まちの仕事人インタビュー
着物を楽しむ人を増やす
和創塾 代表・和装イメージコンサルタント 上杉 惠理子 (うえすぎ えりこ) さん インタビュー

1980年生まれ。東京都出身。世田谷区在住。一橋大学大学院を卒業後、環境ビジネスでの勤務を経て、株式会社星野リゾートに入社。日本各地の地域魅力を発信する観光業のミッションとマーケティングの面白さにのめりこむ。独立後は大の着物好きを活かし、現代に合わせた和装の価値を伝えるべく『和創塾~きもので魅せるもうひとりの自分~』を主宰。2019年4月「弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門」(ぱる出版)、2022年9月「教養としての着物」(自由国民社)を出版。

着物の良さを広めたい

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

もともと起業したいと考えていました。私は留学や大学院の進学などで学生時代が少し長く、社会人になったタイミングは、ちょうどビジネスが社会に変化を与える動きが盛んだった時期に重なりました。漠然と、いつか自分もビジネスをやりたいと考えていましたが、なかなかテーマが見つからず悩む日々。自分らしく愛を持てるテーマと考えたときに、交換留学中の国際交流で浴衣を着て、周りから「素敵だね!」と言われたことを思い出し、海外で仕事をするうえでも話題にできる『着物』にすることを思いつきました。自ら着付けを学び、週末には普段着として着物を着ていたことで、周りからも「ステキね」「私も着たいな」と言われていたので、私の知る着物の良さを多くの人に伝えたいと考え、『和創塾~きもので魅せるもうひとりの自分~』を主宰することに。



ただ、事業として始めたころは、収入も不安定で、正直しんどかったですね。SNSやメルマガ、体験セミナーや個別相談など、着物のトータルコンサルティングの講座など、集客の手法を広げたり、サービス領域を広げたりしてはみたものの、なかなか収益を安定させることはできませんでした。転機になったのは2019年に『弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門』  (ぱる出版)を出版したこと。マーケティングの相談をされる方が、着物に興味を持つことが増えたり、着物のコンサルティングをした人から、マーケティングの相談を受けるなど、2つのビジネスでお客さまと横断的に関わることが増えました。2022年に『教養としての着物』(自由国民社)を出版したことで、最近では着物の問い合わせが急増しています。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

主宰している『和創塾』は、“自分で着物を着こなすため、知識とノウハウをまるっと学ぶ”をコンセプトに、4ヶ月間(全8回)の講座を行っています。着物の素材や種類などの基礎知識や、着物を着ているときのTPOについて学ぶことができ、講座には個別コンサルティングが3回ついています。家の箪笥を開けて、生徒さんに合った着物を選んであげたり、初めて買う着物(ファースト着物)選びに同行することもありますね。イメージを聞いて、何を選んで、どこで買えば良いかをアドバイスすることも。スーツと同じく、着物もオーダーメイドでサイズを決めていくうえ、長く着こなすためには、自分でできるメンテナンスを身につけることが好ましいため、それらの指導もしています。


着物のイロハが身についてきた生徒さんからは、この講座で「着物に関する“冒険の書”を渡されたイメージ」と話していました。着物は、人それぞれが自分のイメージと、シーンに合わせて着こなせばよいと考えています。生徒さんには「好きにやっていいよ」と伝えることが多いですね。着物は洋服よりも色や素材に幅があるため、最高の自己表現ツールです。スニーカーに合わせたりと、みんな自由に着物を楽しんでいます。

着こなしの正解を自分で決める

どんなお客さまからのご依頼が多いですか?

『和創塾』は現在7年目で約100人。下高井戸駅近くのセミナールームで、1回につき3~5人で行っています。参加者は女性が多く、年齢層としては30代~40代が多いですね。半分が会社員、もう半分が起業家や経営者です。人前に出る機会が多い人や、SNSでの露出や発信が多い人に参加いただいています。「おばあちゃんの着物を着たい」との思いから、若い方にもご参加いただいています。最年少は26歳、最年長は72歳。着物のパーティーやイベントを開催すると、生徒さんがたくさん参加してくれていますが、個性的な着こなしの人と、正統派な着こなしの人が入り交じり、本当に楽しい空間です。着こなしに正解はありません。「どうしたら良いですか?」との質問については「私はコレって、自分で決めるのよ」とお伝えしています。基礎知識を身につけたうえで、自分でコーディネートを決めることは、ビジネスや生活にも応用のできるスキルで、着物を着るようになって、決断の質が上がったという人もいるくらいです。


仕事をするうえで心がけていることはありますか?

まずは“自分が着物を楽しむ”ことを心がけています。私がそうであったように「楽しそう!」と思うことで、行動に移せることは多いので、私が着物を楽しく着こなしている様子を発信することで、興味を持ってもらえると嬉しいですね。知識を得てから着物に触れると、それまでとは違った感覚を持つことができます。業界としては、老舗がつぶれたり、後継者がいないなど、暗い話題が多いのですが、本を書くときに取材した生地の産地で働く人など、着物の関係者には本当に素晴らしい人たちが多いので、業界の皆さんの力にもなりたいです。これからも着物を着て産地巡りを続けます。私の活動を通して、着物に出逢って「感動した!」と言ってもらえる人を増やしたいですね。


インタビュー後記

50年以上前の振袖を着ることにワクワクしたり、「科(しな)の木から作られた科布の帯が、ゆっくりと色が変わり、手触りがなめらかになっていくことを想うだけで、40年後を見るために長生きしたい」と目を輝かせる上杉さん。彼女の日常は常に着物と共にある。堅苦しい伝統や、しきたりに縛られることなく、自由に着物を着こなし、楽しむスタイルは、これからの時代にとても合っている。

お問い合わせ

名前:上杉惠理子

Mail: info@kimono-strategy.com

HP: https://kimono-strategy.com/

書籍:「教養としての着物」 https://www.amazon.co.jp/dp/4426128293

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。