1987年岩手県出身。大学卒業後、東京都港区愛育病院で助産師経験を積む。その後、2019年に助産院を開業。地域で活動する中、不安が生み出される日本の子育て環境を目の当たりに「妊娠・出産・子育てに本質的な安心を生み出すこと」をミッションに掲げ起業を決意。株式会社ボーダレス・ジャパンが運営する、ソーシャルビジネススクールで優秀賞受賞。2020年7月7日「株式会社 nicomama」設立。かかりつけ助産師が伴走する子育て社会の定着を目指し、事業展開している。
nicomama(ニコママ)というサービスを作られたきっかけを教えてください。
nicomamaは私が、助産師として活動をする中で感じた社会的課題を解決する為に立ち上げた会社です。元々は病院の産科で勤務しており、多くの赤ちゃんの誕生に立ち会ってきました。その後、川崎市に助産院を開業し、出産後の子育てをされているご家庭に訪問しながらご家族のケアを行っていました。そこで衝撃を受けたのは、思い描いていた笑顔が溢れるような子育てとは真逆で、家族のサポートが無い中でお母さんと赤ちゃんが鬱々と過ごされている家庭が非常に多かったということです。日々の子どもの変化に喜びを感じながらも、頼る人がおらず、疲労や睡眠不足、不安の蓄積で鬱々と子育てをされている状況でした。わたしはその現状に大きなショックを受けました。同時に一個人の助産ケアでは、安心した子育て社会を築くのに何年あっても足りないと思いました。私と同じように、この社会課題を解決したいと共感してくれる助産師さんがいたとしたら、一人一人がつながることでこの社会的課題は解決に近づくのではと思い、妊婦さんや産後のご家族と、かかりつけ助産師を繋ぐnicomamaを立ち上げました。

産前産後では、どのような事で悩まれる方が多くいらっしゃいますか?
これは、本当に多様で一概には言い切れません。育ってきた背景や産前産後の環境が違えば、心身の症状も様々です。妊娠期では、赤ちゃんを子宮の中で育むので、お母さんはエネルギーのほとんどを赤ちゃんを育むことに使います。おのずと、つわりや腰痛、お腹の張り、こむら返り、むくみ、便秘等、身体に多様な変化が生じます。ある程度の安定期までは周りに隠しながら、体に負担をかけて働かれている方も少なくありません。身体の不調が生じながらも、日常生活は普段通り過ごさなければならないということは不安を感じやすいと考えます。
産後に関しては不眠も加わりますので、昼夜のリズムが崩れながらもご家族のサポートが無かったり、役割分担が出来ない事もあります。自治体の職員が新生児訪問をしていますが、問題がなければ一時的なケアにとどまり、ご自身のリアルな悩みを相談できる相手は限りなく少なく、孤独を感じ悩まれている方は多くいらっしゃいます。

そのような課題に対してnicomamaが取り組まれていることを教えてください。
nicomamaの存在意義にもなりますが、産前産後のトラブルに対してピンポイントでサポートして終わりという関わりでは無く、かかりつけ助産師として産前から産後まで一貫して支援することが出来ます。継続的にサポートさせていただくことで信頼関係が育まれ、家族や友達に話しにくい悩みなども専門的観点から相談することが出来ます。
利用者の声としても、対面でのケアでとても安心したとお聞きします。
最初はLINE相談等も多いのですが、それらを繰り返すうちに互いの信頼関係が強くなり、利用者さんの安心感も高くなるという印象です。
最近では、インターネットを通じて様々な情報を知ることが出来ますが、逆に情報が多すぎて不安感や恐怖心を感じている方もいらっしゃいます。かかりつけ助産師が存在することで、専門家としての情報をお悩みに合わせて伝えることが出来るので、忙しい妊婦さん、ママさんが情報を知るための時間的メリットも感じていただけるかと思います。

今後、nicomamaとしての目標はありますか?
まずは、一人でも多くの新しい命を迎えるご家族にnicomamaを知ってもらうことを目標としています。今後、さらにテクノロジーが進んだとしても、人と人が繋がり心が通い合うことで生まれる安心というのは失くしてはいけないと思っています。家族関係の希薄化が進んでしまっている社会で、人と人が繋がる場所に出来たらと思っています。

インタビュー後記
出産に対する不安は多くの方が感じられた経験があるのではないでしょうか?本当に大切な命だからこそ一生懸命になり、向き合えば向き合うほど不安が伴ってくる。数十年前とは社会が大きく変わり、子育てをするにも孤独を感じたり、情報に振り回されてしまったり。
そんなときに、専門のかかりつけ助産師さんがいたらどんなに心強いことでしょうか。これからの子供達のためにも江釣子さんの想いが多くの方々に届くことを心より願っています!
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