株式会社ニューライフ代表取締役 辻幸男さん
昭和40年4月生まれ、奈良県天理市出身、添上高校~福井工大卒。
大学卒業後、建築設計業界に就職希望も写真に興味を持ち写真の専門学校に。カメラマンとしてカタログ写真の撮影などで生計を立てるもののデジタルカメラの出現で収入が減少。将来に不安を感じる。
「ちょっと忙しいから手伝ってくれ」という一言を機にアルバイト感覚で面接に行った知人の紹介で葬儀業界に就職をする事に。
ひょんなきっかけで入った葬儀業界も今では30年のベテランとなった。現在は生命保険の営業マンはじめ士業の皆様などとタッグを組み、終活に関してセミナー講師としても活躍。趣味は古いカメラの収集、写真撮影、保護猫の飼育。
心身共に疲弊した写真業界から葬儀業界に転職
人生の転機は突然に・・・
大学を卒業したものの希望していた建築設計の仕事は中々無くて写真の世界に飛び込んだんですが、拘束時間が長い割に収入も減少し、色々今後の人生を考えていた時、ある方とお話していたところ「とにかく知り合いの会社が忙しくて人手が足りないからお仕事手伝ってあげて」と言われたのがこの業界を知ったきっかけなんです。何気なく面接に伺ったんですが、正直なところ本当にお手伝いするだけのアルバイト気分だったんですがいきなり正社員のお話を頂いて・・・。
元々葬儀業界に興味はあったんですか?
全く興味は無かったんです。それどころかちょっと怖いなというのが本音でして。だけど先輩方にお仕事を教えてもらい現場を重ねていくとただご遺体の足を持っただけなのに「ありがとうね」とご家族に感謝される。なんかこの感覚が嬉しくてもっと色々覚えたい、スキルを高めたいとのめり込んで30年。人生の半分以上葬儀業界でお世話になることになりました。
実は先程アルバイト先を紹介して下さった「ある方」とはお寺の住職さんなんです(苦笑)。だからその葬儀社の内情をご存知だったわけで冷静に考えればちょっと騙された感じですが、今ではそれが天職となりました。ホント人生ってどこでターニングポイントが来るか分からないものですね。あの時相談してなかったら、あの時騙されていなかったら私は職を転々としていたかもしれません。
葬儀業界はもうコロナ前には戻らない。
辻さんの葬儀ポリシーを教えて下さい
ご家族のご意向をしっかり伺うという事が一番。そしてセットメニューでのご提案はしないという事。ご存知の通り、コロナで葬儀が小さくなりました。それなのに参列者が何十人もいらっしゃるような受付や看板、提灯は不要なわけです。不要なものをセットメニューに入れて知らないふりして葬儀代金をご請求するといった手口は私はやりたくない。だから私のご提案は毎回オーダーメイド。必要なものだけお見積りに入れご提案する。これが私のポリシーです。
ご家族は大変と思われるかもしれませんが、こんな時代だからこそ自宅葬をお勧めしたい
勿論どのご家庭にも当てはまる話ではありません。何故なら住宅事情が異なりますから。しかし私は家族葬が当たり前になったこんな時代だからこそ、自宅葬をお勧めしたいんです。私のご葬儀に対する基本的考え、それは最期はご自宅に帰ることだと思っています。ご家族の皆様には故人と残された時間を大切にして頂きたいのです。故人の最後の温もりを感じて頂きたい。死を理解して頂くという事は諦めて頂くという事。そういう意味でご自宅でゆっくり過ごして頂く自宅葬をお勧めしたいんです。
死を理解するという言葉、ズシッときますね
葬儀会社の人間はとかく式を急かすんですよ。特に大手は。だけど死を理解するという時間は千差万別。ご自宅に1週間から10日程度なら安置しても大丈夫です。自宅葬のメリットは式場を利用しない分、価格が安い。デメリットはマンションなど棺の運搬が大変、あとはご家族さんに室内の安置スペースを確保して頂く事とお片付けにご協力頂く事。コロナで参列者がいないなら自宅で葬儀をするという流れは私は当然だと思います。
辻さんが施工した記憶に残るお葬式を教えて下さい
会社員時代の話なんですが、ご主人様が亡くなられたんですが、喪主である70代のご夫人からしっかりと見送りたい、葬儀は立派にしたいというご意向を頂いていたにも関わらず、義理の御兄弟からは質素に済まそうという話があり、中々お話が進まなかった。葬儀の世界に携わる以上この手の話はよくあるのですが、そこはご夫人のご意向でしっかりとしたお式でお見送りをされました。
しかし葬儀後も都度都度お電話を頂戴したんです。最初はよく分からなかったんですが、どうやらお子様がいらっしゃらないので私に万事があった場合、あなたにお願いしたいというお話だったんです。
それから13年のお付き合いでしたね。足を悪くされたご夫人のお墓参りに同伴したり、定期的にお食事に誘って頂いたりと良いお付き合いをさせて頂きました。ご相談を重ね、死後事務委任契約を結び、お部屋のお片付けなど全て私が担当致しました。今でもご主人様の形見だった腕時計やネクタイピンを大事に使わせて頂いています。そのご夫人が亡くなったのが4月8日。桜の季節になると毎年ご夫人のことを思い出すんですよ。
ここ最近取り組んでいることを教えて下さい
「終活」をもっと普及させる為に定期的に生命保険会社や士業の皆様とセミナーをさせて頂いています。葬儀社だからと言って葬儀の相談しかできないのはおかしい。私は人生最期の総合演出家だと自負しています。「死」というのは新たな門出。そういう意味で社名をニューライフとしたんです。
業界30年のベテランの辻さんに伺います。葬儀社選びで大切なこととは?
なるべく早めに終活をしてご自身の最後をイメージすること。そして生前にお見積もりをすること。あとご家族であれば事前相談時に相談した担当者とのフィーリング。あと確認することはご相談時と施工時の担当者が入れ替わらないかどうかを確認することですね。葬儀って神経ピリピリしていますからちょっとしたミスが大きなトラブルになりかねない。葬儀でご家族と葬儀社が一番もめるのは言った言わないです。
自社ホールでの葬儀を無理矢理進めてくる会社はNGですね。あと見積もり時に別途何に費用が掛かるかを明記しない会社はトラブルになりますね。
最後に伺います。このお仕事はお好きですか?
30年もやってますからね。人と人とのご縁が途切れない。2代に渡り丸々私が担当させて頂いたご家族もある位。そんなお仕事中々ないと思いますね。そういう意味で私にとって葬儀というお仕事は天職だと思います。そういうお仕事に長く携わらせて頂けているというのは幸せですね。
インタビュー後記
自宅葬をお勧めるのは金額の問題だけでなく、ご家族に「心身共にお疲れでしょうから休んで下さい。」というお気持ちからというお話や死という現実から目を背けるのではなくご理解頂く、諦めるというご家族にとって難しい行為に対し葬儀社が急かすことはいけないという話を伺い、辻さんの葬儀に対する熱い思いを感じました。
オーダーメイドの葬儀は毎回見積もりを作りご提案するので、ご説明に時間が掛かるのが難点だけどこの手法は変えないという頑固さ。手間を惜しんだら良いお式はご提案できない。「人生最期の総合演出家」とお名刺にも記載されているプライド。終活をお考えの皆様!是非生前に辻さんにご相談してみて下さい。