まちの仕事人インタビュー
真の日本の魅力を発信する
株式会社SeiRogai 代表取締役社長 Samuel Yuen (ユエン・サムミヨル) さん インタビュー

オーストラリア出身。米国のNY Film Academyで学び、ハリウッドで経験を積んだ映像プロデューサー、監督、国際広告コンサルタント、起業家。多文化体験とエンターテイメント業界の接点を踏まえた、テレビ番組、TVCM、広告、ドキュメンタリー、その他のメディアプロジェクトを専門とし、マーケティング・広告業界で20年以上の経験を持つ。2019年より『株式会社SeiRogai』を創業。タイ王室一員の書記長も務める。

日本と世界の架け橋となる

増上寺の堀江上人(左)リン・レイチェル氏(中央)ユエン・サムミヨル氏(右)

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

“日本の文化や工芸品・特産品”をもっと世界に知ってもらいたいと考えたことがきっかけです。これまでに多くの国に住み、訪問してきましたが、日本ほど多様な文化を持つ国には出逢ったことがありません。その一方で、海外から日本に来る多くの外国人は『KYOTO』『TOKYO』『OSAKA』といった有名な観光地しか訪ねていません。これは、外国人が有名な観光地に行きたいということではなく、地方の観光地の発信が、海外に届いていないという現状があるためです。私は、ハリウッドで経験を積んだことで、テレビ番組やCM制作、広告やドキュメンタリーなど、様々な手法で、文化や商品の魅力を映像で伝える技術を身に着けています。その技術と知識を活用して、私が東南アジアと日本の架け橋になりたいと考え、2019年、翌年に東京オリンピックを控え、海外の企業や人が日本に大きな興味を持ち、注目の集まっていたタイミングで、インバウンド需要を見越して『株式会社SeiRogai』を創業しました。ちなみに、社名は“正露丸”にインスピレーションを受けています。日本の人は昔から身近にあるため、当たり前のように服用しているかもしれませんが、日本にやってきて、初めて服用したとき、その効用は素晴らしく、非常に魅力的だと感じました。SeiRogaiの「SeiRo」は“正露”丸と名前の似ている“成功”という言葉の意味も込めています。「gai」は“街”を意味しており、商店街のような人の集う街となり、関わるみなさんを成功に導くというメッセージも込められています。

どのようなサービスを提供されていますか?

企業や自治体の国内外への発信・展開をワンストップでサポートしています。その中でもハリウッドで経験を積んだプロデューサーの技術を生かした『動画制作・映像制作』と、ハーバード大学院を卒業した共同創業者の持つ、投資会社や海外のシンクタンクでの経験を生かした『マーケティング・広告宣伝』に強いことは弊社の特長です。その他にも、市場調査、海外展開戦略・海外販路開拓の支援、創業支援などを含む『ビジネスコンサルティング』に加えて、『情報発信サービス』をスタートしました。その一つがGlobal Virtual Travel』という独自のVR360度撮影手法を活用したバーチャルツアーの作成です。繰り返しになりますが、日本には魅力的な場所や文化、工芸品や特産品がたくさんあります。それらを世界中の人にもっと知ってもらいたいと考えています。本サービスは、VRゴーグルを持っていなくとも、パソコンやスマートフォンから誰でも臨場感溢れる日本の魅力を体験できる、新しいスタイルのDX観光コンテンツです。時間やお金のない人であっても、気軽にアクセスすることができるため、貧富の差による経験の不平等を改善できるだけでなく、人生に変化を与える新しい機会を生み出してくれます。歩けないなど身体に不自由を抱えている人でも、自宅にいながら海外の文化を体験ができることが魅力の一つですね。もちろん、このサービスにも独自のノウハウが詰まっています。多くの撮影スタッフが周囲にいても、画面に入らなければ撮影できるテレビ番組と比べて、360度見渡せるVRの撮影は、少人数による高い撮影技術が必要です。また、見栄えの良い場所だけを切り取るのではなく、VRを通してその場を一緒に歩いているような体験と、その文化を知識として学んでもらうためのストーリーを音声解説で行っています。これらには、私がハリウッドで経験を積んだ映像プロデューサーの技術が詰まっていますね。今後はVRを見るサイトから、日本までの旅行の予約ができたり、VRの中で取り上げた工芸品や特産品を、その場で購入することのできるECサイトのリリースを進めています。府中市との協働事業として行った、最初の実証実験である府中市・大國魂神社のツアーは、SeiRogai独自のプラットフォームにて独占公開中です。


「増上寺VR360度バーチャルツアー」は今年の秋に Global Virtual Travel でオンライン公開予定


最新では『増上寺』をVRで紹介するプロジェクトを行いました。『三解脱門』は、今後建て替えが始まってしまうので、建築当初の状態としては最初で最後のVR化となりました。このVRに映っている『大蔵経(仏教聖典)』は、800年前に作られた経典で、日本からユネスコへ「世界の記憶」として登録してもらうよう推薦を受けている国の重要文化財。海外に経典のオリジナルが残っていないという事情もあり、実際にそれを広げて見せてもらえることは貴重であり、東南アジアを中心とした仏教国の方に多くのアクセスをいただいています。これからは、こうした日本の文化や伝統工芸のデジタルアーカイブ化をどんどん進めていきたいですね。ちなみに、増上寺はアメリカ人にも人気のスポットなのですよ。それはX-MENシリーズの主人公“ウルヴァリン”が活躍する、映画『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)の逃走シーンの撮影が、増上寺の本殿前の大階段で行われたからです。増上寺のVRが作成されたことを報道した海外のニュースは、2,900万PVと多くの外国人に関心をもっていただきました。



魅力的なストーリーを発信する

シンガポール中小企業庁主催のイベントでご挨拶するユエン氏とリン氏

どんなお客さまからのご相談が多いですか?

海外事業の戦略についてアドバイスの欲しい『企業』や、地域の魅力を国外に発信したい『自治体』からのご相談が多いですね。弊社は内閣府が主導する『デジタル田園都市国家構想交付金』の「スタートアップ加点対象事業」に選ばれています。“デジタルの力で、地方の個性を生かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図る” という趣旨のもと、弊社をご活用いただく企業や自治体に交付金が支給される制度です。交付金を活用していただくことで、弊社を利用しやすい環境になっているとも言えますね。ちなみに、この交付金の対象となる企業のうち、外国人が代表を務めているのは弊社のみ、インバウンド系のVR事業でも唯一選出されています。

最近の活動について教えてください。

東南アジアとの強い架け橋となるべく、シンガポール政府とも契約を結びました。直近では、シンガポール中小企業庁の依頼で動画を制作し、都内のイベントでお披露目されました。内容は、シンガポール中小企業庁のサービス概要と、日本市場へ進出したシンガポールの中小企業の体験談をまとめたものです。このイベントへは日本国内外の多くの企業が参加しており、制作した動画が大きな注目を集めました。シンガポールとのビジネスに興味があっても、何から始めたら良いか分からないとう日本企業の方は、お気軽にご連絡ください。このように、シンガポール政府と密接なつながりがあるだけでなく、現地のシンガポール企業とも良好な関係を築いていますので、日本企業のシンガポールを含めた海外進出を積極的にサポートします。また、SeiRogai はJAPANブランド支援パートナー企業として認定されており、企業様の海外進出を全力でお手伝い致します!


ユエン氏とリン氏にお経について解説する増上寺の小林執事⻑

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

“日本と世界の架け橋になる”という想いは、創業時から変わらず強く持っています。また、私は映像プロデューサーなので、クリエイター視点による「日本」と「海外」のコラボレーションには、強い関心がありますね。日本国内で使い古された映像撮影スキルも、海外から見ると斬新で興味深いものがあります。また、海外で当たり前のように使われている映像撮影スキルの中には、まだ日本で見たことのないものがあるのです。こうした異文化のクリエイティブの掛け合わせによる新しいアイデアは、いくらでも生まれそうですね。そう考えるだけでワクワクしてきます。これからも、日本の魅力をどんどん世界へ発信していきますので、みなさんお気軽にご相談ください。

インタビュー後記

多文化での生活を体験し、世界最高峰のエンターテイメント業界で活躍してきたユエンさんが辿り着いた国が日本。『SeiRogai』が、社名の由来となった胃腸薬のように、企業や地方自治体の不調を改善する役割を果たしてくれることは、間違いない。

お問い合わせ

名前:株式会社SeiRogai

HP:https://www.seirogai.jp/  

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。