善人承継 リレーインタビュー
静かに積み上げた職人の流儀
プロピア大宮店 店長 大田 貴光 (おおた たかみつ) さん インタビュー

今回ご紹介するのは、知人の美容師の一言からだった。

「面白い人がいるんですよ。派手じゃないけど、ずっとこの仕事を続けてきた人で」

その言葉に導かれるようにして辿り着いたのが、大田貴光さんだった。


大宮の店舗で出迎えてくれた彼は、想像していたよりもずっと穏やかで、よく笑う人だった。

長身で細身。どこか飄々としていて、構えさせない空気を持っている。

第一印象は「話しやすい人」。だが、その奥に積み上げてきた時間の重みが、静かに滲んでいた。


「どこにでもいるような子でしたよ」


そう笑う大田さんの原点は、広島の何気ない日常にある。

原っぱで野球をする、当たり前の少年時代。勉強も嫌いではなく、スポーツもそこそこできる。

「育てやすい子だった」と自分で言うあたりに、どこか肩の力の抜けた人柄がにじむ。

そんな彼が選んだ進路は、美容師だった。

理由は――驚くほどシンプルだ。


「正直、モテたかったんですよ(笑)」


動機としてはあまりに人間らしく、そして正直すぎる。だが、この“軽さ”こそが彼の魅力でもある。大げさな志ではなく、目の前の興味から一歩を踏み出す。その積み重ねが、結果として人生を形づくっていく。

高校卒業後、単身上京。初めて降り立った新宿の人の多さに、「今日は祭りかと思った」というエピソードもまた、彼らしい。



氏名:大田貴光(おおた たかみつ)

出身:広島県広島市

居住地:東京都東久留米市

職業:プロピア大宮店  ヘアケア・増毛関連

家族構成:妻・娘2人(ともに社会人)

趣味:ゴルフ、サウナ

美容師から「髪の本質」へ

美容師としてキャリアをスタートさせ、技術を一通り身につけた大田さん。しかし、彼の興味は徐々に“スタイル”から“本質”へと移っていく。

「髪がどうやって生えるのか、なんで人によって違うのか。そっちの方が気になってきて」

そこから、現在の増毛・ヘアケアの分野へと進む。

表面的な美しさだけでなく、「なぜそうなるのか」に踏み込む姿勢。これは職人としての深化であり、同時に探究心の現れでもある。

ただ、その道は決して平坦ではなかった。


「昔は"ど"がつくほどのブラックでしたね(笑)」


長時間労働、厳しい上下関係、理不尽な言葉。

妻の出産に立ち会った翌日、上司に言われた言葉は今でも忘れられない。

「お前が行って、何かいいことあんの?」

今なら一発アウトの発言だろう。だが彼は辞めなかった。

「嫌なところもいっぱいあったけど、トータルで見たら尊敬の方が勝つんですよね」

この“総合評価できる力”こそ、大田さんの真骨頂だ。

人は往々にして一部分で判断しがちだが、彼は違う。良いところも悪いところも受け止め、その中で自分の糧になるものを選び取る。

「敵わない」と思える存在が、人を伸ばす

大田さんの人生において大きな影響を与えた人物がいる。

それは、かつての上司だった。

「その人がいなかったら、たぶん辞めてました」

圧倒的な営業力。結果を出し続ける実績。そして、強烈な自信。

「灰皿でも100万円で売れるって言われて、ああ、この人なら買わされるなって思いました(笑)」

人間的には「クソでしたよ」と笑いながらも、それでもなお尊敬が勝つという。

悔しさ、恐怖、憧れ。

そのすべてを抱えながら、「敵わない」と認めることができる強さ。

これは簡単なようで、実は非常に難しい。

多くの人は、嫉妬や反発に飲み込まれる。だが彼は違った。


「根っこを認めちゃってるんで」


この一言に、彼の人間力が詰まっている。


家族への想いと、少しの後悔

仕事に打ち込んできた大田さんだが、振り返れば一つの後悔がある。


「子どもの行事にほとんど参加してこなかったんですよね」


土日が仕事という職業柄、家庭との時間は限られていた。

その分、子育ての多くを担ってくれた妻への感謝は深い。


「本当に頑張ってくれたと思います。感謝しかないです。」


今の時代なら違う選択もあったかもしれない。

だが、当時は“休むことが悪”の時代だった。

それでも、彼は家庭を壊さなかった。

むしろ、静かに支え合う関係を築いてきた。

地域への想い――「ふるさと」と「今」

広島は、彼にとって変わらない“ふるさと”だ。

「頑張れって感じですね」

どこか照れくさそうに、短くそう言う。

熱く語るわけでも、恩返しを誓うわけでもない。ただ、距離を置いたままでも消えない“つながり”がそこにある。

両親を見送り、帰省の理由は変わった。

それでも、広島という場所が自分の中から消えることはない。

一方で、長く暮らす東京についてはこう語る。

「悪いところの方が目につくんですけどね」

苦笑いを浮かべながらも、続けてこう言った。

「でも、お世話になってます」

完璧じゃない。けれど、確かに支えられてきた場所。

その現実的な視点もまた、大田さんらしい。


華やかな理想も、大義名分もない。

けれど――だからこそ嘘がない。

特別に何かを成し遂げなくても、

誰かの役に立っている実感がなくても、

人はちゃんと“どこかに支えられて生きている”。

その事実を、彼は飾らずに受け入れている。


そしてきっと、気づかないうちに、

彼自身もまた――誰かの“支え”になっている。」


インタビュー後記

大田さんの話を聞いていて、強く感じたのは「普通の強さ」だった。

特別な成功談ではない。

派手な逆転劇でもない。

ただ、目の前の仕事を続け、理不尽を飲み込み、人を見極め、家族を守り、少しずつ積み上げてきた。

その“なんとなく続けた”の裏側には、確かな選択と覚悟がある。

そして何より印象的だったのは、


「人を丸ごと見る力」だ。


嫌な部分も、尊敬できる部分も含めて受け止める。

だからこそ、人に影響を受け、成長し続けられる。

こういう人が、社会の土台を静かに支えているのだと思う。

スポットライトは当たらないかもしれない。

でも、こういう人がいなければ、世の中は回らない。


静かに、確かに、誰かを支えている人。

そのバトンは、今日もどこかで手渡されている。

次は、どんな「善人」にバトンが託されるのか。

この物語は、まだ続いていく。

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*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。