まちの仕事人インタビュー
仮想現実を活用して現実の障害を治す
株式会社mediVR 内科専門医・センター長 新本 啓人 (しんもと けいと) さん インタビュー

広島県出身。mediVRリハビリテーションセンター東京センター長。メディカルサイエンスリエゾン/内科専門医。広島大学医学部を卒業した後、広島市民病院で初期研修、東京ベイ・浦安市川医療センターで総合内科後期研修を行う。ハーバード大学医学部臨床研究トレーニングプログラムの終了後、株式会社mediVRへ入社。医学論文を2編執筆。

脳に働きかけて、障害を治す

今の仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

人の命を救うことに関心を持ったのは、小学生のときです。海外ドラマの『ER』や、漫画の『ブラックジャック』を読んで、医師になりたいと考え、進学先に医学部を選びました。大学ではリハビリを専攻していた訳ではありませんが、医療に対する考え方は共通しているため、現在の仕事でも活かされています。大学卒業後は、広島市民病院で初期研修、東京ベイ・浦安市川医療センターで総合内科の後期研修を修了。後期研修後に、臨床研究で指導を受けていた、弊社代表の原に声をかけてもらいました。原の掲げる「フロムジャパンで勝負する」というスローガンの元、海外に遅れをとっている先端医療の分野で、日本製品による世界進出を目指すべく、株式会社mediVRに入社しました。同級生が病院などに就職する中、周りとは違った道に進みましたが、毎日が刺激的で、後悔は一切ありません。入社してみると全てが想像を超えており、自社のサービスを使ったリハビリが、自分が思っていた以上に治る様子を目の当たりにし、選んだ道に確信をもちながら充実した日々を過ごしています。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

2019年3月にリリースされ、14種類の特許を取得しているVR医療機器『mediVRカグラ』が弊社の商品です。VRとは「バーチャル・リアリティ」のことで、日本では「仮想現実」と訳されています。『mediVRカグラ』は、ヘッドマウントディスプレイを使い、セラピストのサポートを受けながら、ゲームを使ったトレーニングにより、リハビリを行うものです。リハビリに使うことのできる疾患は、「脳梗塞」「脳出血」「失調」「認知症」「脊髄損傷」「慢性疼痛」「うつ病」「脳性まひ」など本当に幅広く、それぞれで治療効果が表れています。例えば、脳性麻痺の影響で、生まれてから一度も自力で歩いたことのない11歳の子どもに『mediVRカグラ』を1日20分×週5日、筋力トレーニングを同じく1日20分×週5日ほど行ったことで、約1ヶ月後には、杖を使って歩けるようになるという結果が得られました。小学校の卒業式で、自分の力で歩く姿を見た周りの保護者から、大変驚かれたそうです。当初は「装具を付けて歩く」ことが目標だったところから、あっという間に「杖で歩く」ことが目標に変わり、今では「杖無しで歩く」ことが目標になっています。いずれは「走る」ことが目標になるだろうと考えています。親御さんにも大変喜んでいただき、お母さまは現在弊社でスタッフとして働いてもらっています。


ここまでのお話だけでは、眉唾と思われてしまうかもしれないので、『mediVRカグラ』を使ったリハビリの仕組みについて解説します。弊社では、あらゆる身体や認知機能の障害は、“脳と身体の情報伝達処理過程の異常”と考えています。要するに脳というコンピュータのバグが原因という捉え方で、VRを使ったトレーニングにより、脳に正しい身体の動かし方を覚えさせ、脳をアップデートすることで、身体の使い方に変化を促すことを目指しています。代表の原は、患者さんの「脳にファンクションキー(ショートカットキー)を作る」イメージとも話しており、より多くの患者さんの力になるべく、現在47カ所の医療機関やリハビリセンターにてご利用いただいています。


また弊社では、『mediVRカグラ』を体験できるリハビリテーションセンターを、2021年11月に大阪、2022年10月に東京でオープンしました。実際に私もセラピストの1人として立っており、無料体験もできますので、ご興味のある方は是非お越しください。また、このリハビリテーションセンターでは、「成果報酬型」のリハビリも行っており、疾患の度合いや目標とする回復の度合いに合わせた個別のプログラムに取り組んでもらっています。成果報酬型のため、効果が無いと感じれば、いつでも辞めることができるため始めやすく、幸い今のところ全ての人に継続していただいています。


治すというゴールに向けて

どんな患者さんにご利用いただいていますか?

脳血管障害(脳梗塞・脳出血)で麻痺が残っている方や、整形外科に通い、腕や脚などの可動域が小さくなっている方、認知症やその予備軍と呼ばれている方にもご利用いただいています。症状が発生して1年以内であれば、1回のトレーニングでも効果が見られることが多いです。また、子どももトレーニングによって右肩上がりに症状が改善する結果が出ており、今後ますます利用が増えると予想しています。

『mediVRカグラ』を使ったトレーニングは非常にシンプルで、“点推定”という考えのもと、仮想現実の中で「動いていないものに触る」「動いているものに触る」という2つをトレーニングとして行っています。トレーニングは、触れる対象の大きさや移動するスピードを変えたり、背景や音を加えることで、セラピストが患者さんの反応を見ながら、脳に適度な負荷をかけることで、バグを取り除いています。

現在は、医療としての貢献を優先していますが、アスリートなど“判断を必要とするスポーツ”をしている人であれば、『mediVRカグラ』を使ったトレーニングにより、歳と共に失われる認知の力を維持もしくは、強化することができると考えており、スポーツ分野での応用も期待しています。


仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

医療には必ず治すというゴールがある(ゴールオリエンテッド)』と考えています。そのゴールに向けた適切なアプローチをする中で、弊社のサービスは強力な武器になると確信しています。また、リハビリを担当するセラピストの価値向上や地位向上についても取り組んでいきたいと考えています。私は常々『治せる人には価値がある』という考えを持っています。数をこなすだけの治療ではなく、実際に治すというゴールに向けて、患者さんを導くことのできる人を増やし、その仕事の価値を、広く世の中に知ってもらいたいと考えています。私たちのサービスは、医療業界では新しいジャンルのため、セラピストとして関わられる人たちの考え方についてもアップデートする必要があり、Zoomを使った指導など、『mediVRカグラ』をより効果的に現場で使ってもらえるようなサポートも行っています。日本に脳血管疾患の患者さんだけでも100万人以上いると言われています。世界中に我々にしか治せない患者さんがいるとの想いのもと、日本発の先端の医療サービスとして、『mediVRカグラ』を世界に広めていきたいですね!

インタビュー後記

リハビリと聞くと、症状や部位ごとに回復に向けたアプローチをすることが一般的だと思っていたので、身体の動きに指令を出す脳にアプローチするという発想は斬新。そのうえで、効果がしっかりと出ていることから、ますます医療の現場での活用が期待される。パソコンの不具合をCPUのアップデートで改善するように、身体の不具合を改善するのであれば、取り組むべきは、脳のアップデート。無料体験も可能なので、身体に不具合を持つ人や、その家族の人は連絡必須だ。

お問い合わせ

法人名:株式会社mediVR

東京支社:中央区東日本橋2-1-5東日本橋セントラルプレイス2階

mediVRリハビリテーションセンター東京

Website : https://www.medivr.jp/

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。