まちの仕事人インタビュー
障がいを越えて一歩踏み出す勇気を
株式会社EiU 代表取締役 渡邊佑 (わたなべ ゆう) さん インタビュー

1986年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、京セラのグループ会社に入社し、中小企業のコンサルティング業務に従事。2016年、経営者向けのコンサルティング+コーチングを事業とした「合同会社Coaching 4U」を設立。2023年、就労障がい者向けのキャリア支援のためのビジネススクール&コミュニティを事業とする「株式会社EiU」を設立。

強みを活かして障がいを乗り越える

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

大学卒業後、“日本を元気にしたい!”という想いから、京セラのグループのコンサルティング会社に入社しました。今の仕事につながるきっかけは、独立後中小企業のサポートを続けていたときに、坂本光司さんの著書『日本で一番大切にしたい会社』と出逢ったこと。“人を大切にする経営”という話の中で、高齢者や障がい者など、いわゆる社会的弱者の雇用について書かれていたことが、非常に印象的でした。ご縁をいただき、坂本光司さんが主催されている経営者塾に通うことになり、障がい者雇用を積極的に行っている企業の話や、障がい者に関する法律、雇用の現状について調べることで、自分の中でイメージが膨らんできました。「自分でも何かできることはないか?」と思い、コロナ禍のタイミングでスタートしたコーチ育成をするプログラムで障がいや難病を持つ方を無償で受け入れる取り組みを始めました。受講生を募集する中で、紹介で知り合ったのが進行性の筋ジストロフィーを患っていた小澤綾子さん。彼女と出会って最初の印象は、“社会的弱者”という言葉が、全く当てはまらないと感じるほどに、エネルギッシュで、アクティブな方だったことです。そのことから、世の中が障がいのある方を社会的“弱者”と捉えてしまうのは「短所にフォーカスするから」ということに気づきました。その後も無償で受け入れる取り組みは続けていましたが、スクールに参加された障害をお持ちの方は、最初は多少自身がなかったとしてもコーチングの学びを通じて自身の強みを存分に活かし、活躍される方ばかりでした。その力強く生きる姿を見て、「強みに障がいは関係ない」ことを確信。もっと、力になりたいと考え、2023年に就労障がい者向けのキャリア支援のためのビジネススクール&コミュニティD-BizCollegeを事業とした「株式会社EiU」を設立しました。

仕事の特徴はどのような点にありますか?

運営している『D-Biz College』は、コーチングをベースとしたキャリアスクールという側面とコミュニティの側面を持ったサービスです。月1万円のサブスクリプションで、『eラーニング』『グループセッション』『個別セッション』『コミュニティ』の4つを軸に受講生が前向きに生きるサポートをしています。『eラーニング』では、目先のスキルではなく、ビジネスに対する視野や視座が高まるコンテンツを用意しています。『グループセッション』では、月2回・各回2時間のセッションとなっており、前半1時間は、参加者がパフォーマンスを高めるために自身のマインドの使い方を学ぶ内容(セルフコーチング)となっており、後半はそれぞれの近況や挑戦、悩みを共有しプロコーチからコーチングを受けます。様々な障がいを持つ人が、その人なりの課題の乗り越え方、考え方を話してくれるため、代理体験として非常に有意義な時間となっています。参加者は、毎回10名ほどですね。『個別セッション』は、プロコーチから一対一で直接セッションを受けられる時間となっております。『コミュニティ』では、オンライン上の交流、オフ会イベントな運営や受講生同士が交流出来る場づくりを行なっています。

障がい者の活躍が会社を底上げする

どんなお客さまが多いですか?

現在、首都圏から関西圏の方まで、広い地域の方にサービスをご利用いただいています。年齢としては20代後半から30代を中心に、上は50代まで。性別としては男女が半々ですね。親御さんや、友人からの紹介で、弊社のサービスを知り、お問い合わせいただく方がほとんどです。最近では、サービスに関する発信を見たという人が少しずつ増えています。現在は、就労中の障がい者の方ばかりですが、学生など社会に出ていなくとも、サービスの利用は可能です。また、最近は、国の方針で障がい者雇用をしたものの、社内のサポート体制が十分ではない企業や、定着しないとお困りの企業からのお問い合わせが増えています。そもそも、一般の方であれば、身内や周りの人にいない限り、障がいがある方と接する機会は、それほど多くありません。だからこそ、サポートの仕方が分からないのです。一方で、障がいがある方と健常者が一緒に働くことには、会社の生産性を高めるポテンシャルが隠れています。障がいがある方が活躍することで、その姿を見て刺激を受けた健常者の生産性が上がるのです。


仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

元々、稲盛和夫さんの考えに強く共感して、京セラのグループ会社へ入社しました。いくつも心に刺さる名言がある中で、今は『利他』という言葉を特に大切にしています。「世のため、人のために尽くす」という意味で、私の活動の指針となっています。まずは、多くの人に素晴らしいロールモデルがいることを知ってもらいたいですね。例えば、これまで全盲であれば、あん摩マッサージ指圧師や、はり師を薦められることが多かったと思います。しかし、全盲でも経営コンサルタント、弁護士、システムエンジニアとして大活躍している人はいます。障がいがある方は、世間からの見られ方や、関わられ方の影響で、自分のことを過小評価したり、遠慮がちな考えを持つ方が多いです。しかし、そんなことは全く考えなくて良いのです。キャリアスクールやコミュニティを通して、社会で活躍する就労障がい者に出逢い、「こんなことも出来るんだ!」と感じて、一歩踏み出す勇気を持ってもらいたいですね。また、母校の早稲田実業高校には、『去華就実』という校是があります。これは“外見の華やかさに心を奪われるのではなく、内面の豊かさや知性、社会に貢献できる実践的な能力を身につけること”を意味している言葉です。これからも、謙虚にしておごることなく、障がいのある方の可能性を発揮するきっかけづくりと、その周辺に関わる人や企業のサポートに、全力を注いでいきます。

インタビュー後記

野茂英雄が道を切り開いたことで、現在のメジャーリーグにおける日本人選手の活躍がある。そして今、渡邊さんは、活躍する就労障がい者を増やし、新たな道を切り開く。それは近い将来、必ず日本を元気にする力となる。

お問い合わせ

名前:株式会社EiU

住所:東京都墨田区江東橋4-27-14楽天地ビル3F28号室

HP:https://d-biz-college.jp

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。