今回は相続ハウスの小嶋由佳税理士にお話をうかがいました。

相続ハウスは駅前の路面店で相続税専門の税理士事務所を運営するという新しいビジネススタイルを開拓しています。

相続問題への想いや今後の展望をお伺いしました。


Photo:えがお写真館

日本にはまだ無いスタイルです

高木優一:「相続ハウス」って相続のことを専門的に行っているのですよね。「相続だけ」のことを取り扱うお店って、発想が斬新ですね。なぜやろうと思ったのですか。

小嶋由佳:きっかけは、2015年の相続大増税というのが大きいと思います。ただ、個人的には、色々な事のタイミングが合ったことがスタートにつながったのではないかと考えております。

例えば、今、日本にとって大きな課題である少子高齢化問題です。今後、高齢化が進んでくると単純に亡くなる人も増えていきますよね。65歳以上人口のピークが2040年代といわれていますので、少なくとも約30年間は、その傾向が続くということになります。

この大増税と高齢化で、相続税のニーズが高まるにもかかわらず、相続税ができる税理士がほとんどいないという現状も、スタートのきっかけと言えます。

また、内部要因としては、会社が投資するタイミングが合ったことでしょうか。私たちの会社は、グループ全体で約200人が所属する会計コンサルティング会社でして、創業時から、約15年間、経営者に近い形で様々なサービスを提供してきました。その中で、社長は、次のビジネスチャンスとして、今回のような個人向け事業への展開も考えていました。コンサルを行う中でオーナーさんの相続税もやっていましたから、会社にはそのノウハウは蓄積されていましたし、今後、広く市場ニーズが広がるということで、個人のお客様にも提供できるのではないかと考えたことがあります。

最後に、完全に個人的なことなのですが、それまで、私もフロントメンバーとして、コンサル業務でかなりのハードワークをしてきました。そんな時、自分に子供が生まれて、今後の働き方を考える中で、より専門的な分野に特化して何かを成し遂げたい、特化するなら「相続」だと思っていたというのも少しの要因かも知れません(笑)。

このように、色々な考えとタイミングが合って、はじめることになったのが『相続ハウス』だと思います。

高木優一:相続ハウスのビジネススタイルで一番目を引くのはこの店構え、今までにはない税理士事務所のスタイルで一見賃貸の不動産会社かカフェの様な佇まい。その上相続だけを、しかも来店型でやっているところですよね。そういうところって他にあるんですか。

小嶋由佳:日本には、まだ無いと思います。相続を専門にしている税理士や司法書士・行政書士はいると思います。

ただ、来店型で、しかも路面店でやっているのは、今のところ、私は知りません。

来店型でやって行こうという構想は、社長からでした。アメリカに「H&Rブロック」というところがあるのですが、そこは、個人向けの確定申告とか資産運用なんかを支援してくれる相談窓口で、ガラス張りのオープンスペースで、気軽に入れて・・・。

アメリカでは、日本の企業のように年末調整などやってもらえませんから、皆さん、自分で確定申告をするんです。その相談に乗ってくれるようなところです。

日本でいうと、業種は違いますけど、イメージが近いのは、保険に特化した「保険の窓口」等ですかね。そのTax版みたいな感じです。

どれだけ先になるかは、わからないですが、日本にも年末調整制度がなくなって、個人が確定申告をする時代は、きっと来ますから、こういうスペースがあっても良いのではないかと。

ただ、そうは言っても、まだまだ先の話ですから、まずは、わかりやすく「相続」に特化しようということになったのです。

想いを束ねるパートナー

高木優一:なるほど、先ほど、税理士でも相続に特化しているところがあるとのお話が有りましたが、そういった税理士法人と相続ハウスはどこが違うのでしょうか。

小嶋由佳:私たちが、大事にしているのは、「サービス」です。特に、高木さんも良くご相談を受けると思いますが、「相続」というと分野が多岐にわたっているので、どこに相談すれば良いのか、どういう相談をすれば良いのかわからないという方も多いですよね。そういった方が、特定の専門家、例えば、税理士のところに相談すると、税務の部分は詳しいですから、そういう話に引き込んでその部分の解決はしてくれるものの、お客様の本当のお悩み解決にならないということがあるのではないかと考えたのです。

ですから、相続ハウスでは、初回を敢えて税理士ではない接客のプロが対応することにしています。お客様の本当のお悩みはどこにあって、どういう手順で紐解いてあげれば良いのか、どういう順番で専門家につないだ方が良いのかという交通整理のお手伝いをしています。それには、お客様の話をまずは聞く、ということが大切になってきます。

実際、「こんな話、先生だったら聞いてもらえないものね」と、すっきりして帰られる方も多いです。

高木優一:税理士法人でも、ワンストップでやっているところありますよね?

小嶋由佳:実際どういう風に行っているかまでわからないのですが、提携している法律事務所などに紹介するに留まっているところが多いのではないでしょうか。その点、相続ハウスでは、店舗でいろいろな専門家とのご面談が可能ですから、コンサルタントが常に同席させていただいています。そこで、一度コンサルタントが聞いたことがあれば、補足させて頂いたり、事前に共有して面談ができますから、お客様は、同じことを2度や3度も説明する必要が無いのです。その上、専門家によっては、専門用語を無意識に使ってしまうことが有りますが、同席しているコンサルタントが、お客様が理解できてないかなと感じたら、噛み砕いた言葉でフォローさせていただいたりしています。先生には、聞きづらいことや言いにくいことも、コンサルタントがきっちりフォローしますので、お客様は安心です。そういったところも、一般的な税理士法人との差別化になると考えています。

高木優一:コンサルタントは、女性が多いようですが、女性に絞っているのですか。

小嶋由佳:特に、女性限定で採用をしているわけでは有りません。先ほども申し上げましたとおり「サービス」にこだわっておりますので、そういうところを重視すると必然的に女性が多くなってしまうということだと思います。実際、男性スタッフもいます。

日本人の相続に対する意識を変えたい

高木優一:相続ハウスに相談に来る方は、どんな人がいらっしゃるのですか。

小嶋由佳:そうですね。一番初めに来店されるのは、相続をする人か受ける人かで言うと、圧倒的に受ける人からのご相談が多いです。お子様とか、ご夫人とかですね。男性より女性の方が長生きするからかもしれません。

相続をする人は、「配偶者や子供たちが何とかしてくれるだろう」、「もう、死ぬことを考えなくてはいけないの」という人が多いようです。実際、親等に相続の話をすると「早く死んで欲しいのか?」とか、「親の遺産を当てにしているなんて、嫌な子だね」みたいなことを言われている方もいるみたいです。

高木優一:今後も、店舗は増やしていく予定ですか?

小嶋由佳:相続ハウスみたいなお店は、絶対にニーズがあると思うので、増やさざるを得なくなるときが、来ると思っています。ただ、多ければ良いというものではないので、質を担保しつつ、慎重に多店舗展開を考えていきたいと思います。

高木優一:先程のお話でも出てきた通り、相続する方の半数は女性である以上、同性の税理士に相談したいとお考えの依頼者は潜在的に多いはずです。小嶋先生の様な女性税理士が活躍して生前に気軽にご相談できる窓口として敷居を低く、そして明るい雰囲気で気軽にご相談をお受けする空間やサービスの向上にこれからもご尽力下さい。今日はとてもいいお話を伺うことが出来ました。更なるご活躍を期待しております。