Photo:長谷部ナオキチ
東京上空を飛行する羽田新飛行ルートには
あまり知られていない問題移転や課題がたくさんあります。
騒音問題は?
地価にも影響がある?
危険はないのか?
様々な観点から警鐘を鳴らしている
品川区議会・都民ファーストの会の
筒井議員にお話を伺いました。
空から死体が落下!? 都心上空ルートへの懸念
高木 優一:羽田空港の発着を増やすために、東京上空を飛行機が飛ぶ…ラジオでお話いただいた内容は、都議会でもずっと議論されていたのですか?ニュースにも出ていましたが。
筒井ようすけ:2015年位からですかね、本格化したのは。都議会でも区議会でも議論されてきました。
高木 優一:これ、増やさなきゃいけないのは基地も関係してますか?
筒井ようすけ:それも確かにあるかと思います。大きいのは国際線を増便したいんですね。都市ランキングというのがあって、森記念財団都市戦略研究所というシンクタンクが、今は空港から都市部への交通アクセスが悪く、それを上げなきゃいけないと。いろいろ検討した結果、都心の上を通るしかないという結論に至りました。
高木 優一:なるほど。
筒井ようすけ:ちょうどその後オリンピックも決まりましたし、焦って…私から言わせれば拙速に決めたという感じですね。
高木 優一:羽田の発着はどのくらい増えるんですか?
筒井ようすけ:3.9万回、国際線が増えるんです。
高木 優一:1年ですか?
筒井ようすけ:はい、年間です。大したことないと思われるかもしれませんが、最終的には100万回くらいいきたいんですよ。
高木 優一:100万!? 羽田に100万回ですか?
筒井ようすけ:ニューヨークやロンドンはそれを上回っていて、それに対抗しないといけない、ということで、やろうとしています。だから新しい滑走路も作ろうとしていて。第5滑走路…
高木 優一:第5滑走路できるんですか?
筒井ようすけ:はい、それはもう既定路線だと思われます。そうすると、それこそ麻布十番だとか、慶応大学の三田キャンパスの上だとか、つまり六本木の上を通るわけですが、大丈夫なのか?という話ですよね。不動産価格とか。
高木 優一:ですよね。
筒井ようすけ:これ考えている人たちは我々と感性が違って、まぁ3時間だから大したことないだろう、落下物もそんなに落ちないだろう…という考えなんです。
高木 優一:え..けっこう安直と言うか、危なくない?実際に落下物なんかはあるんですか?世界的に見てどうなんでしょう?
筒井ようすけ:ありますねー。ロンドンなんかは死体が落ちてきたとか。
高木 優一:え?は?死体?
筒井ようすけ:密入国者がいるじゃないですか。荷物置き場かどこかに隠れてたようなんですが、冷凍室みたいなところに入って絶命し、車輪を出したときに落下した、と言われてますね。
高木 優一:シャレにならんですね…でもそうか、麻布十番の上を通るということは、そのあたりからもう車輪を出さないといけないわけですね。
筒井ようすけ:車輪はですね、だいたい高度600mあたりと聞いています。なので広尾とか、もう少し北で新宿界隈でしょうかね。
高木 優一:なるほど、ともかくそのあたりでもう出し始めるわけですね。
筒井ようすけ:みたいですね。落下物について言えば、車輪を出すときが一番危ないんですね。成田空港の場合は地元との協議で、着陸前に海の上を旋回して、落ちうるものをせんぶ落としてから着陸することになっているんです。だからあんまり被害が出てないんです。
高木 優一:確かに聞きませんよね。
筒井ようすけ:今回羽田は埼玉県から入ってきますので、車輪出しは絶対に都心上空でやらなきゃいけないんです。
高木 優一:大丈夫なんですか?
筒井ようすけ:それがいちばん私の懸念するところでもありますね。
品川区議としてのスタンス
高木 優一:先生はこの問題にどういったスタンスで議論されておられるんですか?
筒井ようすけ:私は騒音の問題もあるし、落下物の危険もあるので、反対の立場ですが、ただ単に反対ではなく、新しい空港を作るなど代替案も出した上での反対です。
高木 優一:都民ファ全体でそのスタンスなんでしょうか?
筒井ようすけ:いや、それがですね、現在の東京都の政策ブレーンが先程延べた森記念財団の方たちで、交通アクセスを良くしなければいけない、ということで推進の立場なんです。ただ私は、やはり地元の議員として反対の立場から疑義を呈してきました。それに関しては党も認めてくれています。
高木 優一:品川区議ですもんね。
筒井ようすけ:はい。地元の区民の声は、やはり反対が多いので。品川区議会では全会一致でこれを見直してほしいという決議を出しています。
高木 優一:でももう決定なんですよね?試験飛行もあって…コロナで飛行機が減ってますが、3日後からは東京上空の新ルートが使われる…(この対談は2020年3月26日)
筒井ようすけ:はい、もう昨年の8月8日に決定はされていて、自治体の意見は聞き入れてもらえませんでした。
高木 優一:試験飛行では問題なかったんですか?その、落下物とか…
筒井ようすけ:それが…豊島区あたりで落下物を見た親子がいたと、ある週刊誌に出ていたんですが…
高木 優一:えっ!?
筒井ようすけ:国交省が調査したのですが、結局そういった事実はなかった、と発表されたんだったかな?でも氷だったら溶けちゃうのでわからないですよね。
高木 優一:恐ろしい…
筒井ようすけ:落下物は本当に危ないですよ。実際大阪では本当に落ちてますからね。
高木 優一:本当ですか?
筒井ようすけ:はい、オランダ空港の飛行機からパネルが落下したという事故がありました。落下物は本当にありえますね。国交省もゼロにはできないと認めてるんですよ。
高木 優一:マジですか!? 恐いですよ。
筒井ようすけ:本当です。我々議会であれこれ質疑をしたのですが「ゼロにするように取り組みます」という回答でした。でも絶対にゼロにできないですよ。発生してますからね。
環境問題、SDGsの観点から考察する
筒井ようすけ:川崎の殿町のあたりも通りますが、コンビナートがあるので、昔協定でこの上空は飛ぶなということになっていましたが、それも今や昔の話だと。落下物はそれほど心配ないってことで、協定は反故にされました。
高木 優一:そうなんですか!? そうすると、区議会とか都議会だけでなく、川崎も来るという話ですか?
筒井ようすけ:はい、川崎きますよ。ネットで川崎市議会議員さんが動画をアップしてますが、メチャクチャ音がすごいです。やはり離陸のほうがブァーっと轟音出ますから。
高木 優一:そうか、着陸だけではなくて離着陸両方ルートが変わるわけですか?
筒井ようすけ:そうですそうです。離陸はこちらの川崎の方、殿町のコンビナートの上を通るんです。
高木 優一:今まではどんなルートだったんですか?
筒井ようすけ:海から入って海に出るような感じですね。これまで羽田空港は都心の上は絶対に飛ばさないってなっていたんですよ。パンフレットにも説明が出ていたんです。危ないから。
高木 優一:これ、廃案になるってことは、もうないんですか?
筒井ようすけ:うーん。事故が起こらない限りおそらく無理でしょうね。
高木 優一:でも起きてからじゃぁ..だから言ったじゃないか、ってことになりますよね。
筒井ようすけ:なりますなります。だからそのために私はいまもこの問題に取り組んでいるんですよ。環境の面から見てもですね、SDGsの運動が高まってくれば、再考もあるのではと期待しています。
高木 優一:SDGs?どういった理由ですか?
筒井ようすけ:イギリスのヒースロー空港でも新しい滑走路の話があって、実はボリス・ジョンソンさんは昔、首相になる前は反対していましたし、訴訟になり、今年環境団体が勝って、新滑走路建設差し止めということになりました。
高木 優一:実際にやってみて、なんだか最近うるさい、ということになったら、そういう運動起きませんか?いまはまだリアルに体感してないから、議論になってないだけで。毎日ゴーゴーいったら、ふざけんなよって話に。
筒井ようすけ:実はもうなってますね。この前の実機のテスト飛行で7日間飛ばしたんですよ。時間帯は15時から19時で南風が吹いたときだけなんですけど。知り合いの渋谷の社長さんが家で仕事をしている方なんですが、今までこの問題には何も言ってこなかったけれどもう耐えられない、と。場合によっては訴訟します、とおっしゃってます。
高木 優一:そういう人出てきそうですよね。
筒井ようすけ:恵比寿ではすでに訴訟に向けて動いているグループもあります。
高木 優一:そうなんですか!?
筒井ようすけ:はい、いまコロナのこんな状況もありますし、うまく行けば裁判で勝つかもしれません。
山積みの問題に代替案で挑む
高木 優一:もうそんな動きもあるんですね…。ところで羽田の発着が増えた場合、成田はどうなるんですか?
筒井ようすけ:成田も増やすんですよ。もう新しい滑走路も作りました。時間も一時間伸ばしましたし。
高木 優一:成田も増やして羽田もそれだけやらないと、もう間に合わないという状況になっていくんですか?
筒井ようすけ:だからニューヨークとロンドンに追いつきたいんですよ。
高木 優一:あと仁川にも勝ちたいんじゃないですか?明らかに負けてますもんね。
筒井ようすけ:そうです。それもある。いわゆるハブ空港を目指したいんですよ。仁川に追いつけ追い越せと。航空行政が遅れてるんですよ。
高木 優一:それで離発着増で都心上空を通る新ルートですか?
筒井ようすけ:学校の上も通ります。
高木 優一:危ないなーそれは。
筒井ようすけ:でですね、防音工事は学校などはやるそうです。でも一般住宅はやらない。法律上する必要はないそうです。
高木 優一:そうなんでしょうけど、不動産の価値に影響しますよね。我々も昔はそんな必要がなかったのに、ルートに物件がある場合は、重要事項説明で上空を飛行機が通ると伝えなければいけなくなってきています。
筒井ようすけ:そうですね、すでに品川シーサイドのマンションではもう説明しているみたいですね。
高木 優一:話さないとまずいです。訴訟になりますよね。羽田ではないんですが、神奈川県の大和や綾瀬などの物件を取引したときには、座間の米軍キャンプがあるでしょ?ものすごい音なんですよ。たまたまその日は飛行がなかったんですが、説明資料を付けてお伝えしなければダメです。塚あたりでも海自の飛行機や立川に行く貨物機なんかがかなり頻繁に飛んでるんですよ。
筒井ようすけ:それはすごい音がしそうですね。
高木 優一:音もそうなんですが、結構近いと言うか、かなり大きく見えて圧迫感があります。飛行機のお腹が見えて書いてる文字まで読めますからね。そのイメージで、あれが六本木だとか品川の住宅街ってことになったら…今はただ気づいていないだけで、実際に飛んだら、何やってんだよ、ふざけんなってことになりそうですよね。
筒井ようすけ:ですね、広尾上空なんかも飛びますから。
高木 優一:都心ど真ん中を突っ切るんですね。
筒井ようすけ:はい。山手線縦断ですよ。AとCのルートがありAは新宿駅、渋谷駅、目黒駅、大崎駅、大井町駅。Cは品川駅や天王洲アイル駅など。でBルートを下ろすとなると川崎の…先ほどお話しした殿町上空。コンビナートの上。
高木 優一:いやこれ、意外と知られてないですよね。東京だけじゃなく川崎影響大きいですよね。
筒井ようすけ:そうですよ。落下物がコンビナートの上で落ちて炎上する、ということにならなくもない。
高木 優一:そんなの映画の世界ですよ。
筒井ようすけ:いやまったく。保守系の人からもそうした危惧は指摘されています。あとテロも。
高木 優一:テロですか?
筒井ようすけ:はい、9.11みたいなことが起きるんじゃないかとか。ドローンも危ない。
高木 優一:問題山積みじゃないですか!
筒井ようすけ:問題だらけですよー明後日(3月29日)から1時間に44機飛ぶ予定でしたが、コロナの影響で5機くらいに減るのでは、と言われてますが…
高木 優一:それでもそんなに飛びますか?コロナで欠航続出ですが。
筒井ようすけ:国内線でも使うんですよ。全体を増やす影響で。
高木 優一:知事がロックダウン出せば飛ばなくなるでしょうけどね(苦笑)
筒井ようすけ:ですね。でもこれが収束したら必ず復活しますよ。オリンピックも延期が決まりましたが、それで今やめるとはならないですね。
高木 優一:でしょうね。今後先生はどういったお立場でこの問題に取り組んでいかれる予定ですか?
筒井ようすけ:先日も議会で質問したばかりなんですが、まずは代償措置ですね。防音をちゃんとやってほしいとか。
高木 優一:大事ですね。
筒井ようすけ:地域振興金というのがあるんですが、800万円くらいなんです。それで立会川の地域振興をと言ってるんですが、額が違うんじゃないかと(苦笑)
高木 優一:たしかに800万って…(苦笑)
筒井ようすけ:ね。まずはメリットと言うか、区民の方のためにできることをやらないと。飛んでる間は。区と区議会も「脱固定化」と言って、このルートを永遠にやらないでほしいという意見を表明しています。
それでこれは私の案でもあるのですが、木更津沖に新しい滑走路を作るという案もあったんです。
高木 優一:ほう、木更津ですか。アクアラインですね。
筒井ようすけ:はい、アクアラインで都心にアクセスできますからね。それで根本的な解決ができると国交省の外郭団体も言ってるんですよ。茨城空港やそれこそ成田をもっと活用したり、静岡空港なども使えるはずです。そうやって代替案を提示してやっていきたいですね。あとはSDGsの環境面からも問題提起していきたいです。
高木 優一:便利ばかりを追求すると、やはり弊害が出てきますね。
筒井ようすけ:ですね。今回の増便については百歩譲ったと仮定しても、発着回数をニューヨーク、ロンドンを超える120万回ということになると、羽田だけに頼るのは限界があると思うんです。抜本的な解決にはなりません。
高木 優一:やはり新しい空港が遠くない将来に必要そうですね。
筒井ようすけ:それと地方創生という点でも、もっと地方空港を活用すべきかと。
高木 優一:そしてSDGsですね。
筒井ようすけ:はい、ICAO(イカオ)という国際民間航空機関というのがあって、日本も参加しているのですが、CO2削減を2016年に決めているんです。NOx(窒素酸化物)やPM2.5なんかが飛行機によって増えるんじゃないかということも言われているので、そのあたりからも資料や意見を出していこうかと思っています。
高木 優一:何かが起きてからでは遅いですからね。
筒井ようすけ:全くそのとおりですね。
高木 優一:今日は長時間に渡ってラジオ出演と貴重なお話をありがとうございました。先生のご活躍に期待しています。
筒井ようすけ:いえいえ、発言の場を与えていただきこちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
筒井ようすけ プロフィール
筒井ようすけ
品川区区議会議員 都民ファーストの会
1979年品川生まれ、品川育ち。
学習院大学法学部卒
日本大学法科大学院卒
法務博士/貿易会社役員/太陽光発電アドバイザー
ホームページ https://tsutsui-yosuke.jp