山形国際ドキュメンタリー映画祭2023でこの作品を見たときの記憶では、カラオケシーンが多いこの映画で、カラオケだけではなく歌手本人の歌うバージョンもラジオとしてチラッと流れる気がしていた。美空ひばりの「愛燦燦」や加山雄三の「君といつまでも」が部分的に流れていた気がしたのだが、見直したらそんなことはなかった。さらに山口百恵の「さよならの向こう側」もかかっていた気になっていたが、これにいたっては曲自体が流れていなかった。
 そんな思い違いをしてしまうことが、ある意味で、この作品の魅力の一端を物語っているのではないかと思う。あの歌を歌ったのはこの人だったのか、それとも違うあの人だったか。もしかするとこの映画に姿など見せない、自分しか知らない人の歌声だったのか。そんなふうに、実際にスクリーンから聞こえてくる歌声と重なり合うようにして、この映画を見る人の頭の中では、たぶんその人しか知らないその歌を歌う誰かの歌声も一緒に鳴っているのではないかという気がする。そこでは歌手本人の歌うオリジナルか、素人の歌うカラオケか、などという区別も関係ないし、もちろん上手い下手などは全然重要なことではない。もっと言えばその歌が本当に聞こえていたのかどうかすら関係ないのかもしれない。「変化と連なり さよならのかわりに」というラジオCDのタイトルを耳にしただけで、「さよならの向こう側」を聞いた気になった私のように。(結城秀勇「歌謡曲が聴こえる」)

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『ラジオ下神白 あのとき あのまちの音楽から いまここへ』
7/13(土)〜7/19(金) 16:55〜

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29 いいね! ('24/07/13 18:01 時点)