1937年生まれ。千葉県出身。公認会計士事務所勤務を経て、1969年税理士国家試験に合格。翌年、神田猿楽町に事務所を開設し独立。現在まで数多くの音楽家や文芸家をサポート。自身も作詞家として、歌曲、合唱曲のための作品を数多く発表。著書は、税務に関する「税務図版」（自由国民社）など多数あり、作詞家としても歌曲集「湾岸の朝」（音楽乃友社）などがある。
才能を磨ける環境を作る
この仕事を始められたきっかけを教えてください。
文学が好きで、その道へ進みたかったのですが、「文学では食べていけない」と考え、当時から得意だった“そろばん”を使った仕事に就こうと考えたことがきっかけです。その後、公認会計士事務所で働いていたときに、税理士試験を受けて合格。時を同じくして、仕事でご縁のあった法人のビルが神田猿楽町で竣工し、「１部屋借りないか？」と声をかけていただいたことがきっかけで、この事務所を開設し、独立しました。音楽・文芸を趣味としていたご縁で、1964年の東京バレエ団の設立に関わることになり、以後30年ほど顧問として財務・総務を担当し、海外公演などにも従事。また、音楽知識と交友関係を生かして、1985年には横浜市に音楽スタジオを開設し、若い音楽家の活動のサポートも始めました。こうした活動の中で、音楽や文芸に関わる人からの税務の相談を受ける機会が増えていき、気がつくと数多くのクリエイターやアーティストをサポートするようになり現在に至ります。
仕事の特長はどのような点にありますか？
２つの強みがあります。１つ目はクリエイターやアーティストなど、才能豊富な人を数多くサポートしてきた実績を持っていることです。正直、才能豊かな人ほど、お金周りや税金のことが苦手な傾向にあります。しかし、それで良いのです。私は、自分がサポートに入ることで、彼ら彼女らが、才能を磨くこと以外に起こる余計な心配事を減らしたいと考えています。そのため、仕事の進め方は基本的には“すべて私にお任せ”となっています。こうして、クリエイターやアーティストが、安心して仕事を任せられるという話が広がり、バイオリニストやピアニストなどの音楽家を始め、女優や俳優、演歌歌手や落語家、漫画家など、数多くの才能溢れる人からお問い合わせをいただくようになりました。２つ目は、相続に関して豊富な知識と実績を持っていることです。財産相続に関して、以前は全国でセミナーも開催していました。その他にも、相続関係の本を出版したり、雑誌の記事として数多く採用いただくなど、多くのメディアで取り上げられています。
挑戦する人を支え続ける
どんなお客さまが多いですか？
ありがたいことに、今でも若い人からの問い合わせがあります。新しいことに挑戦する人の力になりたいと考えているので嬉しいですね。お客さまはほとんどが個人の方です。事務所を開設した当初に比べると、どんどん一流のクリエイターやアーティストを担当する機会が増えていますが、一方で駆け出しの才能ある人もサポートしています。誰でも1日は24時間と決まっています。その中で、なるべく自分の才能を磨くことに時間を使ってもらいたいと考えているため、お金に関することはすべて任せてもらっていますね。このように自分の周りに才能ある人が集まってくる状況は、とても刺激的で本当に幸せです。
仕事をするうえで、心掛けていることはありますか？
『生涯現役』として、才能ある人をサポートしたいと考えています。アンパンマンの作者でもあるやなせたかしさんとは生前から交流があり、実は私が出版した最新の詩集の表紙に描かれたイラストは、彼の遺作でもあります。私も自分の才能を最期まで使い切りたいですね。そして、まだまだこれからも、才能を持つ人たちの知恵袋として活動していきたいと考えています。自分の才能を信じて、もっと打ち込みたい人からのご相談をお待ちしています。
インタビュー後記
柏木さんが神田猿楽町に事務所を構えて以来、関わった人は量・質ともに圧倒的だ。一時間半のインタビューの中で、話題に上がった名前は優に100人を超える。そのすべてが、才能を開花させ、世の中で評価された一流の人物。しかし、柏木さんは一流だから関わったのではなく、原石の段階から関わり、その才能が開花するように全力でサポートを続けてきた。半世紀に渡り、陰で支え続ける姿は、まさに“才能の護り人”だ。
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