まちの仕事人インタビュー
海に潜ることで自然を大切に想う人を増やす
ダイビングスクール BlueEarth21世田谷 代表 麻生 智彦 (あそう ともひこ) さん インタビュー

1961年生まれ。世田谷区出身。世田谷区在住。19歳から六本木のライブハウスで働き、バブル崩壊をきっかけに退職。29歳のときにBlueEarth21グループのフランチャイズとして「BlueEarth21世田谷」をオープンし、現在31年目を向かえる。

お客さまのダイビングライフに責任を持つ

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

29歳まで、六本木のライブハウスで働き、マネージャーなどをやっていたのですが、90年代にバブルが崩壊した後は、すっかり街から人が消えてしまい、仕事を続けることが困難に。もともと「30歳までに事業をやりたい!」と考えていたので、当時からのめりこんでいたダイビングを仕事にしようと考えました。BlueEarth21グループのフランチャイズとして、ダイビングスクール「BlueEarth21世田谷」を、現在のお店から少し離れた脇道の奥でスタート。世田谷区で生まれ育った私としては、三軒茶屋や下北沢でお店を出したかったのですが、バブル崩壊直後で、まだまだ手の届く家賃ではなかったため、割安な松陰神社のエリアを選びました。少しさびれた商店街と、お年寄りしかいない街だったため、近所の人を集客することは当てにできず、それまでの人脈を頼りに、アドレス帳を見ながら片っ端から電話をしたり、行きつけの飲み屋に広告のポスターを貼ってもらうなどでお客さまを集めていました。最初はお店も小さかったので、お客さまからご連絡いただくと、ご自宅などへお伺いしていましたね。24時間365日、「いつでもどこでもお伺いします!」と言っていました。22年前に現在の場所に移転した後、親企業のBlueEarth21は倒産してしまいましたが、そのまま名前を変えずにお店を続けています。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

事業は主に『ライセンス取得のためのダイビング講習』、『ダイビング道具の販売』、『ダイビングツアー』の3つで、特に『ダイビング講習』には力を入れています。何を習うかによってダイビングライフが変わると言っても過言ではありません。ダイビングのライセンスは公的なものではないため、教える側のレベルや、教え方にはかなりのバラつきがあります。海外のリゾートにあるダイビングスクールでは、インストラクターが一度に10人以上を集め、プールで少し練習した後、すぐに海へ出てしまいますが、私は非常に危険だと考えています。スキルが無いままにダイビングをしてしまうと、潜水障害になったり、命を失うことも。通常ダイビングを行うには、学科を5時間、プールで半日の訓練が必要と言われています。私は、お客さまのダイビングライフにとことん責任を持ちたいと考えており、一度にたくさんの命を預かることも難しいため、『シニアコース』ではマンツーマン、若い方でも3~4人までしか一度には教えません。


『道具の販売』では、ただカタログを見て選んでもらうのではなく、講習中に色々な道具をレンタルで使ってもらい、お客さま自身で自分に合っていると感じたものを選んでもらうようにしています。また、講習で一緒に潜っていて、お客さまの使い方が上手いと感じた道具を、おススメすることも多いですね。また、販売した道具の保管もやっていますから、「家に置いておくスペースがない」「家族に内緒にしたい」という人であっても、ご利用いただけます。講習やツアーに行く際は、お店から私が参加者みなさんの道具を海まで持っていきますので、“シャンプー”、“タオル”、“着替え”だけを持ってきてもらえれば、海に潜ることができます。「銭湯くらい気軽だね」と言われたこともあります。


『ツアー』では、日帰りはもちろん、沖縄の離島などにも行きます。コロナ前は年2回は海外ツアーに行っていました。また海外に行くツアーを再開しようと考えています。


自分の身体を認識して夢を持つ

どんなお客さまがダイビングをされていますか?

最近は、ホームページなどネットを見てお問い合わせいただく方が多いですね。ダイビングをされるお客さまの約半分は50代以上のシニア層で、女性が多いです。私も60歳を迎えて、同世代や上の世代の人に教える機会が増えました。講習を受けるシニアの方も、30代の若いインストラクターよりも、世代が近くて話しやすいと喜ばれています。ダイビングを始められるシニアの方は、基礎体力がない人も多く、足腰を強くしてもらうためにプールでの練習をご案内しています。練習と言っても、ビート板を持ってバタ足で泳ぐだけなのでとても簡単ですし、海に潜ったときにフィンを蹴る力が全然変わってくるのでおススメです。ダイビングは70歳くらいまでは十分できます。ウチのスクールには、60歳のときに始められて、72歳で1,000回目のダイビングをお祝いした人もいます。まだまだ潜りたいとのことなので、ますます記録を伸ばせそうです。ダイビングは自然が相手なので、常に景色が変わり、飽きることがありません。私はもう40年間潜っていますが、いつも新しい発見や感動がありますね。お客さまも、「来年は、●●にダイビングに行きたい」「次は■■の海に潜りたい」と、潜るたびに次の目標や夢を話してくれます。また、水中では全身に水圧がかかるため、血流が良くなります。肩こりが治ったり、身体の不具合が減ったという話はよく聞きますし、実は私も10年以上、風邪をひいていないんですよ。笑


仕事をするうえで心がけていることはありますか?

『お客さまとの信頼関係を作ること』を一番大切にしています。海に潜るときは、お客さまの命を預かることになるため、信頼は本当に大切です。また、スキューバダイビングは、スーツやジャケットなど道具にお金がかかります。それに、ダイビングのスキルを錆びさせないためには、月1回程は海に入ることが好ましいと言われており、交通費なども必要。ダイビングスクールによっては、お客さまにキレイな魚の写真や海の写真を見せて、気持ちを高ぶらせてからお金の話をするようなのですが、私は最初に「ダイビングにはお金がかかりますよ」と、正直にお伝えしています。せっかくライセンスを取っても、数回海に入っただけで終わってしまうのでは、本当にもったいないです。スキルを磨くことで、潜れる海も増え、海から得られる感動も増えます。小田原など都内から車で1時間半も走れば、魚が泳いでいる場所へ潜ることもできます。是非何回も潜って欲しいですね。また海に潜り、必死に生きている魚たちを見ることで、自然を大切に想ってくれる人を増やしていきたいと考えています。お客さまが、そんな想いと一緒に、ダイビングの様子をSNSで発信してくれるのは、とても嬉しいですね。ご興味のある方は、私と一緒に“果てしない紺碧の大海原”への冒険に出かけましょう!


雑誌の表紙に写ったことも

インタビュー後記

40年以上海に潜り続け、海という自然の美しさをよく知る麻生さん。一方で、自然の厳しさを知っているからこそ、指導では厳しい言葉をかけることも。スキューバダイビングは、自分で自分の命を守る必要があります。ピンチの時に自分の身を守るものは、「習ったこと」ではなく「身についていること」。だからこそ、ダイビングを始める人は、ぜひ麻生さんからそのスキルを学んでほしい。

お問い合わせ

店舗:BlueEarth21世田谷

電話:03‐3795‐7445

Mail:blue-earth21@mx3.ttcn.ne.jp

HP:https://www.be21.jp

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。