まちの仕事人インタビュー
地域の活性化に取り組む
株式会社ぶんぶん 代表 井上 加苗 (いのうえ かなえ) さん インタビュー

千葉県出身。大田区在住。大学を卒業後、野村證券にて勤務し、結婚・出産に伴い退社。子育てをしながら家でできる仕事を求めて“せどり”を始める。2018年に法人化。2020年、祖父母の持っていた町工場を取り壊し、店舗スペース付きの自宅に改装したことをきっかけに、『カフェCABIN』をオープン。2022年から『キャビンこども食堂』をスタート。月2回の開催ながら、約300人を集める。

お母さんの負担を減らしたい

今の仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

『こども食堂』を始めたのは、周囲に共働きの家庭が多く“お母さんの負担を減らしたい”と考えたことがきっかけです。私自身、働きながら子育てをしているときに、地域にあった『こども食堂』に助けられましたから、その恩返しの意味もありますね。『こども食堂』というと、食べることに本当に困っている人が行くものと思われるかもしれませんが、私の考えでは誰が来てもOK。この地域は田園調布も近く、比較的所得の安定している人や、裕福な人が多い印象ですが、共働きで忙しい両親、共働きの両親と一緒に食事を取れる機会が少ない子ども、一人で子どもを育てているシングルマザーの人などもいます。どんな人でも誰でも気軽に来てもらえると嬉しいですね。とはいえ、最初から『こども食堂』を目指していた訳ではありません。証券会社を辞めて、子育てをしていたときには、家でもできる仕事をしたいと考え“せどり”をやっていた時期もあるんですよ。ちなみに、そのときの経験を活かして古物商の許認可を取り、現在も『出張買取&出品代行』の仕事として続いています。その後、工場だった祖父母の土地に家を建て変えるとき、私と母との夢だったカフェを自宅でやることにしました。こうして2020年コロナ禍に『CAFE CABIN』をオープン。その後、  コロナ禍で子ども食堂が閉鎖されいたり、感染症対策による黙食や、学校での厳しいコミュニケーションルールに危機感を感じ、今まで通り賑やかにごはんを食べられる『こども食堂』が「むしろ今!」必要と思い、すぐに申請。とんとん拍子で始めることが決まりました。


仕事の特徴は、どのような点にありますか?

『こども食堂』ではカレーを提供しています。食材は全て区内で購入し、無農薬野菜をふんだんに使った美味しいカレー。ちなみに無農薬のため、皮をむかずに使える野菜も多く、結果的に仕込みの時短に繋がっています。それに、カレーが嫌いな子どもはいないと思うので、提供している側としても自信をもっておススメできますね。ときどき「こども食堂って儲かるの?」と聞かれることもありますが「正直、儲かりません(笑)」。続けられるのは、様々な仕掛けが組み合わさっているからです。『こども食堂』のスペースは、週3日のランチタイムはカフェとして運営し、残りの時間はレンタルスペースとして貸し出しています。カフェに来ていただいたお客さまや、レンタルスペースを利用されたお客さまが『こども食堂』のお客さまになっていただいたり、『こども食堂』に来ていただいた親子が、カフェやレンタルスペースを利用されるなど、『こども食堂』が多くのきっかけとご縁を運んでくれていますね。ちなみに、『こども食堂』へ家の不用品を持ち込んでいただければ、古物商の許認可を持つ私の方で『販売』し、売り上げの一部が『こども食堂』の運営へ回る仕組みにもなっているのですよ。みなさんの不用品が、地域の子どもを助けていると考えるだけで、本当に嬉しく、また私が働けば働くだけ『こども食堂』にお金が入るため、その責任とやりがいを強く感じています。


子どもの居場所を増やしたい

どんなお子さまが多いですか?

幼稚園から小学生まで、毎回200人ほどが来てくれます。8割はテイクアウトとして手渡し、残りの2割はその場で食べていますね。始めた当初は、お母さんと一緒にくる子どもが多かったですが、最近ではお使いのように一人で来る子どもも増えました。また、地域の人からオムツの寄付などもあり、来ていただいた方へ配っています。とても暑い日にスイカを持ってきてくれた人もいらっしゃいました。その日は子どもたちとスイカ割りをして大変盛り上がりましたね。現在では、料理の準備や仕込み、当日の運営についても、地域の方に色々とお手伝いいただいており、本当に助かっています。


仕事をするうえで、心掛けていることを教えてください。

『こども食堂』を通じて“地域の活性化”の力になりたいと考えています。とはいえ、私一人の力では地域全体をカバーすることはできません。区内で『こども食堂』を始める人が増えると嬉しいですね。ちなみに、『こども食堂』は、誰でも、明日から始められるノーリスクの社会貢献だと伝えています。補助金や、様々な民間企業からの支援を受け取り運営することができます。それだけでは、生計を立てることはできないかもしれませんが、私のように他の事業との掛け合わせることで、人や物やお金の循環を生み、やりたいことをして報酬を得られるライフワークにすることができると考えています。もし、『こども食堂』の運営に興味をもたれたら、是非ご連絡ください。私の持っているノウハウはすべてお伝えします。他にも月1回、大田区に関わる政治家を囲んで食事をしながら政治を話す『政治カフェ』を主催。毎回10人以上の参加者がいて、政治を身近に感じることができると好評です。『こども食堂』や『政治カフェ』の活動を通して感じたことは、「地域活性化に向けた活動をしている人は意外と多い」ということ。そして、発信が限定的であったり、活動の情報が周囲に届いてなかったりと、せっかくの良い活動が人に知られていないことが多いということ。そんな活動をしている人ともっとつながり、協力することで大田区の活性化につなげていきたいですね。今後は、学校以外の子どもの居場所作りに取り組みたいと考えています。これからも活動の輪を広げ、いずれは実家や親戚の家のような、みんなが知っていて立ち寄りやすい場所になると嬉しいですね。みなさんも是非、一度お越しください。


インタビュー後記

閑静な住宅街の一角にある、段ボールや荷物が積み上げられた建物が『こども食堂』を運営する井上さんの住まいだ。先の区長選挙ではウグイス嬢も務め、政治を身近に感じつつ、民間でできる地域活性化を実践している井上さんは、大田区の誇る地域活動家の一人だ。

お問い合わせ

名前:キャビンこども食堂

住所:東京都大田区南雪谷5‐3‐12cafe CABIN

電話:090-4373-7280

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。