
1980年広島県生まれ。「グラフィックデザイナー」として社会人をスタート。東日本大震災で会社が傾き、不動産テック系のベンチャー企業へ「営業」として転職。執行役員に就任した後、会社が株式上場を果たす。築き上げた資産を賢く使うための金融知識を持ち、自身の経験を活かして人生を豊かに生きる人を増やしたいとの想いから、大手金融機関の「ファイナンシャルプランナー」に転職。特技はデザイン。
知識、経験、仲間の力を総動員
この仕事を始めたきっかけを教えてください。
グラフィックデザイナーのときに、とてもお世話になった印刷会社の営業の方が、金融機関へ転職されていて、この仕事へお誘いいただきました。執行役員として会社の上場を数ヶ月後に控える中で、次のキャリアを模索し、社外の人の話を聞いてみようと考え始めていた頃でしたね。当時、次の職場に求めていたことは「アントレプレナーシップのある企業文化」「働く時間や働き方の自由度の高さ」「デザインスキルが活かせる環境」「対面で幅広く提供できるサービス」「今までに経験のない業界」の5つ。自分では、またどこかのベンチャー企業へ転職するイメージを持っていました。しかし、お誘いいただいた方と一緒に働けることに魅力を感じたうえ、株式上場によって築き上げる資産を賢く使うために、最新の金融知識を持ちたいという考えもあったため、ファイナンシャルプランナーへの転職を決意。今の仕事は、個人・法人に関わらず、日本全国の誰にでも役に立てるため、とてもやりがいがありますね。
仕事の特徴はどのような点にありますか?
一言でいうと“究極のお節介”ですね。気になることには、何でも口を挟んでいます。まずファイナンシャルプランナーとして、お客さまの将来の資産形成の見通しを立てたうえで、夢の実現をサポート。実務としては、収入・支出・貯蓄の状況をお伺いしたうえで、将来の資産の推移を一緒に確認し、「収入を増やす」「支出を抑える」「貯蓄を運用する」という3つの軸で、アドバイスしています。アドバイスと言っても、知識を伝えるだけではありません。例えば、収入を増やすためであれば、希望する転職先の社員や、キャリアアドバイザーとの面談をセッティングしたり、支出を抑えるために、不動産会社の方を紹介して条件の良い場所へ引っ越してもらったり。自動車の購入希望があれば、ディーラー・駐車場仲介業者の紹介。何かトラブルがあれば弁護士を紹介し、結婚を希望される方には、個人的に合コンをセッティングしたこともありますね。法人であれば、協業を見込める会社のご紹介や、売上アップを支援するコンサル会社などもお繋ぎしています。常に、自らの持つ知識・経験と、信頼のおける仲間の力を総動員。もはや仕事の境界線がよく分からなくなっていますね。事業の柱の1つは生命保険ですが、個人的には保険がすべての人に必要だとは考えていません。資産形成の上でリスクヘッジとして効果がある場合に限り、効果的な金融商品としてご提案しています。
生命保険の考え方を教えてください。
例えば、お子さまが生まれたばかりの頃など、資金に余裕がなく、自分が亡くなったり、働けなくなったりしたときに、家族や自分が経済的に困る場合には、生命保険が効果的です。そのため、経済的に安定してくれば保険を手放すことも検討できますね。逆に、資金に余裕があるからこそ生命保険が力を発揮するケースが2つあります。まずは、認知症に伴う金融口座の凍結により、周りに迷惑をかけたくない場合。メガバンクでは代理人制度などにより、凍結された口座からお金を引き出せるようになりましたが、生命保険には、契約者の意思表示が困難なときに代理で手続きできる保険契約者代理請求人制度があるため、口座凍結の対策としてご検討いただくこともあります。もう一つは、相続時に、特定の人へ資産を譲り渡したい場合です。死亡保険金は受取人の固有の財産とみなされるため、原則としては遺産分割の対象になりません。そのため、自分が希望する家族へ、希望する額を遺すことができます。また、非課税枠が適用されることで、相続税を抑える効果もあります。その他にも「これまで一生懸命稼いできたお金を、病気や介護といったネガティブなことに使いたくない」という考えに沿って、保険を活用されることも、ストレスからの解放という意味では正解です。合理的な「勘定」と、精神的な「感情」のバランスを取りながら、最後は自分の価値観で選んでいただきたいですね。
クリエイティブなファイナンシャルプランナー
どんなお客さまが多いですか?
30代~50代の方のご相談が多いですね。結婚、住宅購入、出産、転職、老後資金の確保、親の認知症対策などが、相談のきっかけとなるケースがほとんどですが、結婚相談所からのご紹介で、結婚前に将来の方向性を定めておきたいと考えるカップルもいました。私のこれまでの経歴から、クリエイターからのご相談も多いですね。デザイナー、カメラマン、イラストレーター、漫画家など、お金の心配を解消することで、クリエイティブに打ち込める環境づくりをサポートしています。また、私が地元である川崎フロンターレのサッカー観戦に行くことから、Jリーグのサポーターからのご相談も増えています。「好きなチームを少しでも長く応援し続けたい」という想いを叶えるため、中長期的な資産形成をアドバイスしています。また、現在はオンライン面談も増えており、北海道から沖縄まで全国対応中。故郷の広島からもたくさんのご相談をいただいており、もちろんその時は広島弁で対応していますよ。
仕事で心掛けていることを教えてください。
“それぞれにピッタリの資産形成プランが必ずある”という確信のもと、お客さまの話を伺いながら、その方の価値観や性格に合ったアドバイスをするよう心掛けています。私の仕事は、お客さまの話を聞いてみないと、的確なアドバイスが分かりません。YouTubeやWebメディアで、これだけ資産運用や保険に触れられていながら、バランスよく資産形成できている人は、私の体感では全体の1~2割ほど。動画や記事で、一般論は理解できても“自分に合っているかを判断できない”という人が多い印象です。プロのデザイナーの作ったロゴが、その商品やサービスにしか使えないほど洗練されて仕上がるように、プロのファイナンシャルプランナーが知恵を絞った資産形成プランは、その人の価値観や考えでなければ行動に移せないものに仕上がるべきですね。また、これまでに『お金持ちは合理的』(すばる舎)、『お金が増えるのは、どっち?』(三笠書房)と2冊の本を出版し、累計3.2万部と好評です。本に絡めて、NHKやラジオへの出演、雑誌の監修、大学やロータリークラブでの講師など、さまざまな機会をいただきました。今後も、本を絡めた発信やセミナーは増やしていきたいですね。デザイナー時代から、期待以上の提案することは得意なので、これからもクリエイティブなファイナンシャルプランナーとして頑張ります。
インタビュー後記
これまで“センス”とは、生まれ持ったものだと考えていたが、立川さん曰く「センスは知識の集積」であり、学ぶことで磨かれるもの。FPに求められる知識は多岐にわたるため、立川さんは、国内外のFP資格はもちろん、一種証券外務員、宅地建物取引士、上級相続診断士、プライマリー・プライベートバンカー、高校数学の教員免許など27個の資格を保有し、現在も学び続けている。豊富な知識を持ちつつも、自分の考えを押しつけず、相手の価値観や想いを十分にヒアリングしたうえで、理想の未来を引き寄せるプランを一緒に考えてくれる。まさに、人生と資産のデザイナーだ。