「シンゴジラ」にも登場する川・呑川

大田区、目黒区、世田谷区、目黒区、大田区の3区を跨いで伸び、東京湾へと接続する2級河川の呑川。

  

  数年前には映画「シンゴジラ」で、東京湾に潜んでいたゴジラが羽田沖から蒲田駅前まで迫り来るルートとして使われ、橋や船舶が盛大に破壊された。


あの迫力あるシーンを作りあげた誇り高き河川でもあるが、近隣住民は口を揃えてこう話す。

 

「呑川がとにかく臭い。特に夏はやばい。」

 

確かに私も呑川を知る一人として、少なからずゴジラが本来とは違った意味で早く上陸したそうに見えてしまったのは事実だ。

 

呑川の水源は...

呑川の水源は下水道局落合水再生センターで高度処理された水ということを皆さんご存じだろうか。

センターに隣接するせせらぎの里公苑では夏のじゃぶじゃぶ池にも同じ水が利用されており、子供が中に入って遊ぶことが出来るくらい透明度が高くきれいな水なのだ。

 

水質悪化が見られる原因?!

その一因はにある。

大量の雨水の影響で、本来なら処理場へ向かうはずだった下水が許容量を超えて川へ流れ込んでくることが度々あるのだ。

  この汚水の中に存在する有機物が発酵することによって発生したガスが、油脂や細菌などを含みながら黒いスポンジ質の「スカム」という浮きカスへと変化する。

スカムの様子


  また、底泥内にいる微生物が発生させる硫化水素によって「白濁」が生じる、これらの要因から漂う「異臭」も水質と共に問題視されているのだ。

 


清掃現場では

  しかし、先日そんな呑川の清掃現場をたまたま見かけた。

川を遮るような形で仕切りが設置されており、ゴミや浮遊物を塞き止めている様子で、空き缶やゴミ袋のような目に見えるような大きなゴミから、肉眼では確認しきれない細かいものまで…様々な汚物が油膜のような汚れと共に溜まっていた。


 

  またその先には船型のろ過装置を兼用して、河川の清掃に努めている。

 


私は呑川においてこのような活動がされていることを知らなかった為、この川がただ放置されているわけではないことを知り、もう少し詳しく調べてみることにした。

 

すると、私が目にした清掃方法の他にも予想以上に色々な試みがされていた。

例えば

・川底に泥や汚物が蓄積しにくくなるよう、川床の凹凸を整備

・重機を使用した大掛かりな河床清掃

・水質悪化の一因となっている川底付近の酸素不足を解消するため高濃度酸素水を入れるような科学的な方法での水質の改善

・犬走り部分に溜まった汚泥を直接掃除


等の作業だ。

 

「ここまでされていて、あの水質なのも逆にすごい…。」というのが率直な感想だ。

 


それでも生息する生き物たち

透明度が低く、生物を確認しにくい呑川だが、意外と色々な生物が暮らしている。

私が清掃作業を目撃したこの日も川の両脇にある犬走り部分ではカメが何匹も甲羅干しをしており、フナらしき大きな魚影も確認できた。



  最近では蛇らしきものが泳いでいたとの情報もあり、実際には他にも様々な生き物が存在しているのかもしれない。

 

  近隣で生活する人たちにとっても、川で生活する生き物たちにとっても、心地よい美しい川になる日が来ればいいと心から思う。

  少なくとも汚泥を自ら清掃し、処理してくれている職員の方々がいることを知り、  「ゴミを捨てない」「川を汚さない」私たちにできることはこんな些細なことではあるが、できる限り心がけようと…あの設置された仕切りに溜まる生活ゴミの量はせめて減らしていけたらと感じた。

 

果たして「あの呑川が昔は汚くて臭かったんだって!信じられないね!」と誰かが話す未来は訪れるのだろうか。

毎年「今年も臭いなぁ。」とこの川を愛でながら、気長に待とうと思う。

 

 

【呑川水質浄化に向けての取り組みの詳細】

https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/douro_kouen_kasen/kasen/index.html


 

取材:千葉真理