「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあります。腰痛に関して「医者が青くなる腰痛」についてお話ししましょう。いわゆる危険な腰痛についてです。
一般の方の腰痛の重症度の目安は、痛みが強いかどうかだと思います。確かにそれは、間違っているわけではありませんが、「こんなに痛いのに、家で様子を見ていて良いものだろうか」と悩まれるケースも多いのではないでしょうか。
腰痛ガイドラインという医師向けの本では、「腰痛のレッドフラッグ」として、いくつかの状態を危険信号として掲げています。いわゆる「医者が青くなる腰痛」です。それぞれの項目につき解説していきましょう。
1) 発症年齢が20歳未満、または55歳以上
この年齢に該当するから危険と短絡的なものではありません。おそらく20歳から55歳くらいまでは活動性が高いので、痛みが強くても筋肉性の腰痛で、一晩寝れば治ってしまうと言う意味合いが強いのだと思います。
2) 時間や活動性に関係のない腰痛
いつでも、どこでも、どんな姿勢でも痛いというものです。通常は整形外科的な腰痛では、じっと寝ていれば痛みは少ないので、内科的な疾患を疑わせる兆候です。
3) 胸部痛
心臓や血管の異常から起こる病気の放散痛として、腰痛が起こっていると考えます。
4) がん、ステロイド治療、HIV感染の既往
転移、骨折、感染を起こしやすい背景があります。
5) 栄養不良
腰痛以前の問題ですね。体力も落ちているでしょうし、どんな病気にもかかりやすい状態です。
6) 体重減少
ダイエットとかで特に生活を変えていないのに、3キロとか5キロとか体重が減ってきた場合には、がんを疑います。
7) 広範囲に及ぶ神経症状
漠然として分かりにくい表現ですが、腰痛だけでなく、手や足にも筋力低下や感覚異常などの症状が出た場合です。この場合には、神経や脳の異常を考えます。
8) 構築性脊柱変形
円背など背骨の変形をいいます。圧迫骨折が疑われます。
9) 発熱
普通の腰痛では熱は出ませんから、その時点で怪しい腰痛です。感染を疑います。
さて、私なりに分かりやすく解説してきたつもりですが、元々の項目がわかりにくし、多いので、これで理解できるでしょうか。たとえば先日の流行語で言うと「接待を伴う飲食店」のように、公の文書には分かりにくい表現がたくさんありますね。そこで最後に私が、ズバッとまとめます。
医者が青くなるような危険な腰痛とは
横になって寝ていても痛む
痛みが尋常ではない
熱が出ている
この3つが非常に大切で、どれか一つでも該当する場合にはすぐに医療機関で診察を受けましょう。
監修
アレックス脊椎クリニック 名誉院長
吉原 潔(よしはら きよし)
PROFILE
日本医科大学卒業 医学博士。
卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック名誉院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。
ホームページ
アレックス脊椎クリニック https://ar-ex.jp/spine
黒河内病院 https://kurokouchi.or.jp/index.html
著書
◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)
◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)
ほか
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