今回のゲストは若手弁護士の本間正俊さん。

東大時代はアメフト一色に染まっていたというだけあって、がっちりした体型で見るからに体育系。

でも見かけとは裏腹に、実際は依頼者の内側にできる限り寄り添うことが身上の、心優しい弁護士です。


Photo:長谷部ナオキチ

話をするだけではなく、話を聴くこともアナウンサーの役割

高木優一:今日は本間さんが東大アメフト部ご出身ということで、アメフトのメッカ「富士通スタジアム川崎」を対談場所に選びました。


本間正俊:ありがとうございます。東大法学部卒というより、アメフト部卒といった方がしっくりきますね。学生時代はアメフトばかりやっていましたから。



高木優一:先生は登戸で地域に非常に密着した活動をされていますね。地元の消防団に入られている弁護士はちょっと珍しいと思います。


本間正俊:単純に好きなんです。昔住んでいたマンションの自分の部屋から消防団の詰所が見えて、漠然とした憧れがありました。消防団というと根っからの地元の人しか入れないという先入観があったのですが、去年の夏に事務所を立ち上げたのをきっかけに紹介していただき、今も訓練に参加しています。

また、小さいころからお祭り好きで、運営に参加したい、御神輿を担ぎたい、といった漠然とした想いがありました。こちらも同じく紹介していただき、昨夏から早速お祭りのお手伝いをさせていただきました。



高木優一:根っからの地元の人でも、新しい世代の人たちの中には、消防団なんてやりたくないという人もきっといますよね。それが、言葉は悪いですが「よそ者」の人が手を挙げて「やりたいです」って言ってくれる。これって、結構有難いことかもしれませんね。


本間正俊:両親が北海道の出なので、根っからの地元といえるような地元が無いんです。むしろ「よそ者」を受け容れてもらえて、とても嬉しいです。

仕事になる・ならないとは関係なく、基本的にはどんな相談にでも応じるというスタンスで、相談者に寄り添うことからスタートとすることを常に意識しています。確かに、弁護士に相談すると結構なお金がかかってしまうのではないかと構えてしまう方もおられると思います。ですので、正式に仕事を頼むのであればお金がかかるだろうけれど、少しぐらいのお悩み相談なら大丈夫だ、という感触を持っていただきたいと思っています。こちらが大丈夫ですよと言っても最初から気軽に相談はしづらいとは思いますので、まずは仕事とは関係なく仲良くなって「実はね」と気軽に話しかけてもらえる関係を築けたら最高じゃないでしょうか。

地域貢献・地域密着と言っても、仕事やお金に結び付けようと躍起になっていたら長続きしないと思います。それに、単に「金を稼ぐための仕事」という感覚だけで弁護士をやっていても楽しくないですよ。弁護士業ももう5年目に入り独立もしましたから、ある程度基本的な仕事の流れは見えてきていると思います。それに加えて、地域の中で「やりたいことをやれた、役に立てた」という満足感を得たいですね。「やりがいのある仕事をする。その結果それなりに生活もできる」という生き方を目指したいです。



全国のどこにでもある、コンビニやスーパーのような事務所を目指すのではない

高木優一:アメフトをやられていたことが、今の弁護士の仕事に役に立つということはありますか?


本間正俊:アメフトはまだまだ日本ではメジャーなスポーツではありませんが、要はボールを投げて、取って、走るという球技としての基本の動きがある中で、私が担っていたポジションはボールに触わると反則なんです。そのくらいポジションごとに専門的に役割が分かれていまして、一人でもサボると全体の機能がすぐに低下してしまいます。みんなが有機的に動かないとだめな競技なんですね。



高木優一:なるほど。


本間正俊:今の仕事にあてはめると、私のような法律家がブロックを専門的に行い、他のメンバーは何をやらなければならないのかを見極める、関わり合う人たちの位置関係がすごく見えやすいということはあります。誰が何をすべきかが自然にインプットされるのです。全体の絵を描いて、自分がどこをやるのか、ここは申し訳ないけれど弁護士の領分ではないので相談者さん自身が頑張らないといけないところですとか、この部分は税務の専門家が必要ですねとか、高木さんのような不動産のプロを呼びましょうとか、そのような、依頼者のために自分は、または別のスタッフは何をすべきかという位置関係を的確に把握する感覚はアメフトによって磨かれたと思います。



高木優一:弁護士に対して「社会的地位が上。敷居が高い」という世間的なイメージはまだまだ根強くあるとは思いますが、私が個人的にいかがなものかと思うのは、テレビのバラエティ番組などに出て、弁護士という立場であるがゆえにいじられている。あれは観ていて気分が良いものではありませんね。わざと弁護士の地位や価値を貶めているような気がします。


本間正俊:便利に使ってもらいたいと思う反面、コンビニやスーパーで物を買うような消費者的な感覚で来られると、やはり違和感があります。画一的なサービスの提供を廉価で求められ、こんなこともできないの、というような反応をされるとちょっと辛いです。


高木優一:私のビジネスでもそうなのですが、相談なんてタダでやってよ、みたいな風潮になってしまうのも嫌な感じがしますね。そこまでハードルを低くしたくないという気持ちはあります。



きること、できないことを、はっきりと提示する

高木優一:本間さんの目指す弁護士の方向性というのは、全国規模で広告を打って、スタッフをずらりと揃えて、何でも取り扱いますよ、というような大型規模の事務所がやるようなこととは違いますよね。


本間正俊:そうですね。広告など打たなくても、あそこにこの案件が得意な弁護士がいるよ、と人づてに紹介してもらえるようになりたいです。全国のどこでも均一的なサービスを実施するのではなく、そこにしかないサービスの提供と言いますか、ファミレスよりはミシュランに載る方を目指したいという感じですかね。もちろん自分でもファミレスはよく利用しますし、ファミレス的な弁護士に対するニーズもあると思います。ただ、裾野を広げすぎて流れ作業になったり、現場から離れたりしてしまうのは、自分の本意ではないんです。相談者の人生がかかっている案件を扱うわけですから、できるだけ自分自身が内側に入ってじっくり話を聞くことによって、初めて相手が本当に何を欲しているのかがわかるはずです。あまり商売上手とはいえないのでしょうけれども、そのようなやり方の方が自分に合っているし、きっと楽しいだろうなと感じています。



高木優一:それは我々の業界も同様です。規模を大きくするのはいい。でも大きくしたら、今度はなかなか小さくするのは難しいんです。簡単に人を切ることはできませんしね。


本間正俊:依頼の案件に対し、「お金になる・ならない」で判断するのが嫌だという気概は強くあります。「お金になる・ならない」の視点で依頼者を観てしまったら、依頼者の内側に入るなんてできるはずがありません。それよりは、この依頼者のために何かをしてあげたいという気持ちで接し、「ここまではできるけれど、ここから先はできません」との主旨をはっきり提示し、それでもお願いしたいという人に対し、親身になって仕事をする。もし仮に最終的には満足できる形で終わらなかったとしても、ありがとうございましたと言われる。そんな仕事をしたいです。



高木優一:まさに地域密着ですね。


本間正俊:仕事をしてお金以上のものを得ようというのですから、ある意味では贅沢な願いなのかもしれません


高木優一:なるほど、そういう見方もできますね。本日はありがとうございました。