まちの仕事人インタビュー
【医療現場に“笑顔の循環”を】現役ナースの現場目線コンサルとは
青空21合同会社 南部 千鶴 (なんぶ ちづる) さん インタビュー


出身:長崎

事業:

  • クリニックの新規立ち上げコンサル
  • 外国人医療事務スタッフ紹介の仲介
  • 現役ナースとしてクリニックに非常勤勤務
  • tiktokライバーの育成
  • 外国人への日本語支援ボランティア

今回取材に伺ったのは、現役の看護師でありながら、クリニックの立ち上げコンサルをフリーランスで行う南部さんです。医療の現場を知っているからこそできるコンサルティングが院長からも好評です。趣味でチアリーディングをされており、普段から笑顔の絶えない南部さん。日本の医療業界を応援する”チアナース”に医療現場の実態について教えていただきました。

経歴について

私は長崎県の五島列島で育ちました。高校卒業後は香川県に進学し、そのままブライダル業界に就職しました。ただ、想像していた業務とのギャップがあったことから退職を決め、特にやりたいことのなかった私は、祖母の働いていた病院で働くことにしました。祖母と母が看護師だったため、身近な職業ではありましたが、まさか自分が看護師になって、その仕事を大好きになるとは思いもよりませんでした。

看護助手として病院内の雑務や清掃をこなす中で、患者さんと接したり、看護師さんから話を聞いたりするうちに、「人の役に立てている」という実感を得る瞬間が増えていきました。そこから本格的に看護師になることを決意し、資格取得に踏み出しました。

結婚を機に東京へ行くことになり、その後夫の転勤でシンガポールに渡りました。最初は就労制限があったことから、日本人向けのメディカルスタッフのボランティア団体に入り、育児相談などをしていました。また、フットケアの施設でも働きましたが、物足りなさを感じてしまい、やっぱり医療の現場に戻りたいという気持ちが湧いてきました。

そこで日系のクリニックに挑戦することにしました。子育て中だったのでベビーシッターを雇って準備を整え、満を持して働き始めたのですが、なんと21日で解雇されてしまいました。医療行為には申請が必要という制度を知らず、注射などの業務が出来なかったことが理由です。正式な理由は英語力不足と言われましたが、まさかのことに涙が止まりませんでした。

しばらく落ち込んでいたものの、やはり諦められず、別の日系クリニックに応募し、無事採用されました。人手不足だったため、看護業務だけでなく、受付業務など何でも対応する必要がありました。また、現地スタッフに教える立場にもなり、日本の医療をどう伝えるかを実践的に学ぶ機会になりました。ここでの経験と出会いが今に繋がっています。

シンガポールで使っていた名札

帰国後、大手企業が立ち上げた病院事業に業務委託という形で関わることになりました。ゼロから医療機関を立ち上げる現場に入り、スタッフの採用や動線設計、必要な医療機器の選定など、多岐にわたる準備を経験しました。

医療とビジネスが交差する現場に立ち会えたことで、「自分は現場の経験をもっと広い形で活かせるかもしれない」と思うようになりました。

医療人事コンサルの内容について

私が医療コンサルとして関わっているのは、主にクリニックや小規模な医療機関です。特に、開業したばかりのクリニックや、急成長しているけれど組織が追いついていない現場が多いです。

今、医療業界は本当に多くの課題を抱えています。まず、人手不足。とくに中小のクリニックでは、看護師や医療事務の採用が難しく、いい人材を採ってもすぐ辞めてしまう。背景には、ハードな労働環境、曖昧な役割分担、シフト調整の負担、そして人間関係のこじれなど、いろんな問題が絡み合っています。

それから、「潜在ナース」の存在も見逃せません。資格を持っていながら現場を離れている人たちは全国に70万人以上いると言われています。でも、復職するには職場の雰囲気、システム、教育体制が整っていないと難しいです。ブランクがある人も安心して戻れるような環境づくりが必要です。

もうひとつ大きな課題が、システムの遅れ。いまだに紙カルテ、電話でのやり取り、非効率な予約管理など、古いままの運用が残っているところも少なくありません。業務フローが非効率だと、結局スタッフの負担が増え、離職につながる悪循環になります。

私が関わる中では、人事領域(採用・定着)を中心に、クリニックの立ち上げフェーズでは、動線の設計や業務フローの整理、予約・レセコンシステムの導入・設定まで、かなり幅広くやっています。現場出身だからこそ、実際に使いやすく・続けられる環境を一緒に作るのが得意です。また、採用後にもスタッフとの定期面談をして、職場環境の改善やメンタルケアを担当しています。

人手不足への対処として、MJコーポレーション株式会社(港区六本木本社)と提携し、外国人受付事務スタッフ紹介の仲介もしています。たとえば、ロコクリニック中目黒さんに、外国人スタッフを受付事務としてご紹介しました。当クリニックはコロナ禍でも夜遅くまでPCR検査を行ってくださっており、中目黒の保健所で働いていた際に大変お世話になりました。地域密着で、外国人患者の受け入れにも積極的です。

ご紹介したスタッフは、実務もきちんとこなせる上に、職場の雰囲気もパッと明るくなって、患者さんからもスタッフからも好評と聞いています。外国人材を受け入れるときの教育やコミュニケーションの支援も、私のサポートの一部です。

ロコクリニック中目黒の瀨田共同代表からもお話を伺いました

医師や看護師は、圧倒的な専門性を持っていても、「人のマネジメント」や「組織づくり」は多くの方が未経験です。また、内部の人間であるが故の難しさもあります。だからこそ、そこを支える存在として、私のような第三者の立場で関われる“現場目線のコンサル”が必要だと思っています。

※ロコクリニック中目黒についてはこちら:https://loco-clinic.com/

大切にしていること

私は「笑顔になることしかやらない」というのがポリシーです。これは患者さんに対してだけではなく、働くスタッフにとっても同じです。

そして、その根底にあるのは「日本の医療をもっと良くしたい」という想いです。とくにクリニックという身近な医療現場が、もっと働きやすく、もっと患者さんに寄り添える場所になるべきだと思っています。

医療の世界はどうしても“我慢して働くもの”とか、“きつくて当たり前”という文化が残っています。ですが、それは本当はおかしいことで、働く人が健やかじゃないと、いい医療は絶対に提供できないと思います。だから私は、まず“働く人が笑顔になる仕組み”を作ることから始めたい。

「チアナース」と名乗っているのも、ただ応援するだけじゃなくて、一緒に現場に入り込んで、心から笑える環境を作るため。困っている人のそばにちゃんと立つ、そんな存在でいたいと思っています。

これからのビジョン

将来的には、医療現場を支える“指導者”のような立場になれたら嬉しいなと思っています。でも、正直まだまだ夢の夢という感じです。私は今でも現場に出て、ナースとして患者さんと接する時間が大好きですし、何よりも「現場にいるからこそ見えること」がこの仕事の価値だと思っています。これからもしばらくは、現場の一員として、リアルな声を聴きながら、必要とされることを一つずつ形にしていきたいです。

お知らせ

新プロジェクトがスタートします!医療機関の保育施設から未来の優秀な医療者を作っていこうという取り組みです。

東京ビッグサイトにてブースを出展するので、お時間ある方はお越し頂けると幸いです。

<国際モダンホスピタルショー2025>

会 場:東京ビッグサイト

場 所:西展示場 ナースまつり会場

日 時:2025年7月18日(金)

イベント詳細はこちら

インタビュー後記

今回、南部さんが初めて外国人医療事務スタッフを紹介したクリニックの院長にもお会いする機会があり、院長からの信頼の厚さを感じることが出来ました。看護師の苦労を知っているからこそ、より良い医療環境を作るためのアプローチを取っていることが分かります。この活動をより世に広めるため、日本女性の美しさを評価し、社会でより活躍できる女性を発掘するBeauty Japanというコンテストにも参加されています。これからもチアナースから目が離せません!

お問い合わせ

南部千鶴さん

Linkdin:南部千鶴

Instagram:📣ちづる💝チアナース🩺💉

tiktok:@ns.chizuru

*ご連絡の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。