日常生活で腰痛に関して信じ込んでいる“あるある”。クリニックや病院の医師も誤って指導している“あるある”。以下では順番にその誤解を解明していきましょう。今回は、その第2回目です。


✖ 急に腰が痛くなったらまず冷やす

急に腰が痛くなることをぎっくり腰といいますが、ぎっくり腰の詳しい原因は、実はよくわかっていないのです。腰の骨や椎間板、筋肉、骨盤などに生じた何らかの異常が原因なのでしょうが、レントゲン・CT・MRIなどの検査では、その異常を捉えることはできません。それにもかかわらず、筋肉の微細な損傷・断裂などとの「思い込み」が強く、急性期には冷やすと記載されている書物やインターネットサイトが後をたちません。第2話でも少し触れましたが、ぎっくり腰は必ずしも外傷とは限らないのです。したがって、温めるも冷やすも楽な方でよく、決まりはありません


✖ 腰痛持ちの人は天候が悪いと腰痛が悪化しやすい

腰痛に限らず、昔から天候と痛みには相関関係があると言われています。自分の痛み具合で、天気予報が可能と言い切る人もいます。しかし、温度、湿度、気圧など様々な観点から研究がなされましたが、これを統計学的に証明した報告は今のところありません。結局は「思い込み」が強いことに左右され、天気が悪いと「ほらね!」だし、痛んでも天気が良いときには気にしていないという傾向が強いようです。


✖ 腰痛で長期間コルセットをつけていると筋力が弱る

腰にコルセットをつけた状態で、脳卒中の発作をおこして突然意識を失うとどうなるでしょう? 間違いなく、倒れてしまいますよね。コルセットの締め方が緩いと早く倒れてしまうが、強く締めていれば倒れるスピードが遅くなるというのも考えにくいですよね。すなわち覚醒した状態で立ったり座ったりしているときには、コルセットの有無にかかわらず、姿勢を保つための筋肉が絶えず働いているのです。だからコルセットを長くつけていると筋力が弱るということはなく、「思い込み」なのです。蛇足ですが、腰のコルセットとは異なり、膝のサポーターは長くつけていると脚の筋力が低下します


まとめ

今回の3つの“あるある”に共通するのは、根拠がない「思い込み」です。みんながいっていることが、いつの間にか真実だと認識されてしまう点に、警鐘を鳴らしたいと思います。



監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

アレックス脊椎クリニック  https://ar-ex.jp/spine

黒河内病院  https://kurokouchi.or.jp/index.html

腰博士 https://koshihakase.com

M+ POWER https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

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