企画展「マルク・シャガール 版にしるした光の詩(うた)」の展示風景を、見どころと一緒にご紹介。

1枚目:『ラ・フォンテーヌ寓話集』 1927-30年制作/1952年刊 エッチング
古今東西の説話をもとに16世紀にまとめられたフランスの国民的文学を版画にするにあたって、ロシア出身ユダヤ人がそれを担当することは、当時大きな議論を巻き起こしました。教訓が込められた物語であっても決してお説教臭くならないのは、シャガール独特のユーモアのある描き方ゆえでしょう。白黒の濃淡だけの表現ですが、ハイライトの加減などかなり綿密に計算され、色彩の奥行すらも感じさせます。

2枚目:『ダフニスとクロエ』 1957-60年制作/1961年刊 リトグラフ
この物語を版画にするにあたりシャガールは二度現地に取材に出かけ、光にあふれるエーゲ海の印象をいかに表現するか思案します。1枚の絵柄に5つほどの版を使うことが一般的であったリトグラフで、20~25もの版を使うことで内側から光を放つような鮮烈な色彩を実現しました。かわいらしく浮遊感のある人物や動物たちの描き方も、物語の牧歌的な雰囲気に一役買っています。シャガール版画を代表する作品であり、近代版画の傑作といっても過言ではないでしょう。

3枚目『悪童たち』 1958年刊 エッチング、アクアティント
小説家になるまで悩む主人公の姿を描いた、フランス人作家の自伝的小説の挿絵として制作されました。シャガールはその主人公に、画家になるまでに悩んだ自身の姿が重ねました。シャガールおなじみの魚や鳥、動物たちといったモチーフも描かれ、他者の物語と自分の物語の2つの物語が融合しています。シャガールにとっては初めての多色刷りの銅版画で、アクアティントによる水彩画をおもわせる淡い色彩が、少年時代の思い出に瑞々しい印象を与えています。

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139 いいね! ('23/08/14 06:00 時点)