
東京都三軒茶屋にある、都内最大級の蔵書数を誇る漫画図書館「まんがの図書館 ガリレオ」を運営する三田たたみさん。店内には約4万冊もの漫画が並び、一部の絶版作品を含む貴重な蔵書。「漫画は文化財」と語る三田さんが、かつてアルバイトとして働いていた漫画喫茶が閉店の危機にあった際、「この文化は守らなければ」と一念発起して事業を引き継ぎ、現在の「まんがの図書館 ガリレオ」を立ち上げた。漫画の力で人をつなぎ、地域を照らすあたたかな拠点として、子どもからお年寄りまで幅広い世代に親しまれている。
今の仕事を始めたきっかけを教えてください
大学卒業後、私は工業用ボイラーのメーカーに就職し、水処理装置の担当をしておりました。その経験から水に関する実用書を出版し、「お水の先生」として講演活動を行っていた時期もあります。また一方で、異世界転生もののライトノベル作家を目指して執筆活動を続けるなど、本や物語への思いは途切れることなく持ち続けておりました。
そしてあるとき、アルバイトをしていた漫画喫茶の閉店が決まったのです。4万冊の漫画という、まさに文化財のような空間が失われようとしている現実に直面したとき、「これは自分が守らなければ」と強く感じました。まだ読めていない本もたくさんありましたし、この空間が自分や誰かにとってどれほど大切なものであったかに改めて気づいた瞬間でもありました。思い切って会社を立ち上げ、店舗を買い取り、オーナーとしてこの仕事を始めることになりました。
施設立ち上げの経緯を教えてください
閉店の知らせを聞いてから、まずは会社を設立する手続きを急いで進めました。不動産屋さんとも交渉を重ね、わずか1週間で法人を立ち上げ、店舗を正式に引き継ぐ形になりました。蔵書はすでに4万冊近くありましたので、ゼロから集めたわけではありませんが、その分責任も大きく、維持管理の難しさも感じました。赤字で手放されたお店を引き継ぐというのは正直とても大変でしたが、それ以上に「ここを残すことに意味がある」と信じて動きました。
現在は地域の方々や商工会、社会福祉協議会などと連携しながら活動しています。例えば「ぷらっとカフェ」という居場所づくりの取り組みにも関わらせていただいており、単なる図書館としてだけではなく、福祉的な意味でも地域に貢献できる場所を目指しています。
誰もが安心して立ち寄れるような空間づくりにも取り組んでいます。
施設の特徴を教えてください
まず何よりも特徴的なのは、蔵書の多さです。都内最大級といって差し支えない4万冊の漫画は、読み応えも圧倒的で、特に絶版作品や古い漫画を多く取り揃えている点が魅力です。新刊だけでなく、今ではなかなか手に入らないような名作も並んでいるので、「ここでしか出会えない一冊」があるというのが大きな強みだと思っています。
また、店の雰囲気は明るく開放的で、小学生が一人で安心して来られるような環境を意識してつくっています。「図書館と一緒で集中力が上がる」と言ってくださる方もいて、心地よく本と向き合える“チルスポット”としても親しまれています。来店される方は幼稚園児から80代までと非常に幅広く、世代を超えて漫画が人をつなぐ力を実感しています。
お仕事で大切にしていることを教えてください
私が大切にしているのは、「この場所が誰かの心のよりどころになること」です。現実には、リストラや学校でのトラブル、引きこもりなど、さまざまな困難を抱えている方がいます。そういう方々が社会との接点を取り戻すきっかけとして、この場所が機能すれば嬉しいと思っています。実際に、地域の社会福祉協議会さんと連携して、「ぷらっとカフェ」というイベントを定期的に開催し、誰もが安心して立ち寄れるような空間づくりにも取り組んでいます。
漫画はエンタメであると同時に、学びや癒しの源でもあります。感動したり、笑ったり、心が動いたり。そういった“心の栄養”を、ここから届けていけるよう心がけています。
この仕事のどんなところが好きですか?
一番のやりがいは、やはりお客様との交流です。常連のお客様が増えてきて、「ここに来ると落ち着く」「この前読んだ作品、面白かったです」など声をかけてくださるたびに、「やっていて良かったな」と思います。
また、「ここがあったから救われた」と言ってくださる方もいて、本当に励まされます。漫画という媒体が持つ力を信じているからこそ、それを届ける場所を続けていく意味があると思っています。
今後やりたいこと等、展望を教えてください
今、特に力を入れているのが「子ども漫画図書館」という取り組みです。これは、いわゆる「小4の壁」と言われる、小学校中学年以降の子どもたちが安心して過ごせる居場所が少ないという問題に着目したもので、夏休みなどの長期休暇期間にスタートしました。
子ども食堂の漫画版のようなイメージで、安心して過ごせて、漫画に親しめる場所を目指しています。今後は、こうした活動をもっと広げて、地域の学校や福祉施設とも連携していきたいですね。
また、地域に根ざした文化拠点としての役割も果たしていきたいと思っています。漫画が好きな若者たちがボランティアとして関わったり、世代間交流のきっかけになったりするような仕組みも作っていきたいです。この場所が誰かの“きっかけ”になること、それが私の願いです。
インタビュー後記
店内に足を踏み入れると、まるで「漫画の森」に迷い込んだような感覚に包まれる。天井まで届く本棚、ジャンルも年代もさまざまな4万冊の漫画。そしてその中心にいる三田さんは、漫画と人を愛し、守り、つなぐ“文化の守人”のような存在だ。
どこまでも自然体で、「自分にできることをやっているだけ」と語る姿に、深い情熱と誠実さを感じた。ガリレオは単なる“漫画が読める場所”ではない。誰かの過去を癒し、誰かの未来を照らす、“人々をつなぐ文化の居場所”なのだ。
お問い合わせ
まんがの図書館 ガリレオ
代表:三田 たたみ
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-10-2F
営業時間:12:00〜22:00(定休日なし)
ウェブサイト:http://galileo-sancha.net
Twitter:@galileo_sancha
Instagram:@mangagalileo
Facebook:@mangagalileo
*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。