まちの仕事人インタビュー
金融x心理学で心豊かな社会へ〜金融教育家の新たな挑戦〜
株式会社 ウェルス・マインド・アプローチ 代表取締役 上原 千華子 (うえはら ちかこ) さん インタビュー

株式会社ウェルス・マインド・アプローチ代表取締役。宮崎県宮崎市出身。大阪外国語大学卒業。大学卒業後、日立建機株式会社に入社。海外営業部にて海外の代理店向けの輸出サポート業務、オーストラリア、ニュージーランドでの業務を経験。その後、外資系石油会社BPジャパン株式会社に転職。トレーディングサポート業務やオペレーション支援など、貿易実務に従事する。2年ほどの貿易実務経験を経て、外資系投資銀行に転職。JPモルガン、ドイツ銀行、クレディ・スイスなどを渡り歩く。債券・金利スワップトレーディングにおけるリスク管理や取引管理、決済実務、クライアントの業務改善などを担当。競争激しい業界で、マネジメントを経験するまで上り詰める。その後、心理学×金融というファイナンシャルセラピーを日本に広めるために独立。現在は、日本におけるファイナンシャルセラピーの第一人者として講演や相談会、執筆活動を中心に精力的に活動。

幼少期より海外へのあこがれが強かった上原さん。ファーストキャリアとして日系企業である日立建機を選んだ理由はなぜだったのでしょうか。

インドネシアに新しい工場を建てる計画があると知ったからです。私は大学時代、インドネシア語を専攻しており、インドネシアへのショートステイ経験もありました。そういった経験をする中で、インドネシアという国は今後絶対に成長する。自分もその成長を肌で感じたいと思い、インドネシアに関わることができる企業を探していたんです。そんなとき、日立建機がインドネシアに新しく工場を作るということを知りました。日立建機に入社して、インドネシア駐在に選ばれたい。そんな下心から就職した経緯です。しかし当時は女性を一人で駐在させるのは危ないという理由から結局当初の夢は叶わずでしたが。

その後、外資系の石油会社に転職しています。大きく職種を変更したように思えますが、キャリアチェンジをした理由を教えてください。

一番は外資で働きたいと思ったからです。日立建機時代、ニュージーランドの代理店と仕事をする機会があったのですが、そこの支店長が女性だったんです。当時の建設業界は海外でも女性が出世をすることは難しいとされており、男性社会でした。そのため、私自身も出世欲というのはあまりなく、「それなり」の仕事をしていたんです。そんなときに、その女性支店長と出会いました。彼女と話をする中で、「女性だしこのくらいでいいやという考えは間違っている」とインスピレーションを受け、ここから仕事に対する考え方が変わりました。中学生時代から、海外へのあこがれが強かったのですが、自分が外資で通用するのかという漠然とした不安もありなかなか踏み出せずにいましたが、この出会いを機に外資に挑戦することにしたという経緯です。結果、日立建機時代に培った輸出入関係の経験が活かせるBPジャパンという外資系石油会社に転職することができました。


石油会社からの転職後、外資系金融機関のキャリアがとても長いと思います。外資系金融機関で働き始めてから独立までの経歴を教えてください。

外資系金融機関では、かれこれ17年勤務していました。石油会社時代は、トレーディング業務にも携わっていたことに加えて、父が銀行員だったこともあり、昔から金融に馴染みはありました。そのような環境もあり、金融業界で働いてみたいという気持ちが膨らみ、外資系金融機関に転職することになったんです。最初は、アシスタントとして入社しました。商品としては主に、債券と金利スワップを専門に取り扱い、トレーディングに関わるリスク管理や取引管理、日本のクライアント向けに業務改善の提案をおこなっていました。アシスタントからのスタートでしたので、がむしゃらに働き続け、最終的にはマネジメントまで経験することができました。ただ、朝から晩まで働き詰めだったこともあり、ある日、身体を壊してしまったんです。今の生活スタイルを継続することにドクターストップがかかってしまい、体調が回復してもこの業界で働き続けることはできなくなってしまいました。当然他の業界で働くキャリアなんて全く考えておらず、当時は途方に暮れていました。それでも何かしなければいけない。半ば追い詰められた感じで独立したというのが最初のきっかけとなります。

17年かけて積み上げてきたキャリアを一瞬で失った絶望は計り知れないですね。独立するときに不安はなかったのでしょうか。

起業準備中に幸いにも仕事の依頼をいただいたので、最初はそんなに不安はなかったです。最初の仕事をいただいたのは、ある中小企業の社長さんから。その会社の業務改善のサポートをする仕事でした。金融機関でも業務効率化のプロジェクトを手掛けていたので、私の得意分野が活かせた形になります。その後は業務改善のプロジェクトの仕事を受注して生計を立てていました。お仕事をいただけるのは大変ありがたいことでした。しかし、私自身その仕事を一生の仕事にしようとはあまり思えなかったんです。そんな頃、友人から投資に関する相談を受けることが多くなりました。話を聞いていると、金融業界では常識と思えることでも、業界以外の方は意外と知らない人もが多いことがあると実感したんです。そういう相談が多いのであれば、いっそのこと同じ悩みを持った人を集めて勉強会をしようと思い立ち、副業的に友人を集めて勉強会を開催するようになりました。やってみると、思いのほか反応がよく、私自身も楽しめましたし、友人たちにも非常に喜んでもらうことができた。この体験が今の仕事の原点になっていると思います。


進むべき事業の方向性が決まった後、心理学×金融のファイナンシャルセラピーを提唱しているかと思います。一見すると親和性のない組み合わせですが、どのようなものなのでしょうか。

自らのお金についての価値観を整理して、ライフプランを考えるというものになります。人にはそれぞれお金に対する「クセ」があります。それをワークを通じて自分で理解し、見つめ直す。そうすることで、お金についての悪習慣を改善して、理想のライフプランを実現していくというのがファイナンシャルセラピーです。アメリカで行われた研究では、お金のクセというのは、両親の影響が大きいと言われています。たとえば、両親から「うちはお金のない家だから」と言われていると自分はお金がないんだと思ってしまったり、ボーナスが入ると豪快に使い切ってしまう両親だと、自分もそういうお金の使い方をしてしまったりとか。本人はそういう両親の姿を見て、「自分はそうはならない」と否定をしていても、無意識のうちに自分もそういうお金の使い方をしてしまったりしていることが多いんです。私自身も、金融業界で長らく働いていたのに、なぜかお金の不安を取り除くことができませんでした。その原因は性格によるものだと勝手に思い込んでいたんです。しかし、原因を深堀してみると大学生の頃に父が突然他界して、働き手がいなくなったことによる、生活への不安感というのがお金に対する不安の正体だとわかったんです。それを自分で気が付き認めたとき、すごく楽になった。不安の正体を発見するだけでなく、それを前向きなものに変えていく。こうすることで、お金だけでなく、人生そのものをいい方向に導くのが、ファイナンシャルセラピーとなります。

ファイナンシャルセラピーとは、漠然とした不安を言語化することで、自分の価値観と向き合い改善していくというアプローチなのですね。仕事をする上で大切にしていることはなんでしょうか。

なんのための資産形成なのかを常に一緒に考えることを大事にしていますね。資産運用というと、どれくらい儲かるのかということだけに注力している方が非常に多いです。ただ本当は、その儲かったお金を使って叶えたい未来というのが人それぞれあるはずなんです。漠然と老後資金が心配だからというのではなく、老後はどこで誰と一緒に時間を過ごしているのが理想なのか。そうやって具体的に未来を想像してもらうことを心がけてカウンセリングさせていただいています。あとは、常に中立を意識することですね。私はお客様からお願いをされたとしても、金融商品を勧めることはしません。金融商品を取り扱ってしまうと、お客様は相談のとき、「相談をしたら何か売り込まれるのではないか」と不安を感じてしまうと思います。そうなるとお金の相談をするハードル自体が上がってしまう。私はあくまで、投資信託や証券会社ごとのメリット、デメリットをお伝えするだけです。その方が投資をする上での判断材料や基準を提供することに専念しています。中立でいることこそが、お金に関する相談のハードルを下げることになると思いますし、引いては投資にもっと興味を持ってもらえるきっかけになると思ってますから。

商品を売らないファイナンシャルアドバイザーであれば確かにはじめての方でも安心して相談ができますね。最後に読者に一言お願いします。

自分のお金のクセを振り返って、健全なお金との付き合い方を考えてもらえたらなと思っています。優秀な株式トレーダーでも、株価の上下で動揺しやすい人と冷静な人がいます。アメリカの有名な心理学者がその原因を追究したところ、実は幼少期におけるお金に対する思い込みが原因とわかりました。金融のプロでさえもそのような悪いクセから抜け出せないのです。弊社の提供するファイナンシャルセラピーでは、プロの株式トレーダー向けに提供された講座のエッセンスを取り入れています。金融のプロの世界でも活用される考え方を活用することで、一緒に悪い習慣から脱却し、よりよい人生を作り上げるサポートができればと思っています。また、私が執筆した"「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー"という本についてもお手に取っていただけると嬉しいです。ご自身のお金の価値観を見つめ直すためのヒントになるような内容ですので、お金とより良く付き合っていきたいと思っていらっしゃる方にはぜひご一読いただければと思います。

インタビュー後記

外資系金融機関で17年のキャリアがあるというのは金融出身の人間からすると化け物です。そのため、インタビュー前、上原さんという方はどんな恐ろしい人なのだろうと実はかなり警戒していました。しかしインタビューを始めるとその印象は180度変わりました。まず雰囲気がとても穏やか。しかも対応が非常に丁寧。いい意味で私の抱いていた外資系金融機関の方の印象をぶち壊してくれました。一方、金融についての話題になると一変。さすが元外資系金融機関というクレバーさが端緒に表れていました。申し分ない金融知識と経験を持ち合わせながらも、お人柄についても非の打ちどころのない上原さん。そんな方が本気で日本の金融教育の未来を案じて変革を起こそうとしている。インタビュー中も熱い想いをひしひしと感じました。もし、現在の金融機関担当者で満足ができていない方がいらっしゃるのであれば、一度上原さんとお話されてみることをおすすめします。きっと今までの担当者からは出てこなかった、目から鱗の話の数々を聞けることでしょう。

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*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。