まちの仕事人インタビュー
制限を超えていける社会の実現
桂乃貴メンタルヘルスケア株式会社 代表取締役 渡部 貴子 () さん インタビュー


略歴

 

鹿児島県生まれ、千葉育ち。三育学院短期大学(現 三育学院大学)看護学部卒。

千葉県立がんセンターにて、ICU.脳外科、整形外科での最先端治療に携わると同時に多くの方を看取る。

三幸福祉カレッジにて、ヘルパー養成講座の講師として従事しながら、街にある小さな整形外科内科クリニックへ勤務。

往診の同行をして行く中で、もっとご本人、家族のサポートをしたいと思い、訪問看護部を立ち上げる。

株式会社ソシオン(現 株式会社ソシオンヘルスケアマネージメント)にて、本格的に在宅医療を実践。訪問看護ステーションの立ち上げに尽力する。

 

□独立

2013年7月 株式会社ハートフルを設立

精神科、認知症専門の訪問看護ステーションを立ちあげ、地域との連携強化を図る。

2023年8月  法人名を桂乃貴メンタルヘルスケア株式会社と変更。現在にいたる。

ハートフル訪問看護ステーション開業のきっかけを教えてください

元々は祐天寺にハートフルクリニックという在宅医療専門のクリニックがあり、私自身も看護師として従事していました。その医療法人が閉鎖することになりましたが、利用されている患者さんも多くいらっしゃったため、訪問看護部門を引き継ぐ形で独立したのがきっかけです。わずか2カ月ほどで物件探しから開業申請まで行ったため、大変苦労したことを覚えています。


精神疾患に特化したのはなぜですか?

開業当初は終末期の患者さんを多く診ていたのですが、精神科領域の訪問看護ステーションは殆ど無かったので、地域としても精神科領域を診ることのできるステーションを作っていくべきだと思い、精神科領域に注力し始めました。終末期医療に長年携わってきたからこそ、家族支援も出来るし、患者さんの想いを汲み取ることも出来るという自信もあったのですが、患者さんに対してどのように介入すべきなのか、どのようなプランをたてるべきなのかと、沢山の挫折を経験しました。このままではダメだと、改めて勉強し直して精神科認定看護師の資格を取得し、経験を重ねることで今に至ります。

精神科領域での訪問看護の課題はありますか?

ここ数年で多くの訪問看護事業が多く参入し始めています。その背景としては、儲かりやすい、患者さんの話を聞くだけで簡単といった思い違いが影響しています。

介護保険サービスを利用する場合は、介護従事者に対して時間的な拘束がありますが、精神領域の訪問看護では医療保険が対象ですので、看護従事者に対する時間的拘束はありません。今、精神科領域の訪問看護として起きている問題は、一日に何十軒も患者さんの顔だけ見て帰ってくるという、看護とはかけ離れたパトロールのような事業者もいるということです。精神科の看護とは、その患者さんをしっかりと活かし治して回復のステージに一緒に乗るということなのですが、実際にそれが出来ないステーションが増えてしまっていることが問題です。利用者さんからすると、情報が無いものなので、それが当たり前だと感じられている人も少なくないと思われます。

当ステーションは、専門的知識による看護とリハビリで、利用者さんの社会的制限を緩和できるように、地域社会のみならず世の中に情報を共有しながら、日本の精神領域の訪問看護の質向上を目指しています。



看護師を目指されたきっかけを教えてください。

元々は CA になろうと思っていました。既に就職も決まっていたのですが、CAとして働ける期間を考えたときに、一生涯働くことのできる看護師の資格を取得することも良いかもしれないと、就職前に看護学校へ入学しました。もし、看護師としての資格を取得し、それでもCAをやりたければ、改めてCAに就職すればいいと考えていました。

実際に看護師になると、とても働きがいがあり、病棟にて終末期医療を専門に働いていました。当時は、終末期に家に帰りたくても帰れない方が多い時代でしたが、それでもなんとか一生懸命症例を作りながら、外泊の練習をさせたりしました。在宅医療をする施設も無かった時代でしたが、病院ではなく自宅で亡くなることが出来ればいいなという思いはありましたので、それに対する支援は行っていました。しかし、まさか自分がここまで在宅看護に没頭するとは全く想像もしていませんでした。


どのような利用者さんが多いですか?

10代から100歳まで年齢の幅は広く、8割~9割が精神疾患を持ちの方です。『精神といったらハートフルだよね。』と、皆さんご用命くださっています。精神の方々は自分から訪問看護を受けたいという方は殆どいません。病院に入院されて退院するにあたって、サポーターとして訪問看護を使われませんか?と病院の方にお勧めされたり、退院の条件でと強いられて受けられる方が殆どです。精神科の特徴として、退院してもすぐに戻ってしまうということが挙げられますが、訪問看護を受けられることで、再入院する頻度が減らせることが、最大の価値かと思っています。

ハートフル訪問看護ステーションとして大切にされていることを教えてください。

『制限を越えていける社会の実現』をビジョンとして掲げています。利用者さんは、社会の中でいろいろな制限を強いられています。とくに精神疾患の方は、病気になったことで、仕事も失うし、周りから疎外されるし、下手すると親からも理解されないこともあります。自分の人生を小さく収めてしまう傾向にあるのですが、その制限しているものが家族であれば家族の考え方を少し広げていく、地域の理解がなければ地域の理解を広げていくというように、本人たちが持っている制限を外せる社会にしていくということを目指しています。

その為には専門職としてのスキルや在り方も大切ですし、組織自体もしっかりしなければならないと考えています。『美しくしなやかで賢い組織』を作ることを目指しています。

インタビュー後記

美しくしなやかで賢い組織を作ることを目標にされていると話された渡部代表。時代の変化が激しく、生きづらいと感じられる方が増えている世の中で、しなやかさを大切にされているからこそ多くの利用者さんに信頼されているのだと感じました。毎月第一土曜日にメンタルライフ相談会も開催されているので、少しでも興味を持たれたら、是非お問い合わせ下さい。

お問い合わせ

KONOKI | 桂乃貴メンタルヘルスケア株式会社

〒153-0051

東京都目黒区上目黒2-15-6 川鍋ビル4階

■TEL  03-6412-8830

■HP  ハートフル訪問看護ステーション中目黒 - 目黒区・渋谷区・世田谷区の精神科訪問看護24時間終末期お看とりの心の看護 (heartful-st.com)

*ご相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。