まちの仕事人インタビュー
地域で子どもと親を支える居場所づくり
特定非営利活動法人らいおんはーと 理事長 及川 信之 (おいかわ のぶゆき) さん インタビュー

特定非営利活動法人らいおんはーと(2018年設立・東京都江戸川区鹿骨)の理事長を務める及川信之さん。北海道稚内市出身。整備工場勤務やトラック運転手を経て、福祉の道へ。高齢者施設や障害者施設での経験を重ねる中で、子どもや家庭の問題に強い関心を抱き、PTA会長として地域の教育課題に取り組んだことをきっかけに、子ども食堂やフリースクールを立ち上げた。現在も「子どもは地域全体で育てる」を信念に、毎日活動を続けている。

大人が変われば子どもも変わる

今の仕事を始めたきっかけを教えてください。

もともと私は福祉の仕事に長く携わっていました。高齢者施設や知的障害者施設で働く中で、家庭の事情から学校に通えない子どもや孤立する親の姿を目の当たりにしました。その後、PTA会長を務める中で、不登校やひとり親家庭、貧困など、地域にさまざまな課題があることを知りました。子どもたちが安心して過ごせる場所をつくりたいという思いが強まり、やがて「子ども食堂」という形で実現することを決意しました。

会社設立までの経緯を教えてください。

最初は地域の町内会館を借りて、仲間と共に子ども食堂を始めました。お寺や老人ホーム、幼稚園やレストランなど、江戸川区内のさまざまな場所を巡りながら活動を続けるうちに、少しずつ仲間や協力者が増えていきました。やがて「毎日子どもたちが来られる拠点が必要だ」と痛感し、現在の場所に拠点を構えることになりました。地域の企業や教育関係者の理解と支援もあり、2018年に特定非営利活動法人として正式に設立しました。

子どもと親を同時に支えること

会社の特徴を教えてください。

らいおんはーとの最大の特徴は「毎日休まず活動していること」です。全国的に子ども食堂は数多くありますが、週に数回や月に数回という形が多い中、私たちは「困っている時にすぐ頼れる場所でありたい」との思いから、年末年始も含めてほぼ毎日開けています。また、ただ食事を提供するだけでなく、料理や掃除も子どもたちと一緒に行い、年上の子が年下の子を自然に助けるような、大家族的な環境が育まれているのも特徴です。さらに、フリースクールやフードパントリーなど、教育・生活両面での支援も行っています。

困っている時にすぐ頼れる場所でありたい

お仕事で大切にしていることを教えてください。

私が大切にしているのは「子どもと親を同時に支えること」です。子どもの問題の多くは家庭に根を持つことが多く、親を孤立させないことが不可欠です。そのため、利用する家庭は必ず保護者にも一度は来てもらい、大人同士のつながりが自然と生まれるようにしています。ここで出会った親同士が交流し、気づきを得て子育てが変わっていく姿を見るたびに、「大人が変われば子どもも変わる」ということを実感しています。

この仕事のどんなところが好きですか?

一番のやりがいは、子どもたちが成長していく姿を間近で見られることです。小学生の頃から通っていた子が、やがて高校生になり、小さな子の面倒を自然と見られるようになる。その過程で「将来は先生になりたい」と夢を語るようになる子もいます。特別に指示をしなくても、さまざまな年代が集まる中で互いに学び合い、自分で成長していく。そんな姿を見るたびに、この活動を続けていて良かったと心から思います。

「居場所」を広げていきたい

今後やりたいこと等、展望を教えてください。

今後は、さらに多くの地域で「居場所」を広げていきたいと考えています。現在も江戸川区内でフードパントリーを14カ所に展開していますが、まだ支援が行き届いていない家庭もあります。将来的には、子どもだけでなく若者や高齢者も含め、世代を超えた交流の場をつくりたいと思っています。孤立する家庭を減らし、地域全体で子どもを育てる文化を根付かせることが私の目標です。

成功哲学を教えてください。

私の信念は「正しいことをやっていれば必ず道は開ける」というものです。福祉の現場で意見を唱えて反発を受けたこともありましたが、後にその提案が正しかったと証明されました。子ども食堂も同じで、誰かがやるのを待つのではなく、「自分がやる」と決めて動き出したことで道が開けました。大切なのは、誰かのために本気で行動すること。その積み重ねが信頼を生み、共に支える仲間を増やしていくのだと実感しています。

インタビュー後記

お話の中で何度も出てきたのは「子どもは地域全体で育てるもの」という言葉でした。及川さん自身が幼い頃に体験した近所との温かな関わりを、今の時代にもう一度取り戻したいという思いが、活動の原動力になっているのだと感じます。「子ども食堂に通う子どもたちが成長し、やがては次の世代を支える大人へと育っていく」その循環をつくり出す姿勢は、まさに未来への希望そのもの。取材を通じて、地域における居場所の大切さを改めて教えていただきました。

お問い合わせ

特定非営利活動法人 らいおんはーと

理事長 及川 信之

〒133-0073 東京都江戸川区鹿骨2丁目33-11

TEL/FAX:03-6310-1048

ホームページ:https://npo-lh.com/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。