今回のお話しは前回の続きとなります。前回のお話しとあわせて読んでいただけると幸いでございます。

  

前回のお話しは、離れて暮らしている認知症と診断されたお母様が施設へと入居となり、お母様を心配する気持ちが日ごとに増えていきました。お父様への心配が無くなった訳ではないのですが、毎回お電話をしても「心配するな」というお父様の言葉で少し安心していた矢先に届いた連絡は「お父さんが亡くなった」という連絡でした。

 

亡くなられた方のお子様は、一人娘のご長女様です。現在、夫の仕事の関係で福岡に住んでいます。このコロナ禍でなかなか帰省できなかった、そして、兄弟もいないので誰に頼る事も出来ないまま、お見送りすることとなってしまいました。

 

お葬式の時は、ただただボーっとしてしまい、何が何だかわからないままに時が過ぎて行った感じがしていたそうです。施設から特別に葬儀に参列のため一時的に退所したお母様もお父様が亡くなったということが解っているのかどうかもわからないまま、お母様も施設に戻ってしまいました。

 

夫も仕事があるので福岡に戻ってしまい、ふと気がついたら「ひとりきり」で葬儀の後の諸手続きをしなければならないことに、大きなプレッシャーを感じました。まずは、何から取りかかれば良いのか?大きな不安と相談相手が居ない現実に「どうしたらいいんだろう」という思いだけが募りました。

 

まずは、お父様のご遺骨はどこのお墓に納めれば良いのか?そもそも、どこに私の家のお墓があるのだろう?全部、お父様任せだったことを悔やみました。四十九日までにすることを葬儀屋さんに聞いたけど、法要の為に準備するものはスラスラ教えてくれましたが、年金のことを質問しても「年金事務所に・・・」とか、戸籍のことを聞いても「まずは、市役所に・・・」というだけで前へ進みませんでした。

 

また、住み慣れたこの家ですが、現時点で誰も住まないし、不動産をどうしようとかも考えなければならないことにも気付きました。また、相続ってお金持ちの人だけがやる手続きだと勘違いしていました。これからお父様の銀行通帳を探したり、資産などを調べたり、お父様の戸籍を集めるなど気が遠くなるし、何をしたらよいのかわからないことを一人でしなくてならないと思うと涙が出てきたそうです。

 

更には、お家の「お片付け」、いわゆる「遺品整理」も捨てて良いものや残しておくものなどわからないまま、どうしよう、どうしようと思いながら、頭をよぎったのは「何故、元気なうちにお話ししておかなかったのだろう・・・」という思いでした。

 

私がご長女様とお話しした時に、ふと言われたのが「親に何もしてあげられなかった・・・」という言葉でした。

 

私が葬祭ディレクターになった時に、喪主様に同じことを言われました。「親に何もしてあげられなかった・・・」この言葉が今でも私の心に残っております。この時、私自身ではどうすることもできないという思いと、私はこの家族の力になれたのだろうか?という思いが頭をよぎりました。

 

それでも、今私にできることは、相続にあかるい司法書士を紹介すること、遺品整理で親身にお安く対応してくれる方を紹介すること、そして、不動産の相談に親身にのってくれるところを紹介することです。

 

紹介後にもご連絡をいただき「少し落ち着きました」とお話ししてくれました。「また、何かわからないことがあったら相談にのってくれますか?」「もちろんですよ」とお話ししました。

 

やはり、お元気なうちにお話ししておくことはとても重要なことだなって思う反面、なかなか、家族だからこそ「この手」のお話しは避けがちで、縁起が悪いなどと言って話しを遠ざけますが、ご長女様は最後に「同じ境遇の方に伝えたいのは、絶対に事前に相談しておくべきだよって言いたい」とお話ししてくれました。私たちが言うと胡散臭いのですが、経験者が語るととても心に響きますよね。

 

こちらのブログをご覧のお葬式のご相談をご希望されている方は、メールにてお葬式の事前相談を実施しております。あなたがもしもの時に慌てない為にも是非ご活用ください。d.kobayashi.sousaidr1@gmail.com (1級葬祭ディレクター  小林大悟  相談メール)

 

 


著:一級葬祭ディレクター 小林大悟