まちの仕事人インタビュー
世界初の技術で日本・世界を変える!
株式会社アサノ不燃 代表取締役社長 浅野 成昭 (あさの なりあき) さん インタビュー

福井県出身。昭和25年生まれ。

27歳で一級建築士を取得し、28歳で建築会社の設計部長に就任。

33歳で独立し一級建築士事務所開所と同時に施工会社設立。

住宅ではトステム大賞受賞、木造三階建て住宅や気候住宅、木造建築物にて林野庁長官賞のほか、日本ログハウスイヤーなどを受賞し、横浜みなとみらいログハウス事業に参加。

その後、地域活動体験から45歳で世界唯一の木材の不燃化事業に着手する。日本初の不燃木材を開発し、林野庁長官賞(木材利用技術開発)や日経BP賞、新日本100選、内閣官房「国土強靭化計画」事例に選定された。

日本ブランドとして国内外の特許を取得し、火災にならない新しい安全安心な生活空間の創造に取組中。

事業を始めるまでの経緯を教えてください。

私は福井県の出身です。私は自分でいうのもなんですが一本気な性格でして、これと決めたらとことんやる。構造計算、施工、管理ありとあらゆる業務を任せていただき、それぞれのタイミングで全力で取り組みました。27歳の頃には一級建築士を取得、その後、独立してさらに加速して様々な仕事に携わるようになりました。当時この業界には色々な出自の方がたくさんいましたからね。本当に大変だった。でもね、やっぱり楽しかったです。何が何でもやってやるという気概に満ちてたこともありましたし。高度経済成長期という環境も後押しして、非常に恵まれていたと思います。

 

建築業界で働いていた45歳の時にあるきっかけがありました。母方の実家が火事で燃えてしまったんですよ。幸いけがもなかったんですが、焼け落ちた家を見て呆然としました。地元の消防団に長年携わっていたので、現象として木が燃えることは理解している。それでも、大きく伝統のある木造がこんな簡単に燃え落ちるのかと。これはどうにかして本当の意味での「不燃」という概念を木材にもたせられないか。燃えない、腐らない、しかし、リサイクル可能な木材を作りたいと思ったんです。その当時、結構会社の業績も良かったんですが、思い立ったら止められない私の性格ですから、すべて投げうって新たに事業を起こすことにしたというわけです。

どのようなことにこだわりを持たれていらっしゃるのでしょうか?

消防団にいた経験から、とにかく火災の恐ろしさは理解しているつもりです。皆さんが思っていらっしゃる以上に火の回りは早い。しかも煙と有害なガスで、ものの数分で命が失われてしまう。家屋の火災もそうですが、ビルだって一度火災が起きてしまえばあっという間に延焼して逃げる時間なんてわずかしかありません。まず、この煙と有害ガスが出ないようにするためにどうするのか徹底的に研究しました

 

基本的に人体に安全な「ホウ酸塩」を水に溶かして消火剤として利用すればいい、というのは世界の研究者や業界では知られていたんですが、何せこれが容易には水に溶けないんです。当時、濃度約20%というのが限界でした。創業から5年、世界で初めて木材に最適な36%の濃度にすることに成功しました。もう執念でしたね(笑)消火能力が決定的に違う。どこも真似できない技術だと自負しています。

 

これだけの技術ですが、火事は依然として無くなりません。なぜなのでしょうか?

これは非常に難しい問題です。私どもが研究開発し、特許申請したのは20年近く前の事になります。本当であればこの技術が世の中に浸透し、火災という問題に一つの解決策を提示できたのではないかと思います。しかしそううまくはいかなかった。業界の構造的な問題もあると思います。

 

2000年施行の改正建築基準法では防火性能などが一定の基準を満たせば、木材でも「不燃」として使用を認められます。一度、国交省の不燃認定を取得し認められてしまえば、製品性能のチェックがあいまい。そうなると単価が安いものが市場で主流になってしまう。2011年に国交省が調査した結果、基準を満たさない業者があぶりだされ大騒ぎになりました。意図は違えど、燃えるものを不燃として扱ってきたというわけです。現在も、この大きな問題は解決していません。

 

これじゃいかん。本当の不燃技術を使った木材を使用しなければ、本当の意味での不燃にならない。世の中からいつまでも悲劇はなくなりません。しっかりとした法律を作り、業界に浸透させなければこうした技術をいくら創り上げてもダメなんです。そして我々も、研究開発して作ることは出来ても普及させることが出来なかった。大いに改善の余地があります。この解決策も現在準備中です。

実際どのようにして使うのでしょうか?またその効果を教えてください。

20年間日にさらしても日焼けも劣化も見られない木材


先ほどお伝えした「ホウ酸塩」を使用した特殊な薬剤を木材に注入または塗布することで製造します。一般的にホウ酸は害虫・害獣の駆除や防腐剤で使用されているのでこちらでご認識されてる方も多いでしょう。しかし濃度が濃くなるほど、不燃・耐火性を発揮します。しかも、安全性が高く、急性毒性は食塩とほぼ同程度であり環境汚染もありません。さらに、これは時間経過とともに判明した副次的な効果ですが、防腐性・防虫性・防カビ性が極めて高く長期間持続することもわかりました。写真にある木材は20年間も日の当たる場所に置いたものです。日焼けも劣化も全く見られないでしょ?この技術を応用して、紙製品や布製品にも利用することが出来ます。カーテン、障子、畳等、幅広く応用がきくんです。


(左)処置なし  (右)処置あり  もともと同じ色のカーテン


一つ実験をしてみましょう。今からこのティッシュペーパーに薬剤を塗布し、燃やしてみます。処置なしとありで燃え方がどう違うのか見ていてください。



処置なしのティッシュは2秒で燃え尽き、薬剤を塗布し乾燥したティッシュは焦げはするものの煙も火も出ない


■ええ!!??こんなに効果が違うものなのですね!!燃えないことにも驚きましたが、燃えるスピードがこれほど早いとは。。。


そうですね。燃える時一気に火が燃え移るのは煙やガスのせいです。これを抑えれば焦げはするものの、燃え広がるという現象を限界まで抑え込むことが出来ます。



実験で燃やした大きな木材。焦げた部分を触っても手に煤がほとんどつかない。


浅野さんの目標・夢は何ですか?

煙と有害ガスを抑えて命を守ることです。火災から命と財産を守り、新しい安全安心な世界基準をつくりたい。そう考えています。現在本社は東京の江東区にありますが、研究開発分野は福井県のセルフネンという会社で行っています。この3月には福井県のご協力で、木材と断熱材などの構成による「木造火災・比較実験」木造・火災比較実験(定点カメラ)

を行いました。約5mの2階建て木造の実験棟を設置し、1つは「不燃処理なし棟」、もう1つは「セルフネン不燃処理棟」として、燃焼比較を行いました。実験は成功です。自治体の方にもその効果を実感していただくことが出来ました。燃えないだけではなく、不燃処理を施した木造建築は、その内部の温度も制御できることが分かりました。一般的な家庭で火事が起きた際、出火元が1階であれば2階には煙もガスも届くことは無く、火事による温度向上を感じることもありません。

 

最近では海外からのお問い合わせが多くなっています。特にドバイなどは超高層ビルでの火災が頻発しており、断熱材の不燃化の課題解決に躍起になっています。(※世界的に不燃化した断熱材はなく、セルフネン技術を活用し薬剤を塗布した場合「UL94規格」最高ランク【5V-A】レベルです)この技術が日本だけでなく海外で応用されるようになれば本当に嬉しいですね。

 

火災そのものはなくなることは難しいかもしれません。原因はヒューマンエラーなのか、自然火災なのか様々と思います。しかし、こうした技術を世界中の人々が認識し普及することが出来れば少なくとも現在よりも火災による悲劇を減少させることが出来ます。私は現在73歳ですが、そんな世の中を作るためにもうひと頑張りしたいと思います。体力が続くまで走り抜けたいと思います。




木材で出来たフラワーアート。不燃処理済みのこの花は防腐・防虫効果もありいつまでもきれいに咲き続ける。


インタビュー後記

長年夢を追い続け、技術を確立し、普及活動に全力を尽くす。浅野さんの生き様がとにかく格好良すぎます。これだけの技術があればどこも引く手数多じゃないんですか?取材中何度もこの言葉を投げかけました。その度に歯痒い表情をされる浅野さんの顔が忘れられません。技術は確立するだけでは意味がない。使われて初めて意味を成す。私もそのことを初めて理解出来た気がします。一方で、夢があればいくつになってもすさまじい力を発揮できるのだなと感じました。とにかくバイタリティが凄い。そして、そんな人を応援したくなる。今回は私自身も学びが多く人間的に成長出来るいい機会をいただきました。皆様も是非この付加価値の高い技術の普及を応援してください。

お問い合わせ

株式会社アサノ不燃

〒135-0016 東京都江東区東陽5-28-6 TSビル5F

TEL:0366660315

HP:https://funen.jp/

*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。