まちの仕事人インタビュー
遊び心から広がる架空の百貨店 ダックローデパート
合同会社ENZIN ZENKAI 代表 立元 真 (たちもと まこと) さん インタビュー


合同会社ENZIN ZENKAI(エンジンゼンカイ)を2024年2月にパートナーとお二人で立ち上げられた立元真さん。アパレルとキャラクターコンテンツを中心としたクリエイティブなものづくりを展開されている。約20年間アパレル業界で経験を積んだのち、「“自分たちのやりたいことを自分たちのスピードで形にする”ことを目指し」起業。現在は、オリジナルキャラクター「ダックロー」を中心とした“架空の百貨店”「ダックローデパート」を運営し、アパレル、雑貨、ビール、カー用品、ポテトサラダにまつわることまで、多彩なプロダクトを展開。肩肘張らずに楽しめるユーモアと、細部に宿るこだわりを大切にしながら、「遊びが仕事になる」世界を体現している。社名の ENZIN ZENKAI は「エンジン全開」と読める一方で、ENZIN ZENKAI=縁人善回。「人との縁を大切にし、その出会いが新しい善い循環を生み出す」という願いが込められています。キャラクターを通じて、人と人をつなぎ、新しいカルチャーを広げていきたい想いがあります。 


今の仕事を始めたきっかけを教えてください

私は長年アパレルの会社員として働いてきましたが、どこかで「やりきった」という感覚が芽生えていました。特にコロナ禍以降のアウトドア需要の高まりをきっかけに、社内で立ち上げたブランドが一定の成果を上げたものの、会社員としての立場では最終的な意思決定権がなく、スピード感に限界を感じるようになりました。その中で、ブランドに登場させたキャラクター「ダックロー」に大きな可能性を感じ、このキャラクターを中心にした新しいものづくりを自らの手で広げたいと考えるようになったのです。やりたいことを制限なく実現できる場を求め、独立という道を選びました

会社設立までの経緯を教えてください

2024年2月、同じく前職で共に活動してきた仲間と二人で合同会社ENZIN ZENKAIを設立しました。前職で手掛けていた「ダックロー」というキャラクターを引き継ぎ、そこから「ダックローデパート」という架空の百貨店を発想しました。デパートという世界観を基盤に、アパレルにとどまらず、ビールや雑貨、玩具や食器など幅広い商品を展開しています。

「これをやって良かった」と思えるようなものづくりを追求しています。


会社の特徴を教えてください

「ダックローデパート」は、キャラクターを中心に据えたユニークな世界観が特徴です。ダックローは三本足の八咫烏(やたがらす)をモチーフにした架空の存在で、ビールを片手に楽しむ姿が印象的です。このキャラクターを核にしながら、デパートの各フロアに見立てた商品展開を行っています。例えば缶ビールを冷やして持ち歩きたいので保冷性と収納力とを兼ね備えたバッグを作ったり、アウトドアで活躍する機能的なウェアを開発したりしています。雑貨ではフィギュアやキーホルダー、食の分野ではオリジナルビールやポテトサラダ用の皿まで。従来のアパレルブランドとは異なり、キャラクターの持つ親しみや物語性を商品に落とし込み、幅広い世代に楽しんでいただける点が大きな強みです


お仕事で大切にしていることを教えてください

大切にしているのは「ストーリーのあるものづくり」です。単に商品を作るのではなく、背景にユーモアや物語を込めることで、手にした人が笑顔になり、会話が生まれるような体験を提供したいと考えています。イベント出店、展示会、旅を通じて人と直接触れ合うことも重視しています。また、製品のクオリティにも妥協せず、安さだけを追求するのではなく、長く愛されるものを届けたいという想いを持っています。自由度の高い環境だからこそ、自分たちが心から良いと思えるものに全力で取り組むことを大切にしています。さらに、アパレル業界の仲間とともに企画・運営している合同展示会「OUTDOOR THINGS」では両者が共通して大切にしている価値観(遊び心、アウトドアの自由さ、モノづくりへのこだわり)をBtoBを中心に年2回開催し、多くのバイヤーやブランドとの交流の場を築いてきました。展示会を通じたネットワークが、現在の活動の大きな土台となっています。

この仕事のどんなところが好きですか?

「“遊び心が形になり、それが仕事になる”ことこそ、常に遊び心を持ち続けられる点に大きな魅力を感じています。」日常の何気ない会話や飲み会の中で出たアイデアが、数ヶ月後には製品として形になる。それをイベントでお客様が手に取ってくださる瞬間には、いつもワクワクします。仲間と自由に企画し、自分たちの“好き”を詰め込んだ商品が実際に売れたり、反響をいただいたりするのは、ものづくり冥利に尽きます。また、イベントや展示会でお客様と直接触れ合えることも大好きです。SNSやECだけでは見えないリアルな声が聞ける場は貴重で、「また来ました」と声をかけていただけると、本当に励みになります。


今後やりたいこと等、展望を教えてください

これからは「ダックローデパート」をさらに発展させ、アパレルや雑貨だけでなく、アニメーションや映画といったエンターテインメントの分野にも挑戦していきたいと考えています。また、クラウドファンディングを通じてファンと一緒に作品を作るような取り組みや、海外への販路拡大も視野に入れています。会社を大きくすること自体が目的ではなく、自分たちの世界観を理解して応援してくださる方々と共に成長していくことが目標です。キャラクターの持つ可能性を最大限に引き出し、世代や国境を越えて愛される存在に育てていきたいと思っています

インタビュー後記

立元さんとのお話は、終始リラックスした空気感の中にも、ものづくりへの熱意と人への思いやりが滲み出る時間でした。ご本人は「やりたいことをやっているだけ」と笑っておられましたが、その裏には20年にわたるアパレル業界での経験と、地に足のついた視点がありました。印象的だったのは、「ふざけたことを本気でやる」という言葉と、キャラクターへの“愛”を大切にされている姿勢です。独立後も仲間やお客様とのつながりを大切にしながら、着実に“面白い”世界を広げていく合同会社ENZIN ZENKAI。今後ダックローがどんな冒険を見せてくれるのか、楽しみでなりません。

お問い合わせ

合同会社ENZIN ZENKAI

代表 立元 真

メールアドレス:enzin.zenkai.tachimoto@gmail.com

公式サイト:https://shop.duckrow-depart.com/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みましたとお伝え下さい。