まちの仕事人インタビュー
展示会から売上をつくる
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役 清永 健一 (きよなが けんいち) さん インタビュー

1974年生まれ。奈良県出身。新卒でケーブルテレビ会社へ営業として入社。その後、2社のコンサルティング会社を経て、展示会営業のコンサルティングを行う『株式会社展示会営業マーケティング』を起業。2020年「展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!」(ごま書房新社)など7冊を出版し、全てAmazonで部門1位を獲得。

出向くのではなく来てもらう営業

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

新卒で入った大阪のケーブルテレビの会社では、社内で一番売れない営業マンでした。飛び込みで個人宅のインターホンを鳴らした後、「いらんわボケ!帰れ!!」と怒鳴られ、後退りして水たまりにはまり、犬に吠えられたこともありましたね。あまりにも成果が出なかったので、集金係に回されました。そんなある日、大阪市から会社へ「地上デジタル放送を周知する展示会を行うので、出展してほしい」と連絡がありました。会場は区民センターの一角。社内の誰もが嫌がり、集金係だった自分にその役割が回ってきました。もちろん展示会は初めてで、先輩もやり方を知りません。自分なりに知恵を絞り、机に白い布をかけ、まだ薄くもないテレビを持ち込みました。当日のブースは大手の家電メーカーと衛星放送事業者の隙間。両側を多くのスタッフを抱えるブースに挟まれつつ、興味をもって足を止めてくれる来場者に、丁寧に説明して展示会を終えました。すると翌日から「説明してもらったケーブルテレビに入りたい」という電話が鳴りやまなくなったのです。あっという間に営業成績がトップに。そこで、営業は“こちらから出向く”のではなく、“相手の方から来てもらう”方が、効果的であることに気づいたのです。そこからは、多くの展示会に出展しました。展示会だけでなく、町のお祭りに参加して的屋さんの隣に出展したこともあります。面白いように出展すればするだけ売れましたね。会社の売上の75%を、私が展示会に出展することで作っていると分かったとき、ふと「他の会社や業態でも同じように売上を立てることができるのでは?」と考えました。そこから、起業を見据えてビジネスイベントやビジネスマッチングを行っているメガバンク系コンサルティング会社へ転職。その後、中小企業のコンサルティングを行う会社へ転職し、それぞれのノウハウを得たうえで、“展示会営業のコンサルタント”として『株式会社展示会営業マーケティング』を起業しました

仕事の特徴はどのような点にありますか?

『展示会の営業』に特化していることです。自分が起業した当初、そもそも展示会に関する書籍や、アドバイスをする人はほとんどいませんでした。展示会をサポートする業者さんはいくつかいらっしゃいますが、展示ブースの設営を行ったり、配布するチラシや粗品を作成するなど、展示会当日のハード面やツールに対する支援が多く、実際に準備から展示会当日、展示会後のフォローまで一気通貫で、“展示会から売上をつくる”ことをアドバイスできる人は少ないと思います。大手企業であれば、ブースを大きく取り、多数のコンパニオンを配置するなどの方法で大々的に盛り上げることができますが、中小企業にはそれほどの予算はありません。そのため、より効率よく売上に結び付けることが求められています。しかし、実際に展示会場を見て回ると、意図を持って展示会に出展し成果をあげることができている企業は、それほど多くないようにも思えます。例えば「食」に関する展示会で、商品を試食してもらい、来場者に「おいしいです!」と言ってもらうだけで満足してしまうケースは、いたるところで見られますが、これでは売上にはなりません。この場合、来場者はホテルの料理長やバイヤーなど、業務で使う食材を探している人たちですから、その商品が業務にどう役に立つかを訴求することが重要です。そして、その場では売れないことを前提に、後日改めて接触できるようにアポイントを取る必要があるのです。例えば、以前お手伝いした味噌を扱う会社では、展示会に12種類の味噌のサンプルを用意し、そのうちの一部を試食してもらいました。「お味噌が美味しいのはもちろんですが、このお味噌は味がとても濃いので、使う量を減らすことができて原価が下げることができますよ」とPRを行い、「この展示会でお会いした方に限り、50社限定で全12種類のサンプルを後日お届けしています。今ならまだ少し枠が残っています」と続けることで、後日のアポイントへの導線をつくったのです。結果は大成功。多くの売上に繋がったと聞いています。


展示会に向けて社内を盛り上げる

どんなお客さまからのご相談が多いですか?

中小企業からの相談が多いですね。特に最近は「本を読んでご連絡しました」という社長さんが多い印象です。展示会に初めて出展する企業もありますし、何年も出展はしているものの、なかなか成果に繋がっていないという悩みを抱えた企業からのお問い合わせも多いですね。また、新規事業や、新しい業界へPRしたい企業、売上が二、三社に依存しており今後を考えて取引先を増やしておきたい企業などからもご相談をいただきます。これまでに1,300社以上に関わってきましたが、実は全ての相談をお引き受けしているわけではありません。WEB広告、SNSやECサイトを活用した方が、より効果が出そうと判断した企業に対しては、そのことを正直にお話していますね。出展して高い効果が得られる方法の一つに、私が“ずらし出展”と呼んでいるものがあります。これは、あえて自分の業界とは少しずらした展示会に出展する方法で、例えばあるどら焼きの製造販売をしている会社には、『食料品の展示会』ではなく、『冠婚葬祭の展示会』に参加してもらいました。どら焼きをお葬式の返礼品としてPRしたのです。故人の好きだった言葉が刻印された焼き印どら焼きの返礼品です。この展示会には、200社を超える企業が出展していましたが、どら焼きを商材とした出展者は他にありません。展示会場でオンリーワンになり、大きな成果につながりました。このどら焼き屋さんには、その勢いに乗じて『ノベルティの展示会』にも参加していただきました。出展する展示会をずらすことで、展示会場の中でオンリーワンの存在になり、売上に繋がることが期待できます。


仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

“どんな会社にも、必ず良いところがある”という想いを持ち、それを見つけ出して世に広めていきたいと考えています。その最適な場所が展示会ですね。また、せっかくのお披露目の場なので「カッコよく行きましょう!」と強くお伝えしています。特に地方の企業の方は、首都圏や大都市で行う展示会にくると謙遜もあり、なにかと遠慮しがちです。しかし、その企業の持つ商品やサービスが、世の中をどう良くするのかを伝えるための展示会なので、自信をもってカッコよく臨んでいただきたいですね。コンサルティングをする場合、3~10人程度のプロジェクトチームを結成していただくのですが、そこには営業部門やマーケティング部門など顧客対応の最前線にいる人だけでなく、製造や設計・開発、購買、人事や総務など、会社全体から人を出してもらっています。このプロジェクトチームで、展示会に向けて改めて自分たちの仕事が、どのように社会の役に立っているかを考えてもらいます。部門間の対立があることもありますが、展示会の日程は決まっています。揉めている時間はありません。「展示会で成果を出す!」という共通の目的に向かって議論を重ねていく中で、セクショナリズムの壁を越え、メンバー同士の一体感が生まれ、社内が盛り上がっていく様子を見ることは私の楽しみの一つですね。良い展示会ができると、出展者も来場者も主催者もみんな嬉しいです。私の活動が、中小企業を元気にして、その結果として日本を元気にすることに繋がると考えています。どうぞお気軽にご相談ください。


インタビュー後記

「ホンマもったいないと思う」と話す清永さん。展示会でブースを見て回ると、小さな改善で大きな売上に繋がる様々なポイントに気づくとのこと。そのうえで、「いつか、この「もったいない」という気持ちを感じない展示会をこの目で見たい」と意気込む。展示会というお披露目の場で、最高の成果を残すための力強すぎる、唯一無二のパートナーだ。

お問い合わせ

名前:株式会社展示会営業マーケティング

Mail:kiyonaga@tenjikaieigyo.com

HP:https://tenjikaieigyo.com

ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。