大学卒業後、住宅系の会社で営業を経験。

26歳頃、父親の勧めで秀文社印刷(株)へ入社。

様々な可能性を模索し、印刷業として新たな取り組みを行う。

これまでのご経歴を教えてください。

大学卒業後に全国転勤のある住宅系の会社で営業として勤務をしていました。長野県で3年半仕事をしていたのですが、現社長の弟である父から一緒に働かないかと声をかけていただいたので戻ってきたという形で、現在で8年目になります。転勤がある前提の会社でしたので私自身としては、長野という土地で仲良くなったお客様といずれ離れてしまうのであれば、東京で転職するのもありかなという気持ちも多少ありました。そうした意味では父から声をかけられたときはちょうどいいタイミングでもありました。まぁ、親から一緒に働かないかといわれて断るというのもなかなか難しかったというのもあります(笑)

時代の変化がお仕事に影響を与えていると感じることはありますか?

この仕事について8年ですが、やはりコロナの影響でテレワーク化が進行したことは大きかったですね。私どもは銀行さんや証券会社さん等の伝票を作らせて頂くことが多いのですが、対面営業が少なくなったことで電子帳票や、資料もPDFを使われるなど、ペーパーレス化の影響はかなり大きいですね。コロナ禍にあっては様々な業種で紙の印刷物に対する需要が大きく減りかなり大変でしたし、その需要が電子化対応のため戻ってこないお客様もいらっしゃいます。名刺ですら今は電子化の時代ですからね。コロナの影響でまだまだ先のことなのかなと思っていたことが一気に進行してしまった印象です。

そんな中でブランド価値を高めていくために行っていることを教えてください。

私はまだ30代ということもあり、これからの時代を生き抜いていくために工夫をしていかないとお仕事がなくなってしまうので、様々な取り組みを行っています。一つは、弊社はデザイン会社との相性が良いということがわかりましたので協力関係を築いて様々な商品を開発しています。例えば文房具を印刷物としてゼロから作ります。オリジナルの付箋、万年筆に印字をしたりとか、それを梱包する箱、包装紙等々、種類は本当に多岐にわたります。デザイナーさんが考えるオリジナリティのある商品は作るのが難しいことも少なくありません。複雑な形状をしていたりするものがありますので、特殊な印刷技術を持っている会社じゃないと要望に応えられないこともあります。弊社は65年のノウハウと周辺企業との密接な横のつながりがありますので、得意な分野を結集することでそのようなご要望に応えることができることがわかりました。デザイナー側からすると、ネットでどれだけ探しても作ってくれるところを見つけられなかったのに、鈴木さんに依頼すると作ってくれるのか、それであればお願いしたい。となってきました。こうした悩みを持ったお客様が多数いることが分かったので、今では積極的に『幅広い印刷知識とノウハウでお客様の作りたいものを実現できますよ』と営業をかけに行ったりしています。コロナで確かにこれまでのような印刷物の需要そのものは減りましたけど、今までと違うやり方で頂けるお仕事も間違いなくあります。これまでは印刷業は受け身の業種と思われていましたけれども、長年の技術を駆使してこれからは能動的にお仕事を作りに行く業種に変化していけるのではないかなと思っています。

秀文社印刷さんの技術を詳しく教えてください。その技術を駆使して作られた商品もあれば是非見せていただけますか?

秀文社印刷さんで実際に使用している印刷機械


①ジークレー印刷、➁和紙印刷、③特大封筒の印刷、④SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できる印刷物の4点でしょうか。これらを全部含めて、特殊な印刷が私どもの得意分野ということになります。


①ジークレー印刷を簡単に説明すると、ものすごくきれいで鮮やかに、アートや写真を印刷できる技術のことです。通常は4色のインクを使ってカラー印刷を行いますが、私どもは12色利用して印刷しています。そして、印刷する紙にもこだわっておりまして、ドイツからアート専門の用紙を仕入れています。これらの技術・素材を利用して高級な複製原画印刷やアート印刷を行っています。例えば、普通のカラー印刷で仕上げると、日本の伝統色である抹茶、紫、橙色などの味わい深い色合いというのが表現しにくくなります。12色を駆使することで、印刷したい色合いをそのまま表現することができます。また、RGB(色の表現法の一種で赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の三つの現職を混ぜて幅広い色を再現する加法混合の一種)からCMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、キー・プレート(Key plate(他の印刷の合わせになる版のことで、通常、文字や図の輪郭を表す黒で印刷される))の4成分によって色を表す表現法の一種)に変換する必要がない印刷機なので、印刷物にして色みが沈むといったことがありません。あまり一般の方が利用されることがない方法かもしれませんが、アーティストの方などには嬉しい技術だと思います。


ジークレー印刷を利用したアート作品


➁和紙印刷に関していうと、普通の印刷機では和紙に印刷するときに紙を吸い込んでいかないという問題点があります。これは、和紙には小さな隙間が多く空気が抜けてしまうので印刷機の中に取り込まれないからなんです。弊社の機械はわりとレトロな印刷機を使用していまして、職人の技術で大きさや厚みも含めて自由自在な紙に印刷することができます。そして、同じ機械を持っていても和紙を印刷できないところはたくさんあります。機械の音や給紙する角度など常に気にかけ体を動かし続けて印刷しなければなりません。それだけ難しい技術なんですね。私自身もこの機械を使って印刷をしますが、教えたらからといってそう簡単にできる技術ではないです。


この機械を使いこなすには相当習熟された技術が必要


高い技術力で和紙に印刷。

技術力があれば大きさや形状が様々な紙にも対応できる。


③特大封筒の印刷は、もうそのままですね。とにかくでかい封筒です(笑)アートの展示会などで折ってはいけない作品などを入れるための封筒だったり、設計事務所等の図面を入れるための封筒などですね。これも技術で印刷をしているのですが、この印刷方法は完全に門外不出の技術になるので教えられません。ちょっと大袈裟に言っていますが、工夫が必要な印刷なんです。全国的に見ても既製品の特大封筒にあとから印刷を加えるといったことをしているところはほとんどないと思いますね。簡単そうに見えるかもしれませんが(笑)実際、大変難しい技術だしコスト的にも見合わないしということで封筒屋さんから注文が来ます。


向かって左側が通常の大きめサイズの封筒。右側が特大封筒。


④最後のSDGs(持続可能な開発目標)ということですが、LIMEX(ライメックス)という石灰石から生まれた環境にやさしい新素材で、紙とプラスチックの代替品といわれている(株)TBMさんが作られた商品があります。名刺100枚で10リットルの水が削減できるというものです。世界の水の枯渇問題や森林伐採問題に貢献出来ます。こうした環境に配慮した素材の用紙を使って名刺やポスターを印刷されることをお客様にご提案しています。また、石灰石からできているので、水にぬれても破けないため、子供の知育玩具でも使われるようなお風呂ポスターにもこうした技術を使って印刷するご提案をしています。こうしたSDGsへの取り組みを行うことで、お客様の企業価値を高めるご提案をしております。


SDGsに貢献できる新素材LIMEXを使った印刷物の一例:

LIMEXの名刺

今後の展望を教えてください。

コロナ禍においては需要減で本当に悩みましたけど、工夫をすればやり方はいくらでも出てくるなと思いました。幸運なことに弊社は65年、様々なお客様に支えていただいたことで身につけた技術やノウハウがあります。お客様から頂く他社では断られてしまうような様々な無理難題に対して応用が利くというのも、地道にお客様と向き合い続けた恩恵なのかなと思います。お客様から言われたのは、「こうしたことをやりたいと思ってもできるところがまったくなかった。やってもらえるのは本当にありがたい。」という言葉でした。もし印刷関係でお客様の思い描く形に出来ず困っていらっしゃる方がおられましたら是非お声を掛けていただきたいと思います。

インタビュー後記

今回の取材は実際の印刷現場を見学させていただきました。私が想像していた印刷機械ではなく、おっしゃる通りのレトロ機材。そして、記事に掲載している写真ではぼやけていますが、後ろには大量のインクが置かれています。お客様からの依頼によっては既存の「色」は存在せず、配合や調合によってご希望の「色」を作ることもあるとのこと。私は普段コピー機や印刷機に慣れ親しんでいたために、印刷技術とはどういったことなのだろうと思っていましたが、これらの話には大変驚きました。日々当たり前のように見ている物にはこうした目に見えない技術が隠されているんですね。その技術を、これまでにはない新たな形で活かしている鈴木さん。今後は地域から日本に代表する会社になっていただきたいと思います。

お問い合わせ

秀文社印刷株式会社

〒135-0007

東京都江東区新大橋1-11-11

TEL:0336342766

HP:https://www.shitamachi.net/syubunsya

*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。