まちの仕事人インタビュー
 
EDGEMATRIX株式会社 代表取締役社長・代表取締役副社長 太田 洋・本橋 信也 (おおた ひろし・もとはし しんや) さん インタビュー

太田さんご経歴

モバイルコミュニケーション分野において、いくつもの「業界初」を導入してきました。Jフォン(後のボーダフォン・ジャパン、現ソフトバンクモバイル)のサービス開発部門における12年間は、最新のアーキテクチャや様々な新サービスの開拓に携わりました。日本発のショート・メッセージ・サービス(SMS)、携帯電話ブラウザによるJ-Skyモバイルインターネット・サービス、シンセサイザーチップ内蔵の着信音ダウンロード・サービス、ロケーションベース・サービス(J-SkyステーションとJ-ナビ)、世界初のカメラ付き携帯による写真転送サービス(写メール)や3D Javaゲームの開発など、同氏が関わったサービスや技術は現在、世界中でスタンダードとなっています。

本橋さんご経歴

EDGEMATRIXで経営戦略、経営計画、事業開発の事業運営全般に責任を有するCOOであり、前職の大手通信事業者時代を含み、経営企画とマネジメントの分野において30年を超える経験を有しています。一橋大学卒業後、国際電信電話株式会社(現KDDI)に入社し、サービス企画、経営計画、社長秘書など経営中枢部門における約20年を経て、ボーダフォン・ジャパンに移籍。同社においてグローバル戦略チームの一員として日本の経営戦略開発の責任者であると同時に、再建プロジェクトなどのリーダーを務めました。南カリフォルニア大学にて経営学の修士号を取得しています。



最近、駐車券のないコインパーキングが増えたと思いませんか?実はその裏には「エッジAI」という最新技術が隠れています。今回は、映像エッジAIの最前線で活躍するEDGEMATRIX株式会社の太田さん、本橋さんにお話を伺い、難しいITの話を抜きにして、最先端技術が私たちの暮らしをどう豊かにしてくれるのか、その秘密に迫りました。



第1章:「いつかはパンクする」シリコンバレー流の膨大なデータと向き合い生まれた「現場(エッジ)に任せる」

インタビュアー(細井): まず、EDGEMATRIX様がどのような会社なのか、そして太田さん、本橋さんが会社を立ち上げられたきっかけや想いについて教えてください。


EDGEMATRIX(太田さん・本橋さん): EDGEMATRIXは、カメラが捉えた映像をその場(現場=エッジ)でAIが分析し、社会の安心や便利に役立てる「映像エッジAI」製品とソリューションを提供している会社です。


私たちがこの事業を立ち上げた原点は、以前、シリコンバレーに本社を置くスタートアップで働いていた時の経験に遡ります。当時は、クラウド上に集まる膨大なデータを処理するソフトウェアを開発提供していました。しかし、世の中で動画や写真のデータが爆発的に増え、今後は街の防犯カメラなどの映像データもさらに集まってくる状況を目の当たりにしたのです。


その時、「これほど膨大な映像データを、すべて5G/LTEのような無線通信で送ったり、データセンターに集めたりするのは、どう考えても物理的に無理がある、いつかはパンクする」と限界を感じました。


そこで考えたのが、「すべての映像をそのまま送るのではなく、カメラが設置される現場(エッジ)でAIを使えばいいのではないか」というアイデアです。映像データを丸ごと送るのではなく、現場のAIが映像を分析し、「今、何が映っているか」「危険な状態が起きていないか」といった“映像の内容(意味)”だけを抽出して活用する仕組みです。


この「重たいデータは現場のAIに任せて、必要な結果だけを活用する」という気づきが、現在のEDGEMATRIXの原点になっています。


EDGEMATRIX代表取締役社長  太田洋さん(右)、同社代表取締役副社長  本橋信也さん(左)


インタビュアー: 通信や最先端技術の第一線で活躍されてきたお二人が、今「エッジAI」に最も可能性を感じている理由は何ですか?


EDGEMATRIX: 先ほどお話しした「重たい映像データを送らなくて済む」ということに加えて、私たちがエッジAIに最も可能性を感じているのは**「事柄が起きたその瞬間にアクションが起こせる(リアルタイム性)」**という点です。


例えば、効率的で安全・安心な街づくりを目指す「スマートシティ」には、このリアルタイム性が欠かせません。街に設置されたカメラが「人の目」の代わりとなり、盗難などの犯罪や、人が転倒したといった危険を瞬時に察知して、その場で警告を出すことができます。また、人が集まって混雑している場所があれば、即座にその情報を流すことで人の流れをスムーズにする(平準化する)ことも可能です。


実は、皆さんの身近なところでも当社のエッジAIは活躍しています。最近、駐車券がなくナンバープレートを読み取るだけで入退場できるコインパーキングや、大規模な駐車場で「満車」「混雑」「空車」といった案内表示が出ているのを見たことがありませんか? あれらもまさに、現場に設置されたカメラの映像をAIがその場で分析し、瞬時に役立てている身近な例なんです。


このように、生活の現場ですぐに役立ち、私たちの街をより便利で安全なものに変えていける点に、エッジAIの大きな可能性を感じています。


第2章:クラウドは「脳」、エッジは「反射神経」?例え話でスッキリわかるAIの違い 

インタビュアー: 「エッジAIという言葉は少し難しく聴こえますが、通常のクラウドAIと比べてどのような違いや凄さがあるのでしょうか? 読者にわかりやすい例えなどがあれば教えてください。


EDGEMATRIX: エッジAIと通常のクラウドAIの違いは、人間の体で例えると**「反射神経」と「脳」の違い**によく似ています。


クラウドAIは、言うなれば「脳」です。膨大な知識を持っていて複雑なことを深く考えるのは得意ですが、目や手足から集まった情報をすべて脳まで送ってから「どう動くか」を指示していては、通信の時間がかかってしまいます。 一方、エッジAIは「反射神経」です。熱いヤカンに触れた時、いちいち「脳」に確認しなくても、その場(エッジ)で瞬時に「熱い!」と判断して手を引っ込めますよね。先ほどの「その瞬間にアクションを起こせる」というエッジAIの凄さは、まさにこの反射神経のように、現場で即座に判断して動ける点にあります。


もうひとつ、会社組織の「現場の優秀な部下」と「本社の社長」に例えることもできます。 現場のすべての出来事(すべての映像データ)を、いちいち本社の社長(クラウド)に報告して指示を仰いでいたら、社長の処理能力はパンクしてしまいますし、現場の対応も遅れます。これが先ほどお話しした「クラウドの限界」です。


しかし、現場に「エッジAI」という優秀な部下がいれば、彼がその場で映像を見て「あ、ここで人が倒れている」と判断し、瞬時に警告などの対処をしてくれます。そして本社(クラウド)には「〇〇で人が倒れた」という事実(映像の内容)だけを報告すれば済みます。 つまり、すべての情報を本社に送るのではなく、現場(エッジ)で賢くスピーディーに判断して動けるのが「エッジAI」の最大の凄さです。


インタビュアー: 映像データを現場(エッジ)で即座に処理できることで、プライバシーの保護や処理速度の面でどんなメリットが生まれますか?


EDGEMATRIX: 先ほどお話しした「処理速度(リアルタイム性)」に加えて、もうひとつの非常に重要なメリットが「プライバシーの保護」です。


例えば、街や店舗で「どのくらい人が集まっているか」「人の流れはどうなっているか」を調べたいとします。このとき、カメラで撮影した人々の顔や姿が映った映像をそのままクラウドに送って保存してしまうと、個人情報がどこでどう扱われるのか、プライバシーの観点で不安や問題が生じる可能性があります。


しかし、現場にいる「エッジAI」を使えば、その場で映像を分析し、「何人通過したか」という単なる「数字(統計データ)」に変換してから送ることができます。

 つまり、顔や姿といった個人を特定する映像はクラウドに送られず、結果のデータだけが活用されます。このように、必要な情報だけを安全に抽出し、人々のプライバシーをしっかりと守りながら便利な仕組みを作れるのが、エッジAIの大きな強みなのです。


第3章:魔法のようにエレベーターが開く?私たちの身近で活躍する「見守る目」 

インタビュアー: 実際の街中や店舗、施設など、私たちの身近な場所でEDGEMATRIXの技術はどのように役立てられているのでしょうか?


EDGEMATRIX: 私たちの技術は、皆さんの生活の身近なところ、特に「安心」や「便利」が求められる医療や介護の現場で活躍し始めています。


例えば、ある大規模な医療センターでは、患者さんがロビーに到着すると、ボタンを押さなくても自動的にエレベーターが開く仕組みが導入され、大変喜ばれています。まるで魔法のようですが、実はこれもエッジAIの力です。ロビーに設置されたカメラの映像をAIがその場で分析し、「人が来た」と認識して瞬時にエレベーターを呼んでいるのです。荷物で手が塞がっている時や、車椅子の方にとっても非常に便利な仕組みです。


また、介護施設では、高齢者の方の安全を守るために活用されています。万が一、お年寄りが転倒してしまった場合、カメラ映像からAIが「転倒」という危険な状態を瞬時に検知し、離れた場所にいる看護師さんのスマートフォンにすぐさま通知を送ります。


常に人の目で見守り続けるのは限界がありますが、エッジAIが「もう一つの目」となって見守ることで、万が一の事態にもすぐ駆けつけることができます。先ほどお話しした「瞬時にアクションを起こせる」という強みと、「プライバシーを守る(映像を誰かがじっと監視しているわけではない)」という特徴が、こうした命や安全に関わる現場でしっかりと活かされています。


インタビュアー: これまで導入された現場で、特に地域の方々や事業者様から「喜ばれたエピソード」があれば教えてください。


EDGEMATRIX: 非常に喜んでいただけた例として、コロナ禍で開催されたイベントでの取り組みがあります。


当時は感染対策のため、会場の混雑状況に応じて来場者の入場制限を行う必要がありました。しかし、これをスタッフがずっと目で見て監視し続けるのは大変な負担です。かといって「一律で何人まで」と厳しく制限してしまうと、せっかくのイベントの売上も落ち込んでしまいます。


そこで、会場のカメラ映像からエッジAIがリアルタイムで「今、どのくらい混雑しているか」を判断し、運営担当者のスマートフォンにその状況を直接知らせる仕組みを導入しました。これにより、スタッフが常時監視する負担がなくなっただけでなく、「今は空いてきたから、少し多めに入場してもらおう」といった、実際の混雑の波に合わせた柔軟な入退場コントロールができるようになりました。


結果として、一律に制限するよりもイベントの売上が上がり、さらに運営スタッフの負担も大きく減ったということで、事業者様から大変喜んでいただけました。私たちの技術が、安心とビジネスの両立に貢献できた嬉しいエピソードです。この技術は、今後の地域のお祭りや花火大会、あるいは災害時の避難所の混雑状況の把握など、身近な地域イベントや課題にもそのまま活かすことができます。


第4章:事後確認から「未然に防ぐ」へ。エッジAIが創る安心・快適な未来 

インタビュアー: 地域の小規模な事業者や自治体が、AIや新しい技術を自分たちの課題解決に取り入れていくためには、まず何から始めるべきだと思われますか?


EDGEMATRIX: まずは「小さく始めてみる」ということであれば、最近手軽に安価で手に入るようになった、カメラ本体にAIが内蔵されている「AIカメラ」から試してみるのが良いと思います。例えば、お店の屋内や個人宅など、限定的な場所での防犯対策であれば、こうした手軽な製品が最適です。


一方で、私たちの提供するような本格的な「エッジAI」は、非常に高いAI処理能力と耐久性を備えているのが特徴です。そのため、屋外や広い範囲で大量の人や車を分析するなど、より高度で複雑な処理が必要な場面で真価を発揮します。


例えば、観光地の道路や駐車場での車両混雑の検知、地域イベントでの人の流れの把握、歴史ある寺社など重要施設での煙・炎の検知、さらには大雨の際のため池や河川の水位監視などですね。


つまり、屋内などの限定的な課題は手軽なAIカメラから始めつつ、街全体を巻き込むような「地域ぐるみで解決すべき大きな課題」に対しては、私たちのようなタフで賢いエッジAIを活用していただく。そんな風に、目的に合わせて技術を使い分けていくのが良いのではないでしょうか。


インタビュアー: 最後に、今後EDGEMATRIX様としてどのような「街の未来」「安心・快適な暮らし」を作っていきたいか、展望をお聞かせください。


EDGEMATRIX: 現在の街の防犯カメラや監視カメラの多くは、「予期せぬことが起きた後」に録画映像を見返すという、事後確認のために使われていますよね。しかし、今ある既存のカメラに当社の「Edge AI Box」という装置を取り付けるだけで、カメラが「危険を未然に防ぐ頼もしいパートナー」へと生まれ変わります。

映像から危険や異常をAIが瞬時に検知し、その場で警鐘を鳴らしたり、皆さんのスマートフォンに直接通知したりすることで、事故や事件を未然に防いだり、被害の拡大を食い止めたりすることができるようになります。もちろん、誰かがずっと映像を監視しているわけではなく、AIが異常だけを検知して教えてくれるので、プライバシーの面でも安心です。


さらに、防犯といった安全面だけでなく、日常の「快適さ」を作るお手伝いもできます。例えば、街や建物の混雑状況をAIがリアルタイムに把握することで、ビルの空調管理を無駄なく最適化したり、混雑を避けたスムーズな移動を促して日々のストレスを大きく減らすことも可能です。


このように、私たちのエッジAI技術を社会に広げていくことで、皆さんが安全・安心で、毎日を気持ちよく過ごせる生活を実現する手助けをしたいと考えています。EDGEMATRIXがその社会基盤(インフラ)となり、日本国内にとどまらず、世界中の人々のより良い暮らしに貢献していくことが私たちの大きな目標です。




インタビュー後記

エッジAIという普段あまり聞き慣れない単語に対して楽しみと無知すぎる不安な思いがありました。

なんの事かさっぱりわからない状態から、とても分かりやすいご説明と例えで、

普段沢山の場所でエッジAIに助けられていた事が判明!

とても便利な社会をつくってくれていて、自分では発想できない事を考えてくださって、

日々生活が支えられています。

今後更なるエッジAIの拡大に期待大です。

ありがとうございました!

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*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。