです。



高木優一:へぇ。まさに私の世代じゃないですか!


菅野久美子:そうなんです。離婚後の引きこもりや病気・けが、非正規雇用による経済的不安、過労や不摂生が大きな要因ですね。しかし、最も重要な要因はというと、やはり人と人との繋がりが希薄になっていることです。


高木優一:なるほど。



菅野久美子:高木さんの周りにはいらっしゃらないかもしれませんが、ニッセイ基礎研究所によると、実は団塊ジュニアや、ゆとり世代の方が、この「社会的孤立リスク」が団塊世代などに比べて圧倒的に高く、団塊ジュニア世代に至っては、8人に1人が孤独死予備軍という恐るべきデータが出ているんです。


高木優一:そうなんですか。


写真を見て驚いた孤独死現場の惨状

高木優一:実際私もこのお仕事をさせて頂いている以上、そういう現場には何度か遭遇していますが、取材されたお部屋の写真を拝見して目を覆いました。


菅野久美子:ホントにそうですね。まさに現代ニッポンの病巣そのものですよ。日本の高齢者の“4人に1人は、友人が1人もいない”という内閣府のデータもありますし、私が独自に概算したところ、なんと日本全国で1000万人が孤立状態、つまり孤独死予備軍である事が分かったんです。それを裏付けるかのように、平成28年度の高齢社会白書によると、「孤独死(孤立死)」を身近な問題だと感じる人は単身世帯の高齢者でゆうに4割を超えているんですよ。



高木優一:これは立派な社会問題ですね。


菅野久美子:しかし、国の対策はといえば、何ともお粗末なもので、厚生労働省はこの孤独死を巡って、明確な定義はもとより、現段階においては、何ら実態把握をしていないというのが現状なんです。つまり、これから私や高木さんが高齢者になった時に待ち受けるのは、隣近所で続々と腐乱死体や白骨死体が発見される光景が日常化し、誰もがそのことに特段の関心を持たなくなってしまう〝孤独死大国〟になってしまうという事。


高木優一:うわー、頭痛くなってきた。それにしてもこのニッチなジャンルを徹底的に取材して問題提起のメスを入れて下さった菅野さんには拍手を送りたい。本当に今日は考えさせられる一日でした。これからの日本を憂うと同時に勉強になりましたよ。有難うございました。