
マジシャンとして活動している才藤大芽さんは、京都大学を卒業後、一般企業への就職を選ばず、プロマジシャンの道を歩んできた人物だ。音楽に合わせ、言葉を使わずに構成されるステージマジックを得意とし、日本では数少ない表現スタイルを確立している。国内外の大会にも積極的に挑戦し、マジックの世界大会であるFISMにおいて第7位という実績を残した。現在はマジックバーへの出演や外部イベントでのパフォーマンスを主軸に活動する一方、マジックの構造的な思考を生かし、マーダーミステリーの制作・執筆にも取り組んでいる。分析と戦略を重ねながら、表現の可能性を広げ続けているマジシャンだ。
今の仕事を始めたきっかけを教えてください
幼い頃から明確な原体験があったわけではありません。小学生の頃に学芸会でマジックを披露した記憶はありますが、それが現在につながる強烈なきっかけだったとは感じていません。本格的にマジックの道を選ぶことになったのは、大学四年生のときに出場した大会がきっかけです。その大会で思うような結果を残せず、「大会で勝つためには、他の誰よりも練習時間を確保する必要がある」と痛感しました。就職をすれば、どうしても練習時間は限られてしまいます。そこで、就職ではなくマジック一本で生きる道を選びました。勝つために必要な環境を自分で選んだ、という感覚でした。

現在の活動に至るまでの経緯を教えてください
最初から明確な形を描いていたわけではなく、その時々で自分に必要だと感じた選択を積み重ねてきました。活動を続ける中で意識していたのは、感覚や勢いに頼らないことです。マジックを一つの仕事として続けていく以上、再現性のある努力や仕組みが必要だと考えてきました。出演機会を増やしながら、自分の強みや立ち位置を分析し、どの分野で勝負するのかを整理していく。その積み重ねが、現在の活動基盤につながっています。
活動の特徴を教えてください
私のマジックの特徴は、音楽に合わせ、言葉を使わずに構成するステージマジックにあります。言語に依存しないため、年齢や国籍を問わず伝わる点が大きな強みです。日本ではまだ珍しいスタイルですが、その分、印象に残りやすい表現だと感じています。また、直感だけで演じるのではなく、観客の視線や心理の動きを分析し、戦略的に構成している点も特徴です。どの順番で演じるか、どこで間を取るかなど、細かな部分まで設計することで、安定したパフォーマンスを目指しています。
挑戦したからこそ、一歩先に進める

お仕事で大切にしていることを教えてください
仕事をするうえで大切にしているのは、挑戦を避けない姿勢です。安全な選択をすれば失敗は減りますが、それ以上の成長は望めません。難易度の高い技や新しい表現に挑戦することは、常にリスクを伴います。しかし、その一歩を踏み出さなければ、今いる場所から先には進めないと考えています。失敗を恐れるよりも、挑戦しなかった後悔の方が大きい。その意識を持ち続けることを、自分の軸としています。
この仕事のどんなところが好きですか?
マジックは、準備と結果が非常に明確な仕事です。何百時間と積み重ねた練習や試行錯誤が、数分のステージに凝縮されます。その過程自体が、私にとっては大きな魅力です。また、言葉を使わずとも、音楽と動きだけで人の感情が動く瞬間に立ち会えることは、他の仕事ではなかなか得られない体験だと感じています。一瞬の驚きや静まり返る空気を生み出せたとき、この仕事を選んで良かったと実感します。
今後やりたいこと等、展望を教えてください
現在は、マジックの知見を生かしたマーダーミステリーの制作・執筆に力を入れています。マジシャンとして一定の経験を積む中で、「作品として残るものを作りたい」という思いが強くなりました。観客が物語に参加し、推理を行うマーダーミステリーは、マジックと非常に相性の良い分野です。今後は、この新しい挑戦を通じて、これまでとは異なる形で人の心を動かす表現にも取り組んでいきたいと考えています。
座右の銘を教えてください
私の座右の銘は、韓国の兄弟子から授かった「Challenge is always right(挑戦することはいつだって正しい)」という言葉です。大技に挑戦して失敗した際、「挑戦したからこそ、一歩先に進める」と声をかけてもらいました。その言葉は今も、自分の判断基準になっています。成功か失敗かではなく、挑戦したかどうか。その積み重ねこそが、自分を前に進めてくれると信じています。
インタビュー後記
才藤さんの話から伝わってきたのは、マジシャンという枠を超えた、非常にストイックな姿勢でした。感覚や勢いに頼らず、分析と戦略で勝負する姿は、まるで競技者のようでもあり、同時に表現者としての強い意志も感じさせます。「Challenge is always right」という言葉を、ここまで地に足のついた形で体現している人は多くありません。安全な道を選ばず、あえて難しい挑戦を続ける。その積み重ねが、彼のマジックに独特の説得力を与えているのだと感じました。
お問い合わせ
マジシャン 才藤大芽
Eメール:magician@saitotaiga.com
WEBサイト:www.saitotaiga.com
*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。