まちの仕事人インタビュー
地域に寄り添う薬局の歩み
有限会社精美堂 代表取締役 野口 修 (のぐち おさむ) さん インタビュー

有限会社精美堂の代表取締役を務める野口修さん。東京都八王子市南大沢で、地域に根ざした薬局を営んでいる。当薬局のはじまりは昭和38年、母が薬剤師免許を持っていたことをきっかけに、父とともに開業したことだった。父は医療機器メーカーの営業として薬局を回る仕事をしており、その経験の中で「自分たちでも薬局をやってみたい」と考えた。

その家庭で長男として育ち、薬局という仕事を身近に感じながら成長した。大学では薬学を学び、卒業後はドラッグストアで経験を積んだのち家業に戻り、現在は代表として薬局を運営している。地域の方々と日常的に顔を合わせながら、健康を支える存在であり続けたいという思いで、日々仕事に向き合っている。

健康を見守る役割は、ますます重要になると感じています

今の仕事を始めたきっかけを教えてください。

この仕事を始めたきっかけは、やはり両親の存在が大きかったと思います。子どもの頃から薬局の仕事を身近に見て育ち、自然と医療の世界が生活の一部になっていました。

高校生の頃、進路を決める面談の際に「将来どうするか」を改めて考える機会がありました。そのときに1週間ほど自分なりに考え、長男として家業を支えていこうと決意し、薬学部へ進学しました。

大学卒業後はすぐに家業に入るのではなく、まずドラッグストアで約3年間働きました。調剤や接客、店舗運営などを経験する中で、薬局という仕事の社会的な役割を改めて実感しました。その経験を経て家業に戻り、地域の薬局としてどのような役割を果たせるのかを考えながら、今日まで仕事を続けています。

会社継承までの経緯を教えてください。

精美堂は、父が医療機器メーカーの営業として薬局を訪問していた経験から始まりました。さまざまな薬局の経営者と話をする中で、「自分たちでも薬局をやってみたい」という思いが芽生えたそうです。

母が薬剤師免許を持っていたこともあり、夫婦で力を合わせて薬局を開業しました。私は大学卒業後にドラッグストアで勤務し、その後実家の薬局に戻りました。現場で患者さんと向き合いながら経験を積み、やがて代表を引き継ぐことになりました。

長い年月の中で、地域の方々に支えていただきながら薬局は続いてきました。両親が築いてくれた基盤の上に今の薬局があると感じています。


会社の特徴を教えてください。

当薬局の特徴は、地域密着であることです。大手チェーン薬局とは違い、店舗の周辺、半径500メートルほどの地域に住んでいる方々を中心にお付き合いしています。多摩ニュータウンの団地にお住まいの高齢の方も多く、顔なじみの関係ができていることが大きな特徴です。

薬をお渡しするだけでなく、生活の中で困っていることを相談されたり、必要に応じて買い物のお手伝いをすることもあります。こうした取り組みは単なるサービスではなく、高齢者が外出できずに筋力や体力が低下していく「フレイル」を防ぎたいという思いからです。

薬局は病気になってから来る場所というイメージがあるかもしれませんが、地域の健康を守るためには、日常生活の中でのサポートも重要だと考えています。大手にはできないきめ細やかな対応が、地域薬局の役割だと思っています。

お仕事で大切にしていることを教えてください。

仕事で一番大切にしているのは、患者さん第一という姿勢です。地域の中で薬局を営んでいると、信頼関係が何より大切だと感じます。良いことも悪いことも口コミで広がる地域だからこそ、一人ひとりの患者さんに誠実に向き合うことを心がけています。

また最近は、在宅医療やオンライン服薬指導にも取り組んでいます。オンライン服薬指導は、現在はLINEを活用するケースが多く、患者さんの約8割がLINEでのやり取りを希望されます。手軽に使えるという利点があり、患者さんにとっても負担が少ない方法です。

今後はセキュリティ面を考慮し、LINE WORKSなどの導入も検討しています。国の医療政策もオンライン診療や在宅医療を推進しており、薬局としても時代の変化に合わせた取り組みが必要だと感じています。

この仕事のどんなところが好きですか?

この仕事の魅力は、地域の方々と直接つながりを持てることです。薬局は単に薬を渡す場所ではなく、人と人との関係が生まれる場所でもあります。

例えば健康教室を開催すると、多くの方が参加してくださいます。特に高齢の方にとっては、外に出て人と話すこと自体が健康につながることもあります。

薬を通じて健康を支えるだけでなく、地域の方が元気に暮らしている姿を見られることが、この仕事のやりがいだと感じています。

今後やりたいこと等、展望を教えてください。

これからは在宅医療やオンライン服薬指導をさらに広げていきたいと考えています。高齢化が進む中で、外出が難しい方も増えてきています。そうした方々を支える仕組みを薬局として整えていきたいと思っています。

また、医療の世界ではAIやロボットによる調剤の自動化も進んでいくと感じています。すでに処方箋をQRコードで読み取り、薬を自動で準備する機械なども登場しています。将来的には調剤業務の多くが自動化されていくかもしれません。

その一方で、人にしかできない役割もあります。それが患者さんとのコミュニケーションです。地域の方の話を聞き、健康を見守る役割は、これからますます重要になると感じています。薬剤師は機械に置き換えられる仕事ではなく、人に寄り添う仕事へと変化していくのではないでしょうか。

成功哲学を教えてください。

私が大切にしている考え方は、「まず相手のことを考える」という姿勢です。京セラ創業者の稲盛和夫さんの考え方に触れ、「利他の心」という言葉に大きな影響を受けました。

自分の利益だけを考えるのではなく、まずは相手の役に立つことを考える。その結果として信頼が生まれ、仕事もうまくいくのだと思います。

また、経営者として学び続けることも大切にしています。現在も早朝の勉強会などに参加し、さまざまな業種の経営者と共に学んでいます。時代は変わりますが、学び続ける姿勢はこれからも大切にしていきたいと思っています。

インタビュー後記

南大沢の団地の一角にある精美堂。取材を通して印象的だったのは、「地域に寄り添う薬局」という言葉がとても自然に当てはまる場所だということでした。

薬を渡すだけではなく、高齢者の外出を気にかけたり、健康教室を開いたり、オンライン診療にも取り組んだりと、その活動は幅広い。そこには「地域の人が元気で暮らしてほしい」という野口さんの思いがあります。

AIやオンライン化が進む医療の世界でも、人と人とのつながりは変わりません。むしろこれからの時代だからこそ、地域に寄り添う薬局の価値がより大きくなるのではないかと感じた取材でした。

お問い合わせ

有限会社 精美堂

〒192-0364

東京都八王子市南大沢3-9-5-104

TEL:042-675-3557

HP:https://www.seibi-do.com/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。