今回のゲストは株式会社オーダーズの半澤孝広さん。住宅を購入するという人生の大事業に対し、大手のハウスメーカーとは一味違った親身な対応をしてくれる、注文住宅のプロフェッショナルです。


Photo:長谷部ナオキチ

建売販売が行き詰まった頃

高木優一:もう半澤さんとお付き合いを始めて25年ぐらい経ちますが、知り合った当時、私はまだ不動産会社の営業をしていて、一方半澤さんはミサワホームに在籍されていました。


半澤孝広:25年ですか。もうそんなに経つんですね。



高木優一:その当時、私はハウスメーカーの営業マンの名刺を100枚以上持っていましたが、不動産屋の営業がハウスメーカーとコラボするなんてほとんどなかったですから、私は異端の存在だったですね。

平成一桁の時期は、バブルが崩壊し建売をメインとするハウスメーカーが傾いてきた時で、価格もどんどん下がっていきました。それで、手っ取り早く手離れの良い土地だけを売ろうとするメーカーが少しずつ出てきたのですね。私もずっと建売しか扱ってきませんでしたので、土地を売った際にお客様から「家はどこで建てたらいいんですか?」と聞かれると、「住宅展示場にでも行かれたらどうですか」なんて、今から見れば馬鹿な対応をしていたのですが、ふと「ああ、これからはこれかもしれない」と気がついたんです。川崎市の東急沿線付近の地域で、当時、売地の情報を集めて住宅展示場を回った最初の不動産屋が私でした。土地を売って建物を別個に建てるなどという文化は当時はなかったですからね。


半澤孝広:建売が当たり前の時代でしたから。今、高木さんがおっしゃったように、不動産会社の営業マンがハウスメーカーへ営業に来るなんてことはなかったですね。高木さんが初めてだと思います。我々が不動産会社に出向いて、売地を買おうという人がいればミサワを勧めてくださいという営業は行っていましたが、結構、門前払いを喰らうこともあったんです。そんな中、高木さんがいろいろなハウスメーカーを回られていたので、非常に印象には残っていました。



高木優一:上司に言われましたよ。みっともないことはするなって。でも、ハウスメーカーであろうと何であろうと、そこにお客様がいるのになぜ行かないのかっていうのが私の信条ですから。「今月の売地情報」というような20ページぐらいの体裁のファイルを携えて住宅展示場を回っていったのです。そのとき、しっかり話を聞いてくれたのが半澤さんでしたね。他のメーカーの対応は「ああ、そこに置いといて」などという素っ気ないものでした。


半澤孝広:そうでした。それから私はミサワホームを辞めて、有志だけで小さなハウスメーカーを立ち上げたのですが、そこも結局は経営に失敗して長くは続かず、今の注文住宅の会社を始めたという経緯です。


お客さんではなく、メーカーの論理で家を建ててしまう

高木優一:各ハウスメーカーとも住宅展示場には膨大な経費をかけているわけですが、あそこに来て物件を見て購入を決めるお客さんはほんのわずかですよね。


半澤孝広:1ヶ所の展示場で、月に2~3本契約を取れれば優秀だと言われますね。


高木優一:展示場の経費がすべてそのお客さんの建築費に乗ってくるわけですね。半澤さんがミサワホームをお辞めになり、次に立ち上げた会社も結局は社長になられた方がミサワホームと同じことをやりはじめた。つまり住宅展示場を作るという話になったのですね。


半澤孝広:そうなんです。大手とは違うやり方をしようと立ち上げたのにもかかわらず、結局は同じ轍を踏み、価格競争に巻き込まれ潰れてしまいました。



高木優一:考えてみれば、たとえば建材の質などは大手のハウスメーカーに頼もうと、半澤さんの会社に頼もうが変わらないんですよね。


半澤孝広:変わりません。大手のハウスメーカーはいつも高級品を使い、小さな我々みたいなハウスメーカーはチープな建材を使うなどということはありません。私のお客さんの例を挙げますと、その方は地主さんで大手のS社でもD社でも家を建てたことがあります。そしてある時に私と知り合い、賃貸住宅を建てたいという段になって見積りを出させていただきました。結果、D社とウチとでは、ほぼ同様の仕様であるにもかかわらず、1,000万~1,500万の間ぐらいの開きがありました。D社は大手のブランド力のある会社でしたが、そのお客さんは私を信用していただきオーダーに至ったのです。それから、その方の物件を10件建てさせていただきました。



高木優一:今のハウスメーカーによる家作りのどこが問題だと考えますか。


半澤孝広:ハウスメーカーはルールと言いますか、縛りが多くあって、100%お客さんの要望には応えられていません。計画を進めていくうちに、本来ならばお客さんのための家作りが、ハウスメーカー側の都合に合わせた家作りに変わってしまうのです。メーカー側の事情にお客さんが合わせるというような状況になってしまいます。


高木優一:お客さんは住宅の専門家ではないし、勉強する暇もないでしょうから、結局はメーカーの言いなりにならざるをいえない。


半澤孝広:そうなんです。


お客さんとの信頼関係の構築を最優先にする

高木優一:一般のお客さんはどうしても名の売れている大手のハウスメーカーの方が安心できる、信頼できると思いがちですよね。


半澤孝広:私は大手ハウスメーカーの営業も経験しましたし、その次の勤め先も小さいながら同じようなハウスメーカーでしたから、営業マンのお客さんへの接し方は良く心得ています。アフターサービスはしっかりしていますよとか、メンテナンスも対応しますよとか、当然のように言いますよ。でも、契約にこぎつけたお客さんより、新規のお客さんを掴むことで頭がいっぱいです。口では良いことを言うかもしれませんが、契約してしまえば気持ちは下降してしまいます。実際、アフター点検を3カ月、6か月、1年、きちんとやりますよと謳いますが、まともにやっているメーカーはほとんどないというのが実態です。



高木優一:新規の獲得の方にしか目が向いていない。


半澤孝広:そうです。また最近、どのメーカーも新築の着工件数は減っていまして、そこで目を付けたのがリフォームです。顧客の名簿を見直して、アフターケアや定期的なメンテナンスを放置していた過去の顧客のところへ行ってリフォームを売り込むという図式です。


高木優一:大手のハウスメーカーと半澤さんの会社とはどこが大きく違うのでしょう。



半澤孝広:価格の部分が違うのはもちろんですが、私が考える一番大きな違いは、私が最初から最後までずっと一貫して関わるということだと思います。初回面談から、設計打合せ、着工から着工後まで、キメ細かく関わり合うということですね。今、私どもは不動産部門も持っていて、そちらの方の収益もありますので、建築の方で大手メーカーのように躍起になって新規のお客を開拓しなくても経営的には問題ありません。ですから、お客さんと密に関わり合って一緒に家を造り上げることができるのです。もちろん、アフターケアもしっかりと行っていきます。


高木優一:大手メーカーの営業は契約後はもうお客さんから離れて、あとはスタッフに任せてしまいますよね。お客さんと家に対する想いを共有できるはずがありません。本日は住宅業界の裏の事情、そして半澤さんの注文住宅に対する真摯な取組みの一端をお聞かせいただきました。ありがとうございます。