まちの仕事人インタビュー
親子の時間が紡いだ“ものづくり”の場所
Maison144(メゾンイチヨンヨン) 代表 雪平 健太 (ゆきひら けんた) さん インタビュー


西亀有の住宅街に佇む製作スペース「Maison144(メゾンイチヨンヨン)」。店内にはエアブラシや塗料、工具がずらりと並び、プラモデルやソフビ製作、ジオラマなど幅広い創作活動に対応。この空間を立ち上げたのが、代表の雪平健太さん。20年以上アパレル業界の物流部門で働いた後、2023年に独立。自身の「つくることが好き」という思いと、ご家族とのかけがえのない経験が、店舗開業の原動力となった。

安心して製作できる場所を作りたい。

今の仕事を始めたきっかけを教えてください。

きっかけは、息子との時間でした。冬の夜、2人で公園や河原に出かけ、寒空の下でエアブラシ塗装をした時間は、私たちにとって特別なものでした。そんな経験を通じて、「天候や住宅環境に左右されず、安心して製作できる場所を作りたい」と強く思うようになったのです。

オープンまでの経緯を教えてください。

私は岩手県出身で、服飾の専門学校を卒業後、アパレル物流の世界に入りました。倉庫の動線設計や人員配置など、現場を円滑に動かす裏方の仕事にやりがいを感じながら、20年近く勤めてきました。コロナ禍で価値観が揺らぐ中、「いつ何が起きてもおかしくない」と感じ、人生の後半は好きなことに挑戦しようと決意。葛飾区の創業支援制度をきっかけに、Maison144を開業しました。

作品づくりに集中できる空間を心がけています。

お店の特徴を教えてください。

Maison144には、約300種類の塗料やエアブラシ、工具など、充実した環境を整えています。作業席は14席あり、予約なしでふらっと訪れても、そのまま作業に取りかかれる「気軽さ」が魅力です。平日は夜19時から22時、土日は13時から19時まで営業しており、お仕事帰りや週末のリフレッシュにご利用いただけます。材料の持ち込みも可能で、作品づくりに集中できる空間を心がけています。

お仕事で大切にしていることを教えてください。

一番大切にしているのは、「没頭できる空間」であることです。ここに来られる方は、静かに作業に集中したい方もいれば、周囲と交流を楽しみたい方もいます。それぞれの過ごし方を尊重し、声をかけるタイミングや接し方に気を配っています。また、お子さまには必ず保護者同伴をお願いしており、作品づくりを通して「親子の思い出」も一緒に作っていただけたら嬉しいです。

この仕事のどんなところが好きですか?

作るものも、人も、毎日違う——それがとても面白いです。プラモデル、ジオラマ、ペンライト塗装など、皆さまそれぞれの創作が並ぶ光景は、まるで小さな展示会のようです。ひとつの作品を一緒に仕上げている様子を見ると、あたたかい気持ちになります。創作のそばにいられるこの仕事を、心から楽しんでいます。

今後やりたいこと等、展望を教えてください。

大きなビジョンというよりは、目の前にあることを丁寧に積み重ねていきたいと考えています。たとえば、葛飾区の「こち亀記念館」とのコラボグッズ制作など、地域に根ざした企画にも関心があります。また、芸大生や若手作家の方々にとっても、気軽に使える製作スペースとなるよう、環境を整えていきたいです。私自身、器用な人間ではありませんが、「不器用でも、ものづくりは楽しめる」。そんな場を、これからも大切に守っていきたいと思います。


インタビュー後記

「真冬の夜、屋外で親子で塗装していたんです」。そのひとことに、心が動かされました。Maison144は、ただの製作スペースではありません。そこには、親子の距離を縮めた“ガンプラ”と、それを通じて育まれた小さな絆の物語が詰まっていました。「ここがなかったら、作れなかったかもしれない作品がある」。そう思わせてくれる、あたたかくて静かな、唯一無二の場所でした。

お問い合わせ

Maison144(メゾンイチヨンヨン)

〒125-0002 東京都葛飾区西亀有4-24-16 アメージング加藤1階

TEL:03-6262-6144

WEB:https://www.maison144.jp/

X:https://x.com/144_maison

Instagram:https://www.instagram.com/maison_144

*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みましたとお伝え下さい。