まちの仕事人インタビュー
犬も飼い主も幸せにする
一般社団法人ドッグケアリスト協会 代表 遠藤 圭香 (えんどう けいこ) さん インタビュー

福島県出身。トリマーの専門学校を卒業後、一般企業に就職。23歳で脳腫瘍が見つかり、仕事に制限がかかる中、上京。多忙なOL生活を送り、寝るためだけに家に帰る日々。30歳目前で、明日死んでも後悔しない生き方をしようと決意し、昔からの夢だった犬に関わる仕事をスタート。2018年に『LavoDog』を起業。2021年に『一般社団法人ドッグケアリスト協会』を設立。代表として現在に至る。

明日死んでも後悔しない生き方を

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

中学生のときには、トリマーになりたいと考えていました。幼い頃、祖母と近所のお家に遊びに行き、庭に居た大きな秋田犬に近づき噛み殺されそうになって背中を2針縫うなど、決して犬には良い思い出ばかりがあるわけではないのですが、近所のおじさんが売れ残りのシーズーを飼ってくれないかと連れて来るなど、犬はいつも私の近くにいました。高校卒業後、トリマーの専門学校に通ったものの、一般企業に就職して社会人をスタート。2年後、脳に腫瘍が見つかり、医師から車の運転を禁止されるなど、働き方に制限がかかるようになりました。電車通勤のできる都内で働くために上京し、環境を変えてみたものの、満員電車に揺られて、寝るためだけに家に帰る日々。そんなとき、ふと「明日死んでも、自分は後悔しないだろうか?」と考え、自分が本当に打ち込めることを仕事にしようと決意しました。そこで、改めて想いを強く持ったものが『犬の仕事』。そこから、トリマーとしての「からだのケア」にプラスして「こころのケア」を学ぶため、平日は一般企業で仕事をしながら、土日を使って、3年かけてドッグトレーナーの学校に通い、犬の行動学やしつけに関する知識を身に付けました。


そこで、私はトリマーとして犬を知っているつもりになっていたが、犬たちの気持ちや心、感情というものを全く無視した事をしてきてしまった…という事を思い知らされたんです。

その後2年かけて、再度トリマーの学校に通い直すことで、犬のケアに関する知識をアップデート。そして独立前の社会勉強のため、派遣トリマーとして複数の店舗を掛け持ちして周ったのですが、やはりサロンの現状は10年前と変わっていませんでした。嫌がる犬を無理やり押さえつけて爪を切る。過度なストレスがかかった犬の中には、死んでしまう子もいました。飼い主さんは、「プロに任せているから大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、高い台に乗せられ、じっとしているように押さえつけられた状態で行われる、ブラッシングや爪切りを好きな犬はいません。そのうえ、お迎えに行くと、「よく頑張りましたよ」と笑顔で伝えられるため、飼い主がこの実態を知ることもありません。こうした現状を見て、「苦手なケアに苦しんでいる犬たちを救うために私が出来ることは何だろう?」と突き詰めて考えた結果、「トリマー」と「トレーナー」のスキルを掛け合わせ、飼い主の方に自宅でできるおうちケア法を伝えることを思いつき、『一般社団法人ドッグケアリスト協会』の設立に至りました。

仕事の特徴はどのような点にありますか?

「トリミング」と「トレーニング」の両方の知識と経験を持つ私だからこそ伝えられる、自宅でできる愛犬ケアを飼い主さんに教えています。ブラッシングや、歯磨き、爪切りだけでなく、メンタルトレーニング(心のケア)やしつけの仕方など、1日5分~10分でできるおうちケアのメニューを伝授しています。また、教えているのは飼い主さんだけですが、私はトリマーの仕事をしている人の力にもなっていると考えています。飼い主さんの方で、ある程度のドッグケアができていれば、サロンではプロの技であるシャンプーとカットだけを対応するなど、同じ時間の中でも、ゆっくり丁寧なサービスを行うことが出来ます。もう、回転率を気にして時間に追われ、ケア慣れしていない犬に噛まれたり、手を焼く必要もなくなるのです。

飼い主を、最高の愛犬ケアリストに

どんなお客さまからのご相談が多いですか?

現在約50名の卒業生がいます。『愛犬ケアリスト』として協会から終了証をお渡ししています。ご相談にいらっしゃる方のほとんどが、30代~60代の女性ですが、ご夫婦で学ばれる方もいらっしゃいます。「爪切り」「歯磨き」「ブラシ」が自宅でできるようになる“ベーシックケアリスト”のコースと、その上でさらに「シャンプー」と「カット」ができるようになる“マスターケアリスト”のコースをご用意しています。レッスンは定期的に行いますが、犬種や犬の性格、飼い主さんの性格やセンスによって、卒業までの期間は3ヶ月~1年程度とまちまちです。オンラインでもレッスンは行っており、遠方の方もいらっしゃいます。自分で飼った犬を、自分でケアすることが、当然のこととして広く認識され、もっと自宅での愛犬ケアが広まると嬉しいですね。


仕事をするうえで心がけていることはありますか?

飼い主の方には、自分が飼っている犬にとっての、最高のケアリストになって欲しいと願っています。愛犬の得意不得意や身体的な特徴を熟知していて、その対応法も知っている。例えば、この季節はうちの子はこんなトラブルが起きやすいからこんなケアをする、食事はこうする、などのケアが出来て我が子の「こころ」と「からだ」を健やかに守れる、犬たちにとって最高に信頼のおけるケアリストになって頂きたいです。そのために様々な方面からアドバイスが出来るよう私自身も学んでいます。

今は可愛い子犬でも、いずれ歳を重ねます。サロンの中には「シニア犬」「寝たきりの犬」「認知症の犬」をお断りしているところも少なくありません。愛犬が高齢となった時、プロも飼い主もケアすることが出来ずに不衛生になっていく犬たちを目の当たりにした事があります。その子たちをケアするために訪問トリミングを行いました。けれど、元々ケアが苦手な子や寝たきりで関節に痛みなどがあるシニア達は、信頼関係もない見ず知らずの私に激しく抵抗し、命の危険があるためケアを中断せざるを得なかったのです。その時に「愛犬がシニアになる前に、飼い主が我が子の全身を隈なくケア出来ること」「犬自身にケアを穏やかに受け入れるスキルを与えること」の重要性を学びました。

 

コロナ禍でペットを飼う人は増えました。犬はプロに時々ケアしてもらうのが当たり前の日本ですが、犬の負担や健康を考えれば毎日飼い主によるケアが欠かせません。当然、その方が犬も幸せですし長生きする傾向にあります。犬の一生において、最後の最期まで側でお世話をしてあげられるのはトリマーでもトレーナーでもなく飼い主のあなただけです。どうか愛犬の飼い主によるおうちケアをして頂きたいと思います。その方法について、私の経験と知識はいつでもすべてお伝えします。


インタビュー後記

遠藤さんのドッグケアへの情熱について話を伺っていると、時々鬼気迫るものを感じる。その根底にあるものは、飼い主が飼育を放棄してしまった犬が、殺処分されることへの憤りだ。犬の命を大切にしようとする想いと、遠藤さんの持つ正しい知識と、確かな技術に裏付けられた、自宅でできるドッグケアが世の中に広まり、多くの飼い主が、それぞれの犬にとって最高のケアリストになることを期待したい。

お問い合わせ

名前:一般社団法人ドッグケアリスト協会

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*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。