まちの仕事人インタビュー
薬剤師の力を100%発揮する
GrandHealth株式会社 代表取締役 箱石 智史 (はこいし ともふみ) さん インタビュー

1989年、岩手県生まれ。岩手医科大学薬学部を卒業後、首都圏の調剤薬局に薬剤師として勤務。フリーランス、薬局勤務を経て、薬剤師がより活躍できる場を作るべく起業。2021年、上野に処方箋なしで医薬品を扱う『Grand薬局』をオープン。

処方箋のいらない薬局

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

薬学部を卒業後、仕事への期待を胸に首都圏の調剤薬局へ就職しましたが、働き始めてすぐに仕事の意義が見いだせなくなってしまいました。処方箋を受け取り、薬の内容について患者さんへ説明するだけの日々が続き、「自分でなく機械でもできそうだな・・・」と考えるように。3年間勤めましたが、患者さんから感謝の言葉は少なく、「薬を入れるだけでしょ!」「いつまで待たせるの?」と、お叱りをいただく機会が多かったことも、こたえましたね。半年ほど仕事を離れ、フリーランスとして、さまざまな業界や事業に触れたのち、処方箋なしの医薬品を扱う薬局の存在を知ることに。患者さんとの距離が近く、自分の持つ知識や経験が、ダイレクトに活かせる職場は、まさに自分が望んだ薬剤師の働き方そのものだと感じ、2年間働きました。その後、2021年に上野で「Grand薬局」をオープン。処方箋を扱わないことで、最初は集客にとても困りましたね。オープン当初は1日の患者さんが1人ということもあり、その後も、今月中に売り上げが伸びなければ、資金がショートしてしまい、薬局を閉めなければいけないというピンチもありました。なんとか乗り越えた後は、次第に認知が広がり、ありがたいことに現在では、毎日患者さんがいらっしゃいます。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

処方箋のいらない薬を提供する薬局です。「病院に行かないと薬は買えないのでは?」と思われる方もいらっしゃいますが、実は処方箋がなくとも買える薬はたくさんあります。ちなみに、アメリカではドラッグストアで薬剤師と話して、症状に合わせて薬を提案させる流れが一般的です。もちろん、医療と薬に関する知識が求められるため、処方箋通りに薬を提供するだけの薬局にいたときの方が仕事は楽ですが、患者さんとのやりとりを含め、薬剤師としてのやりがいを常に感じられる仕事ですね。もちろん、症状によっては病院の受診を促すこともあります。地域医療のハブとなれるよう、周辺の医療機関の情報提供も行っています。


身近な健康相談先を目指して

どんなお客さまが多いですか?

忙しくてなかなか病院に行く時間を作れないビジネスパーソンが多いですね。今飲んでいる薬をお持ちいただき、「もっと効く薬はありますか?」と相談されることや、軽い病気の症状を伝えられ、「何か良い薬はありますか?」と相談されることもあります。年齢としては20代~60代まで幅広くご利用いただいています。男女比が4:6と、少し女性が多めですが、これはビタミン剤やアンチエイジングに効果のある薬を扱っていることも影響していますね。美容サロンなどで提供されている薬のうち、ウチの薬局で扱っているものは少なくありません。特に美容系では、複数の効果を持つ薬を提供していることが多く、症状によってはもっと効果のある範囲を絞った薬を提供した方が良いこともあります。効果の範囲を絞ることで、薬の効き目を向上させられるうえ、値段が安くなることもあり、とても喜ばれています。「処方箋をもらった方が安いのでは?」と質問されることもあります。確かに同じ薬であれば、病院へ行き、処方箋をもらい、薬局で購入した方が割安なものはありますが、通院にかかる手間と時間を考えると、ウチの薬局の方が「おトク」と言う人は多いですね。

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

薬局にいる薬剤師と事務スタッフには「親切、丁寧に接客すること」を徹底してもらっています。処方箋なしでの薬の販売は、合法であるにも関わらず、広く世の中に知られている訳ではありません。そのうえ、接客態度が悪ければ「何か良くないことをしているのでは?」と勘繰られることになりますから、薬剤師であり、販売員であることをしっかり意識して対応しています。繰り返しとなりますが、私はこの仕事に非常にやりがいを感じており、スタッフにも志の高い方が集まっています。薬剤師の力と価値を100%発揮できる環境をこれからも整えていきます。また、国は“かかりつけ医”を持つことを薦めていますが、私たちの薬局が、その前段階として、健康相談の最初の窓口になれるよう取り組んでいきます。コンビニよりも数が多いと言われる薬局の中で、処方箋なしのスタイルを取っているものはほとんどありません。処方箋なしという病院との利害関係のない、フラットな薬局として、これからも患者さんにとって、もっとも身近な健康相談先であり続けたいと考えています。



インタビュー後記

高齢化社会が進み、医療費の負担が国の財政に大きな影響を与えている。制度を維持するために、一人でも多くの人が、病院へ行く前に、自分の身体を自分で治す取り組みが求められている。その効果的な方法の1つは、体調不良を感じたときに「Grand薬局」へ相談することだ。

お問い合わせ

名前:GrandHealth株式会社

住所:東京都港区浜松町2-2-15浜松町ダイヤビル2F

会社HP:https://grand-health.jp

薬局HP:https://grand-pharmacy.com

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。