女がいて、男がいる。男の足が急な斜面の土を踏みしめ登る。ストラップサンダルを履いた女の足がそれに続き、よろめき、彼女が差し出した手が、男の手によって引き上げられる。丘の上で女はギターを手にしてつま弾き始める。青いバックパックからハンチング帽を取り出し地面に逆さに置いた男が、彼女の隣にフレームインしてくる。女と男の全体像が、初めてひとつのフレームに収まる。そして歌が始まる。「ジャングルの中、広大なジャングルの中で、ライオンは今夜眠る……」。
 彼らの歌が続くなか、カットが変わり視界の開けた駐車場が映し出される。バスがやってきて、観光客たちを吐き出す。観光客の手が帽子にチップを投げ入れる。風にあおられた横断幕のようなものが飛んでいき、鳴り続けていた歌から女の声とギターの音が消える......と思った瞬間、女がそのショットの中に駆け込んでくる。男の歌声はしばし続いて、止む。
 それが『はかな(儚)き道』のオープニングである。彼らが歌っていた森のような場所は、見晴らしのいい駐車場の空間とつながっている。ただそれだけで心が震える。(結城秀勇「出会いと別れの歌」)

全文は当館で販売中の映画批評ZINE、nobody MUG8号(500円)に掲載。

『儚き道』12/17(日)・21(木) 20:15〜
★上映後、トークあり!
12/17(日)清原惟さん (映画監督・映像作家)、rikoさん (『NASTY FILM』発行人)

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43 いいね! ('23/12/16 08:01 時点)