まちの仕事人インタビュー
普遍的な美しさと上質なしつらえ
株式会社Old Kan CEO インテリアデザイナー 浦田 晶平 (うらた しょうへい) さん インタビュー

1987年、北海道生まれ。大学在学中に、デザイン系専門学校に通いインテリアデザインを学ぶ。卒業後は内装設計アトリエに就職。その後、乃村工藝社へ転職し、ホテルや話題の建築物の内装を数々手掛ける。2020年に独立。「KUKAN DESIGN AWARD 2022“short list”」「1F Design award 2023“Winner”」など受賞歴多数。

古き良きものへの敬意を忘れない

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

“古着”好きが高じて大学時代に古着屋でアルバイトをしていたのが、この仕事に就いたきっかけです。当時は大学3年生で、周りが就職活動に励む中、自分のやりたいことが見つからず、もやもやしていましたね。ある日、店長から「内装を変えたいから、DIYでやってみろ!」との無茶振りをされました。経験の無いことだったため、インテリアや建築の雑誌を読み漁り、かなり手探りの状態で仕上げていったことを覚えています。それでも、電球や内装素材を選ぶ過程はとても楽しく、そこに惹かれたことをきっかけに、「空間」そのものの在り方に関心を持つようになりました。大学に在学しながら、インテリアデザインを学ぶために専門学校へ入学。大学卒業後は、専門学校のご縁で内装設計アトリエへ入社。入社当初は、周りがすごい人に見えて、とても辛かったですね。「知識もスキルも差がありすぎる!」と感じていました。差を少しでも埋めるべく、必死に仕事をすることはもちろん、空いた時間を見つけては、話題の建物や内装を見に行きました。その後、乃村工藝社へ転職。クオリティの高い空間を生み出していくことに特化した「A.N.D.」に配属されました。世界の一流ホテルや、国内の話題の建築物の内装に携わることができるうえ、周りのデザイン力や、センスがすごく良い、最高の環境で仕事をしていました。一方「いずれは自分の力で独り立ちする」という想いもあったため、2020年に独立。屋号の「OldKan」は、“古き良き”状態や“懐かしさ”を表す「Old」と、空“間”“感”覚“勘”の鋭さを表す「Kan」で構成されています。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

“普遍的な美しさ”“上質なしつらえ”を大切にしたインテリアデザインを心がけています。とは言っても、常に最新の技術や素材を追い求めているということでもありません。古着好きだったこともあり、“古き良き”ものへの敬意を忘れず、質感のあるアンティーク家具や、手触り感のある素材を上手く取り入れた、温かみのある上質な空間を作ることを得意としています。一般的に依頼を受けて形になるまで、4ヶ月~半年程度。それぞれの地域について学び、それぞれの場所に合った木や石などの素材を選ぶ過程は、何度経験しても楽しいですね。


人との繋がりで仕事を広げていく

どんなお客さまが多いですか?

「物販の販売スペース」「宿泊施設」「飲食店」「ブライダル施設」など、幅広い内装デザインに携わっています。これは、前職で一流ホテルの内装を手掛けた経験が大きいですね。ホテルには客室だけでなく、フロント、ロビー、ラウンジ、廊下、フィットネスジムやプールなど、多くの機能や要素があります。それらを上手くまとめた上で、トップクラスの上質さも求められていたことで、ずいぶん腕は磨かれました。現在のクライアントは、国内であれば北海道から九州まで。最近では海外からの依頼も多く、現在もアジアのプロジェクトをいくつか進めています。今後は、もっとホテル案件に携わりたいですね。前職で味わった、出来上がったときの気持ちの高ぶりが、今でも忘れられません。


仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

伝え方としては“パースに魂を込める”こと、進め方としては“人の繋がりで仕事を広げていく”ことです。実は独立した翌週に、新型コロナウイルス対策に伴う「緊急事態宣言」が発出され、見込んでいた仕事のほとんどが失われました。2歳だった娘と公園に行き「これからどうしよう」と頭を抱えていたこともあります。それでも前に進むしかなく、積極的にコンペへ参加。“この仕事を受けないと生きていけない”という必死さから、自分でも驚くような知恵を絞りだすことができて、概ね参加したコンペでは勝つことができました。絞り出した知恵は、内装のアイデアはもちろん、プレゼンテーションの進め方や魅せ方にも及んでいます。もちろん、最終的にはクライアントの期待を超えた提案をする必要があるため、ビジュアルが大切なのは間違いありません。ここが、“パースに魂を込める”という部分ですね。仕事の進め方は、とにかく人とフラットに関わり、繋がっていくことを心がけています。例えばインテリアデザイナーの中には、家具屋さんや建材屋さんに対して「使ってあげる」という上目線を持つ人がいます。しかし私は、フラットな関係性を意識して、新しい提案や情報をいただけることに、感謝の気持ちを持って接しています。新しい家具や建材が、一人でも多くの人の生活の役立つことを願って、家具や建材の持つポテンシャルを最大限に引き出せるように知恵を絞っています。そんな想いを察して、家具屋さんや建材屋さんから、仕事の紹介をいただくこともあるのですよ。これからも、人の繋がりを大切に、魂を込めたデザインを続けていきます。上質な空間をお求めの方がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にご相談ください。


インタビュー後記

浦田さんは、国内外の一流ホテルに携わって身に着けた構成美と、古き良きものを活かすバランスが、抜群に優れている。どんなジャンルであっても、普遍的な上質さを感じさせることのできる、唯一無二のインテリアデザイナーだ。

お問い合わせ

名前:株式会社OldKan

住所:東京都港区南青山4-1-3セントラル青山601

公式HP:https://old-kan.jp

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。