まちの仕事人インタビュー
大きな志を持ち挑戦を続ける
大志工業株式会社 代表取締役 坂本 吉正 (さかもと よしまさ) さん インタビュー

1963年生まれ。羽田出身。卒業後、金属加工会社へ入社。その後20歳のときに精密部品の総合切削加工業を行う「大志工業株式会社」へ転職。技術職として入社後、上司の体調不良による長期入院に伴い、営業職へ異動。持ち前の行動力で、航空・医療・半導体・インフラ業界を次々と開拓し、現在の事業の柱となる取引先との関係づくりに注力。2018年に創業者からの指名により代表取締役に就任。趣味は釣りとゴルフ。

精密部品の総合切削なら全ておまかせ

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

若い頃は暴走族で、とにかくヤンチャ小僧だった。車を買うためにお金を稼ぎたくて、親戚の叔父さんの紹介で金属加工の会社で働き始める。とにかくお金を稼ぐために日曜も働いていた。そんなある日、会社のキーマンが突然病気で亡くなって、それに伴い会社の業績がみるみる悪化。日本中が高度経済成長の好景気に沸く中で、ウチだけボーナスが出ないという状況になった。車のローンもあったから、頭を抱えちゃって、あの時は「ホントどうしよう?」って悩んだよね。そのタイミングで見つけたのが、東京新聞の夕刊に載っていた「大志工業」の求人。自分が工場で使っていたコンピューター制御の『NC旋盤』の機械を上回る、コンピューター制御の上、連続加工のできる『自動旋盤』の機械があると書いてあったから、興味を持って即応募しました。実際に機械を見てびっくり!「この機械はなんだっ!?」「すげぇ!!」って思ったよね。二度の面接を経て、年末に採用が決まった。年始から仕事の予定だったんだけど、最初に出社したのは年末の忘年会だったね。まだ社員でもないのに、周りの人に優しくしてもらって嬉しかった。いい会社に入れるなぁって思ったよ。入社直後に工場へ新しい機械が5台も入ってきて、社長に「誰がこの機械をいじるんですか?」と聞いて、「お前しかいないだろ!!」と返されたときはシビれたよね。当時は仕事が山ほどあって、一人で8台の機械を動かしていた。こうして、大志工業での仕事をスタートして35年目となる2018年に、当時の社長から“会社を継げ”と代表取締役のバトンを渡してもらい、今に至るんですよ。

仕事の特徴はどのような点にありますか?

アルミ、ステンレス、チタン、インコネル、ハステロイなどの難削材まで、精密部品の試作と量産加工を手広くやってるよ。特に、航空(飛行機・宇宙・防衛関連)・医療(腹腔鏡手術に使う器具の先端など)の精密部品の総合切削加工は得意中の得意。他にも、半導体の製造装置の重要部品加工やメッキ加工、精密洗浄など、±0.001ミクロンの加工や鏡面仕上げもできる。社会インフラでいうと、駅の自動改札機に使われるパーツやホームドア部品の加工や溶接・塗装かな。最近では釣り具のリールに使われるパーツも作り始めたんだけど、これは私の趣味の釣りがきっかけ。たまたま隣で釣っていた人に声をかけたら釣具屋の社長さんで、話しているうちに仕事へ繋がった。釣りは大好きだから気持ちも一段と入る仕事だよね。そんな切削加工を昔からある機械や、最近の機械、数十台を駆使して作業をしているんですよ。


人の命は使命

どんなお客さまからのご相談が多いですか?

大志工業に入社して6~7年が経った頃、会社の営業を引っ張っていた専務が急遽入院したんだよ。それで、上司の仕事を引き継いで元々やりたかった営業の仕事が回ってきた。26・7歳のころかな。営業職になってからは、朝から晩まで全国を飛び回りながら、毎晩夜の12時から1時まで接待や会食をして、地元にいるときには、そのまま翌朝まで蒲田で飲んで、また朝8時に出社するような無茶苦茶な生活をしていたよね。その時に、開拓した取引先が、インフラ・医療・航空・半導体関係の会社で、ITバブルやリーマンショックの時には輸出が減って仕事が減ったこともあったけれど、今でも取引が続いている大切なお客さまだね。最近では、近所の工場が廃業したことで仕事が回ってくることも増えたよ。大田区は“ものづくりのまち”で、最盛期には工場が9,000社以上あったんだ。それが今では3,500社。他県への移転などもあるから、全てが廃業した訳ではないけれど、やっぱり少し残念かな。今近所にある大きなマンションは、ほぼ全て工場の跡地だから、ときどき昔を思い出しますよ。とにかく、お客さまには恵まれていると思っていて、いつも本当に感謝しています。

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

一人でも多くの社員に「挑戦」してもらうことかな。ありがたいことに、みんなオレについてきてくれていて、前期に引き続き、今期も売り上げが順調に伸びている。だからこそ、もっともっと挑戦して欲しいな。実はこの会社の代表を引き継ぐ前に、会社の健康診断で頭の中にゴルフボールくらいの腫瘍が見つかって手術をしたんですよ。NTT東日本関東病院の脳神経外科医で、井上先生って名医に10時間を超える手術をしてもらって何とか取り除くことができたけど、手術の直後は左目が上手く見えなくて、車の運転ができなくなるのではと不安だったね。それでも今では、後遺症もなくこうして生活ができていて、ホントにありがたいよ。この病気をきっかけに、「人の命は使命なんだ」って思うようになって、その使命があれば色々なことに挑戦できるって考えているんだよね。社員には、未来から逆算してこの1年、この1年から逆算して今月、今月から逆算して今週、今週から逆算して今日、それぞれの事を考えながら挑戦して欲しい。人から言われたり、決められたりするのではなく、自分の人生を自分で決めて生きた方が楽しいから、それはこれからも伝えていきたい。あとは、業界内で腕の良い職人の年齢が75歳~85歳と上がっているから、もっと若い人が入ってきてくれると嬉しいな。工作が好きだったり、機械をいじりたい人は、是非来て欲しいよね。工業系の学校出身なら、即戦力の期待もある。そうでなくても、若い人は可能性の塊だから、興味がある人(男性:30歳以下、現場。女性:30歳以下、事務[エクセル・ワード要])は是非連絡して欲しいな。あと何年働くかは決めていないけれど、これからも志高く、挑戦を続けて参ります。


インタビュー後記

高度経済成長期に仕事を始めたからこそ、リーマンショックなどの大きな危機を受けて、時代の変化を嘆く経営者が多い世代。世の中の流れを見極め「狙う魚(顧客)を変え」「道具(機械)を変え」「場所(マーケット)を変え」る坂本社長の経営手腕は、ベテランの釣り師と同様の精神と感覚を持っている。こんなステキな社長と働くチャンスはそうはない。機械いじりが好きであれば、坂本社長の針にかかってみることをおススメする。

お問い合わせ

名前:大志工業株式会社

電話:03‐3735-6761

HP: https://e-taishi.co.jp

*ご相談の際は、『大田区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。