1984年生まれ。東京都出身。国土交通省に勤務の後、アクセンチュア株式会社へ入社し、経営戦略などに関わる。2016年、父親が代表を務める山口証券印刷株式会社へ入社。事業の多角化に向けたM＆Aの推進に尽力し、2018年、ボードゲーム印刷を専門に扱う株式会社萬印堂を子会社化。同社の代表取締役となる。趣味は盆栽。
趣味から始まったボードゲーム印刷
萬印堂の成り立ちを教えてください。
萬印堂は、富山県にある印刷会社の東京支店として、1958年に開設されました。当初は伝票などの印刷を行っていたのですが、デジタル化と、個人情報保護のあおりを受けて、90年代には年々受注が減少していました。そのタイミングで会社の代表を務めていた方が、趣味だったボードゲームに目をつけ、ボードゲーム印刷を受注するようになったと聞いています。初受注は2000年1月で、ゲームで使うスコアカードを印刷したようです。
ボードゲームは一般の印刷よりも難しいですか？
一般的な印刷物のように、同じものを何千枚と印刷することはほとんどなく、形や大きさの違う印刷物を小ロットで依頼されることが多いため、間違えないための細心の注意が必要です。また、印刷物の表面加工など、自社で対応できないものが含まれている場合には、近隣の紙器加工会社と協力して作業を進めています。このように弊社を窓口とし、近隣の紙器加工会社と連携し、一定の品質で納期を守る作業体制は、安定するまでに多くの苦労があったと聞いています。
お客さまにはどんな方が多いですか？
初めてボードゲームの作るという方が多いです。36枚のカードに箱1つと説明書1枚がセットで、50セットという小ロットの印刷ができる『ベーシックパック』があるのですが、手軽にゲームが作れると好評をいただき、年間200作品ほど印刷しています。その他の仕様を含めると、弊社で印刷しているボードゲームは年間500作品以上です。印刷前のご相談は、数年前までは見積もりに関するものがほとんどでしたが、最近では印刷物の質感など、具体的で細かい内容が増えており、ボードゲームを作る方の技術や知識はどんどん上がっていますね。お取引先は法人が1割、個人などインディーズが9割です。また、年に3回『ゲームマーケット』という国内最大のボードゲームの販売・交流イベントが開催されていて、そのタイミングに合わせて制作される方も多いですね。ゲームマーケットで、弊社で印刷したボードゲームが実際に販売されて、来場者の方の手に渡る様子を見るのは本当に嬉しいです。
アナログなコミュニケーションで質を高める
仕事へのこだわりを教えてください。
ボードゲームというアナログなゲームを印刷していることもあって、アナログな“人を感じるコミュニケーション”にはこだわっています。社内のシステム化など、生産性や効率を上げるためのデジタル移行には積極的に取り組んでいますが、一方で、印刷をご依頼いただくお客さまとのやりとりについては、なるべく丁寧に、温かみのあるアナログなコミュニケーションによるサービスの向上を目指しています。このやりとりの甲斐もあり、「期待以上の仕上がりでした」という印刷物への感想の他に、「ゲームがたくさん売れています」といった近況報告などもご連絡いただけるようになりました。
今後の抱負を教えてください。
M＆Aという形で萬印堂に関わることとなりましたが、私自身がボードゲーム好きということもあり、毎日が本当に楽しいです。また、最近では企業さまより、販売目的ではなく社内研修用にボードゲーム印刷をご依頼いただくことも増えています。今後はボードゲームが、社員間のコミュニケーションツールの1つになりそうですね。法人・個人ともにボードゲーム市場は今後も成長が見込めるため、現在の丁寧な仕事の進め方に磨きをかけながら、さらなる事業規模の拡大に向けて、会社の舵取りをしていきたいと考えています。
インタビュー後記
知り合いにボードゲームの製作者が何人かいるが、「自分のアイデアが印刷物になった時の感動は、何度経験しても薄れない」と口を揃える。応接室の壁には所狭しと萬印堂が印刷したボードゲームが並んでいた。その一つ一つが製作者に感動を与え、ゲームで遊ぶ人に楽しみや喜びを与えていることを考えると、本当に多くの人を幸せにしている仕事だと感じた。これまでのボードゲームの印刷実績も申し分なく、相談にもしっかり応えてくれる。ボードゲームを作ろうと考えているならば、最初のターンに行うアクションは、『萬印堂へ相談』の1択だろう。
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