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母の相続について相談させて下さい。
(2年前の記事です) 掲載日:2022/10/29
母が乳ガンで闘病中です。母から中学生時代に告白され、私は俗に言う出来ちゃった結婚で出来た子供だったらしく、父にはあまり愛情を注がれたという記憶がありません。そういう状況ですから、父は元々子育てには無関心で母に育てられました。
私が中学生の頃に父が浮気をしていたのは子供心に薄々感じており、その頃父と母と3人で食事をしたイメージは全くと言っていいほどありません。母がガンと発覚すると父はテレビのバラエティー番組を見ながら「熟年離婚する人の気持ち分かるなぁ~」などと発言し、母だけが家の中で唯一の存在だった私は父への嫌悪感・憎悪感が湧いてきていました。
浮気相手(六本木のクラブホステスだったと聞いています)には車を買い与えたり、マンションの家賃を払ってやったり大盤振る舞いだったそうですが、母の治療費をケチる様な極悪非道な父です。因みに父は地主の次男でアパート・マンションなど不動産をいくつか所有しており、決してお金がないわけではありません。ジッと我慢しておりましたが、母が病院にいる今、会話もない父との生活がはじまりました。
最近は実の娘である私に対し「お前はアイツに似てかわいくない」などと聞き捨てならない言葉を浴びせてきます。家事など全くやらない父に対し、私は毎晩ごはんを作っているのですがこんな生活に耐えられなくなり、家を出る事も考えています。母方の祖母は古い考えで女が独身にも拘らず一人暮らしをする事は縁を切る事と一緒だと考えていて、祖母が許してはくれません。
母が亡くなったらこの家に私の拠り所はありません。因みにこの家は母名義の土地に父と母の共有名義の建物が建っています。母は私の味方で生命保険は受取人を私の名前にしてくれています。母には先日「離婚して貴方に財産をあげる様、遺言を書けばよかったんだけどこんな事になってゴメンね。」と病床で涙を流されました。勿論私も涙しました。辛抱強い母と過ごせる時間はあと1年ぐらいかもしれません。
こういう家に生まれ、親から望まれた子ではないと告白され、唯一愛情を注いでくれた母をこんな状態にさせた酷い父に母の財産を相続させたくないのです。私には法律の知識がなくどなたかお知恵をお借りしたいのです。今の状態で父に母の財産を奪われない手段はありますか?
因みに母方の祖父はなくなっておりますが、祖母は健在で祖父が残した資産が結構あると思います。それも父には取られたくないんです。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。

私がお答えします。
1 遺言による方法
お父様にお母様の財産を相続させないための方法(他にご兄弟がいらしゃらない前提で考えています)としては,まずお母様の全財産をあなたに相続させる旨の遺言をお母様に書いてもらうという手段が考えられます。もっとも,この場合でも相続人には遺産への期待権ともいうべき遺留分というものがあります。
その結果お母様からあなたへの遺言を書いてもらったとしても,お母様の遺産の4分の1(民法1028条2号,900条1号参照)についてお父様には遺留分請求権(民法1031条)を行使することが出来ます。
2 推定相続人の廃除による方法
ほかには,かなり難しく簡単には認められませんが,推定相続人の廃除(民法892)という方法もないではありません。推定相続人の廃除は,被相続人に対する虐待や重大な侮辱を加えたとき,または著しい非行があったときに相続権を奪う制度です。
お父様が浮気をしていた,浮気相手には車を買いマンションの家賃を払う一方で病気の妻(お母様)の医療費をけちるというだけではなかなか難しいですが,その程度が酷かったりほかの事情があったりする場合には家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求することができます。
なお,廃除が認められるとお父様に相続権がなくなるため,お父様に相続されるということはなくなり,第二順位のお母様のお母様(祖母)に相続権が移動することになりますのでご注意ください。
3 生命保険について
生命保険について受取人が無くなった本人でない場合には,相続財産となりません。したがって,受取人があなたである生命保険についてはあなたの固有の財産となり相続財産となりません。さらに,生命保険については基本的に特別受益に当たりませんので,相続財産に持ち戻して遺産分割をする必要もありません。
4 財産の内容について
本件はお母様名義の土地に、ご両親の共有名義の建物が建っているとのこと、ご相談者様のお立場からすれば、建物の評価を可能な限り低くしてお父様の取り分を下げたいところかと思われます。
この場合、建物の価値算定など、ケースバイケースですので、一度相続財産の内容については弁護士など専門家に相談されることをお勧め致します。