著名人やスポーツ選手も多く、全国から患者が訪れる診察室


コロナによる医療崩壊が懸念され、ニュースで日々報じられているが、感染症とは直接関係のない整形外科でも、未曾有の事態に遭遇していたという。

ニュースでは報じられなかったもうひとつの医療危機と、そこから「健康」の大切さを改めて発信し続けている医師、吉原潔先生に話を伺った。


プロデュース:高木優一

取材・撮影:長谷部なおき

区民ニュース編集部


医療崩壊に隠れたもうひとつの医療危機

東京都世田谷区尾山台にある「アレックス脊椎クリニック」は、全国から腰痛患者が訪れ、一流スポーツ選手も門を叩く首・肩・手足・腰痛治療・リハビリ専門のクリニックだ。院長の吉原潔医師は、脊椎内視鏡手術のエキスパートであり、TV・雑誌などに度々登場。一方でスポーツトレーナーの資格を有し、ボディコンテストに出場するボディビルダーの一面を持つ。予約の絶えない名医の一人だが、コロナでは大きなダメージを被ったという。


「怪我や病気は景気に左右されないので、医者は不景気でも仕事がなくなりません。逆にバブルだからといって患者さんが増えるということもありませんでした。私は30年以上医師をしていますが、その意味では景気を感じたことがなかったんですよ。ところがコロナは違いました。昨年、緊急事態宣言が発令され、外出を控える風潮になると、受診する患者さんが激減しました。リハビリ通院もしばらく休みたいという方が増えたんです。ピーク時で4割以上の減。医者になって初めて“景気の波”をかぶった感じでした」」


初期の頃はコロナウィルスが未知のものだったせいで、過剰に恐れる傾向が強かった。そのため病院さえも控える人が多かった。怪我や不調を訴えても、ギリギリまで我慢する。当然、患者は激減する。コロナ対応の病院では医療崩壊が危ぶまれる中、他方では患者不足で経営不振に陥る病院が少なくなかったのだ。対応も手探りだったという。


「待合の席を空け、ソーシャルディスタンスを保つことはもちろん、雑誌やカタログを撤去、ウォーターサーバーは使用中止。実際に紙でウィルスが感染するのかはわからないけど、そんな報道もあったし、多くの人が触れるものは廃止せざるを得ませんでした。安全性がわからないので、現在も廃止したままの状態です。入院患者の面会も未だに一切できなくなっていますが、どこの病院でも同じかもしれませんね」


アレックス脊椎クリニックは有床診療所で、手術も入院も対応している。病院からクラスターを出すわけにはいかないので面会には制限を設けざるを得ない。


「うちはヘルニアの手術などが多いので患者さんも仕方ないと思えるかもしれませんが、いちばんかわいそうなのはお産ですよね。普通ならお父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、みんな駆けつけて祝福されるのに、お母さんが一人で入院して一人で出産し、退院まで誰にも会えないような状況のようですから」


7月以降、新規感染者が減ると、患者数は次第に戻り始めた。感染者数は年末年始に大きく増えたものの、2回目の緊急事態宣言で減少傾向となった。リバウンドが懸念されているが、街には人が溢れている。前回のような危機感はなくなった。


「慣れなのか、緩みなのかはわからないけど、去年の4月の頃の状況からすれば安心感があるのだと思います。ニュースで渋谷にあれだけ人が出ていて、学校や施設が営業しているんだから、そこに通う人や働く人も増えてるはず。当然感染者は増減を繰り返しますよ。だけどマスコミによって不安が煽られている部分はある。過剰に反応せず、正しく恐れる、ということが、今後は大事になってくると思います」


例えば増えた感染者だけではなく、減った数にも着目する。一つの報道だけではなく、色んな角度の意見に触れてみる。そうやって「知る」ことで、情報に振り回されない選択ができていく。残念ながらコロナはすぐには収束しない。「正しく恐れる」ことこそが、コロナと共生する社会には必要不可欠な考え方と言えるだろう。


健康年齢の延伸をテーマに

2021年2月には「脊椎ドック」がスタート。これは非常に独創的で、人間ドックの単なる脊椎版と言うことではなく、別名は「身体年齢ドック」とも。MRIで脊椎スクリーニングを行うのは、当然としても、メインは身体年齢を計測することなのだ。吉原院長いわく「あなたの現在の体力年齢を提示します」というもの。体脂肪率や姿勢評価、筋力が数値で表され、とても客観的だ。トレーナー目線からの身体ケアのドバイスが受けられる日本初のドックと言っても過言ではないだろう。



コロナ禍では「コロナ太り」というワードも登場した。ステイホームが増える中での健康維持は、多くの人にとっての関心事となった。2020年12月に出版された吉原院長の著書「らく〜に1分!  ゆるテーブルスクワット」は、タイムリーな一冊と言える。


「もともとはコロナに関係なく、整形外科医とフィットネストレーナーのダブルライセンスを活かし、“健康年齢を伸ばしたい” “いつまでも若々しくありたい”という観点から何かプロモーションができないか、と考えていました。それがたまたまコロナ需要と重なった感じです」


整形外科の治療でリハビリは重要な位置づけだが、医師はリハビリの指示を出すだけだ。通常であれば、個々の運動の方法に医師は関与せず、リハビリでの運動メニューは理学療法士が考えて行っている。ところが、吉原院長はトレーナーの立場から考察し、診察室で自ら裏メニューを指導することもあるという。本格的な運動療法の指導ができるドクターとして、幅広い領域で治療とアドバイスを行っている。


「医者は手術を終えると、あとは知らないというか、知識がないので実践までのケアはできません。当院の場合は、手術とリハビリは一体と考え、そこの連携を重視しています。もちろん、リハビリは理学療法士が指導しますが、更にその先、健康維持や筋トレという話になってくると、医師はもちろん理学療法士も専門外です。でもそこまでをつなげて考えていくと、本当の意味で“健康年齢の延伸”につながっていく。私が今いちばん注力している点です」


例えばメタボ気味の人がダイエットをする場合、食事制限で体重を減らすことはできる。その際、筋肉と脂肪の両方が減るのが基本だが、中高年の場合は、脂肪よりも筋肉の方が多く減ってしまうケースがある。筋肉量を維持しながら脂肪をメインに落とすには、運動を取り入れなければならない。また、体重は最初は順調に落ちていくが、しばらくすると落ちにくくなったり、リバウンドでもどってしまう例もよく耳にする。それもまた、医師には専門外の領域だ。


「例えば糖尿病の患者さんに10kg落としなさい、ということはできます。でも10kgの減量をした経験のある医者は少ないし、効果的な指導ができる人ともなればもっと少ないでしょう。健康的に、つまり筋肉を維持しながら目標体重への減量をしたり、リバウンドのないダイエットについていちばんよく知っているのは誰か?階級別の競技で体重管理が日常のスポーツ選手や専門のトレーナーなんですよ。ただ、私もボディビルで経験していますが、基本は健康な人の減量なので、かなり過激な面もあります。競技なので最後は水や塩分まで断つ場合もある。一般のダイエットでは、そこまでの必要はないですが、減量のノウハウには有用なものがたくさんあります。そこに医者の目線をかけ合わせたら、良くないですか?」


クリニックに内の別フロアに設置されたパーソナルコンディショニングセンターにて


最近では、朝の情報番組でおなじみの人気YouTuber竹脇まりなさんの著書「やせるダンス」(2021年2月発売)に監修ドクターとして参加。医師でトレーナーで競技者でもある稀有な経験に注目が集まる。コロナ禍で健康の大切さは誰もが関心を寄せるところ。出版社からのオファーも多く、6月には新著の出版も決まっている。


「次のはザックリ言うと、お腹をへこますための本です。ボディビルまではいきませんが、健康でかっこいい身体づくりのための要素がたくさん入っています。たとえばシックスパックにするにはどうすればいいと思いますか?「腹筋を1日100回、3セット」みたいにやってもダメなんです。ルーティンをこなすやり方や回数だけを目標にするのではなく、力をかけるポイントや意識の仕方を変えるだけで結果も違ってきますし、食事面も見直す必要があります。理にかなったやり方があるんですよ」


医学的で科学的で実践的。他の人がなかなか気づかなかった新しい観点からの運動哲学が散りばめられている。


「当たり前のことですが、健康増進には食事と運動、休息の3つが大事です。栄養をとって体を動かし、十分な睡眠を取る。そうすることで免疫力も高まり、病気やウィルスに負けない身体ができていきます。医師の知見とトレーナーの経験、競技者の実践をかけ合わせると、先に述べた健康年齢の延伸や、コロナ時代を乗り越えるために、みなさんのお役に立てる新しいことができるんじゃないか、と思っています。それを追求することは、私自身にとっても、非常にワクワクする取り組みです」


多い日には50〜60人の患者を診察し、手術の執刀を行い、トレーニングも欠かさない。合間を縫っての執筆は、共著・監修を含めると10冊以上。専門誌の連載や寄稿も複数ある。しかし、そんな忙しさを微塵も感じさせないほど吉原院長パワフルだ。著書やトレーニングに話題が及んだときは、実に楽しそうに話されていたのが印象的だった。出版がいまから待ち遠しい。ぜひ多くの方に、手にとっていただきたい。


吉原潔(よしはらきよし)

日本専門医機構整形外科専門医。日本整形外科学会脊椎脊髄病医。医学博士。日本では数少ない脊椎内視鏡手術技術認定医の資格を有する。スポーツ医学にも精通した日本スポーツ協会公認スポーツドクターで、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認のパーソナルフィットネストレーナーとしても活躍。スノーボードFISワールドカップ医事主任を歴任し、2015年にはベストドクターに認定された。帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、アレックス脊椎クリニック院長に就任。本格的な運動療法の指導までできる脊椎外科医として、一般患者からプロスポーツレベルまで治療対応している。


アレックス脊椎クリニック

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