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店舗付き住宅の借地の処分に困っています。
(2年前の記事です) 掲載日:2022/10/12
戦前から借りている土地に父が50年前、店舗付き住宅を建て現在に至っています。当時の口約束で契約書は存在しません。両親も高齢になり、店も5年前に閉め、今は二人ともそこには住んでいません。
そのため実家が半年前から空き家になり、今後誰も住む予定が無く引き払いたいのですが、解体費用も高額で困っています。地代は毎月66150円で、年間80万弱払っています。この地にしては高い地代を長い間滞る事無く払っていますが、解体費用を地主に負担してもらうことはできるのでしょうか?またその場合、どのように話をもっていけばよいのでしょうか?
地主は店こそ構えていませんが不動産屋で、隣地に立つアパートも所有しています。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。

私がお答えします。
契約は口頭でも成立するのが原則ですので,契約書が存在しなくとも,現に他人名義の土地上に建物を所有していてかつ地代を払い続けているということであれば,土地の賃貸借契約が存在することは問題なく認められるでしょう。
賃貸借契約が終了した場合,特約等が無い限り,借主は元の状態に戻して返却する必要があります。
この原状回復義務は,本件の場合,借主側が自分の費用で解体を行うことを意味します。地代の金額が高いことに関しては,地代の増減額請求は互いに認められていますので,金額を適正額に変更する手続をすればよいことになり,このことが直ちに解体費用を地主負担にできることにはつながりません。
「地代を相場より高く設定する代わりに,退去時には解体費用を地主が負担する」という特約を交わすケースがないとは言えませんが,契約書が無い以上,このような特約の存在を立証することは困難でしょう。また,地代を滞りなく支払うのは借主の義務を履行しているだけですので,いわばアタリマエのこととしか扱われません。
以上が法律の立て付けになりますので,返却するのであれば残念ながら解体費用は負担する必要があります。
一方,地主の側からしても,借地にしてしまっていると,自分の土地でありながら自由には使えませんので,他によりよい使い道があるような場合は返して欲しいと考えるかもしれません。昔からの付き合いということですので,地主との人間関係によっては,解体費用を一部または全部負担してくれるように交渉することも可能ですが,あくまでもお願いベースの交渉になります。ところで,戦前から借りているということですので,地主としてはその土地に対するこだわりはあまり無いかもしれません。確実な方法とはいえませんが,土地建物を共同で第三者に売却することを提案することも考えられます。
金額次第で売却ができるのであれば,建物を取り壊して再築することを前提に買い取ってくれる業者があるかもしれません。
ところで,借地権ごと建物を売却することは地主の承諾なしにはできませんが,建物を賃貸することはできます。今後誰も住む予定が無いとのことですが,第三者に賃貸できるのであれば地主に支払う地代を回収することができるかもしれません。もし抜本的な解決が不可能そうであれば,検討する価値もあるかと思います。いずれにしましても,具体的な事情が分かれば,交渉の糸口が見えるかもしれませんので,一度弁護士に相談されてみてください。