塗り薬とは

湿布と並んで腰痛や手足の痛みに広く使われているのが塗り薬です。整形外科領域の塗り薬の用途は、痛みを和らげて楽にするためのもので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という痛み止めが配合されているものがほとんどです。湿布ではかぶれてしまうという理由で、塗り薬を使う方も多いです。


塗り薬は、有効成分が皮膚を介して皮内に移行し、患部に到達することで効果を表します。基剤の違いにより、半固形製剤である軟膏、クリーム、ゲルと、液状製剤であるローションに分けられます。皮膚への浸透性や吸収されやすさでは、クリーム、軟膏、ローション、ゲルの順とされており、これが大原則です。しかし、実際に使ってみるとクリームの方が軟膏に比べて汗や衣服などで取れ易いなど、効果の優劣は必ずしも皮膚への浸透度だけでは語れないようです。


塗り薬の効果を上げる裏技①

塗り薬の塗布回数に関しては、かなり大雑把に処方・指示されている風潮が強いと思います(私もそうです)。添付文書は、1日に1回~数回などと記載されていることも多く、何回塗れば効果的か不明なことが多々あります。1日に1回でベトベトするくらい大量に塗ればよいというものでもなく(擦れて取れてしまいます)、やはりこまめに塗るべきでしょう。私が調べた限りでは、「患者へは1日2回以上は外用するように説明すべき」というのがもっとも信頼できそうな答えでした。


塗り薬の効果を上げる裏技②

軟膏やクリームは、ただ単に塗る「塗布」ではなく、皮膚に擦り込むように塗る「塗擦」の方が、浸透が良く効果が上がります。単に塗るだけでなく、たくさん擦れば擦るほど皮膚や血液(血清)への移行濃度も上昇します。このことはぜひ覚えておいていただきたいです。私は、患者さんに100回擦り込みましょうと指導しています。ただし、ゲルは強く擦り込むと基剤がよれてカスが出てくるので塗擦には適しません。


塗り薬の落とし穴

塗り薬と湿布を両方同時に使おうとする方がたまにいます。塗り薬を塗った上に湿布を貼るのは、湿布が剥がれやすくなります。一方、湿布がずっと剥がれないでついている場合も問題で、密封効果で塗り薬の薬剤の血中濃度が上昇しすぎて、全身に副作用が出る危険性がありますので注意が必要です。塗り薬の上におむつをつける場合も同様な密封効果が生じますので、好ましくありません。



ジェネリックの塗り薬とは?

塗り薬の主剤は基剤中にほぼ飽和状態で溶けています。したがって塗り薬の効果は、主剤の効果以上に、主剤を溶かしている基剤の皮膚透過性や添加物の副作用の影響が大きいのです。ところで、内服薬と同じように塗り薬にもジェネリックはあります。先発医薬品とジェネリック医薬品では、基剤や添加物が異なることがあるのですが、主剤が同じというだけで効果に関しての評価は難しいです。私が調べた限りでは、外用剤のジェネリック医薬品に関する効果や副作用に関する情報は、その評価が難しいが故に極端に少ないようです。ジェネリック医薬品の問題を指摘する発表や論文はあるものの、公的機関で再評価されていないのが現状だという報告もありました。現時点では、新しい塗り薬を初めて使うときには先発医薬品を使用し、その後継続して使う必要があるときには、適宜ジェネリック医薬品へ切り替えて効果に違いがないか確かめてみる必要があると思います。



監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

腰博士  https://koshihakase.com

M+ POWER  https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

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