
銀行員として働いたのち、モデルの世界へ足を踏み入れる。2003年に、グランドハイアット福岡で、スクールを開講。その後、研修・講演、マナー講師、ウォーキングレッスンなどを行う。3棟の賃貸住宅の設計・施工に関わったことをきっかけに新たな視点を得て、その後、ホテル・ブランド空間・サロン・店舗などの空間ディレクション・空間監修を行う。パリにも拠点を持ち、撮影会やリトリートを行う。直近、新サービスとして『空間診断』をスタート。
空間の美しさだけでは、人は選ばない

この仕事を始められたきっかけを教えてください。
銀行員として働いていたときに「美しいことをやってみたい」という静かな憧れから、モデルの世界へ足を踏み入れました。とても厳しい世界でしたが、歩き方、振る舞い、指先、目線の使い方など、身体表現一つで大きく印象が変わり、存在の輝きを生み出せることを学びました。欠点を隠すためではなく、魅力を引き出すために身体を動かす。この経験は、私の人生の核となっています。様々なタイミングが重なり、2003年にグランドハイアット福岡で小さなスクールを開講することに。スクールの修了パーティーで、生徒さんから手を握られ「こんなに意識が変わるなんて、思っていませんでした!」という言葉が、次への原動力となりました。スクールを始めて3年ほど経ったころから、企業研修や行政講演など活動の場が広がりましたね。研修を続ける中で気づいたことが「マナーは、形だけでは定着しない」ということ。マナーとは思いやりが形になったものです。人の優しさや思いやりが先にあることで、心地よい空間を生み出しています。その確信を得たのは、佐賀県のある地域一体の観光施設を視察したとき。同じ価格帯の施設でも、そこで働く人の言葉や空気はまったく違っていました。私は“その場にいる人の想いが、空間のエネルギーになる”と、はっきり感じたのです。その後、ご縁あって3棟の戸建て賃貸住宅のディレクションに関わったことで、空間ディレクション・空間監修の事業をスタートし、ホテル・ブランド空間・サロン・店舗などに携わっています。直近では、人と空間の両方を見つめてきた経験を活かし『空気診断』をスタートしました。

仕事の特徴はどのような点にありますか?
最新サービス『空気診断』は、人・空間・世界観を統合し、ブランドの空気を整えるための入口です。ここ数年、購入決定の主導権が、男性から女性に移っています。今後、商品やサービスを選んでもらうためには、男性が選びがちなスペックや効率よりも、女性が感じ取りやすい「なんとなく良い」という印象をもってもらう必要があります。“なんとなく良い”と感じさせる正体は『空気』。美しい建築は増えましたが、空間の美しさだけでは人は選んでくれません。そこで働く人の所作や、顧客の導線、ブランドの世界観が統合されることで、初めて“なんとなく良い”と思ってもらえるのです。ある地方に、エントランスに美しい螺旋階段を持つホテルがありました。建築家は、人や風の流れをイメージして設計したはずなのに、螺旋階段を利用する人はほとんどおらず、電話スペースやSNS用の写真スポットのように利用されていたのです。これでは、ブランド価値を高める良い空気は生まれません。SNSで誰もが発信できる時代、どれだけラグジュアリーな空間を作っても、サービスが顧客の期待値を超えていなければ、マイナスな投稿をされてしまうのです。『空気診断』のヒアリングセッションにより、空間や組織が持つ違和感を整理し“なんとなく良い”と感じさせるための、方向性をお伝えしています。

人・空間・ブランドを統合的に整える

どんなお客さまが多いですか?
『空気診断』については、ラグジュアリーホテル、レジデンス、ブランド、アパレル、ジュエリーなどの業界や、空間価値を高めたい企業や経営者からご相談をいただいています。空間ディレクション・空間監修の経験から、ラグジュアリーな空間は、3つの設計で成り立つと考えています。1つ目は、境界の先を別世界にすることで、空間によって人を整える“静寂”。2つ目は、見えない配慮により、人が空間を整える“調和”。3つ目は、人の流れにより空気を動かす“交流”です。これらをバランスよく保つことで、ブランドに合った空気を設計することができます。『空気診断』の後、課題を解決するために、人の在り方・所作、空間の印象や動線、ブランドの世界観の統合する『設計』、現場に入り、空気・動き・見せ方を整えながらブランド体験として完成させる『実行』、継続的に微調整を行い、自然に価値が伝わる状態へ定着させる『調整・定着』を行っています。

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。
空気を変えるために効果が大きい要素は、そこで働く人の意識を変えることです。そのブランドの価値観と、働く人自身の価値観を重ね合わせたうえで、考えるようにいただき「どうすることが、あなたの行動として美しいかを判断してください」と伝えることで、意識改革を促しています。弊社の拠点のあるフランスでは、子どもに対して感情を隠さず「怒っていい」という教育が行われています。日本人の国民性として、我慢していることに気づきにくいというものがあります。人に優しくするために、まずは自分自身がどうしたいのかを、自分で分かることの大切さを伝えています。空間と人のマナーを一体化させ、光の入り方や、風の抜け方から、接客の導線を再設計するこの仕事に、誇りとやりがいと持っています。私の活動によって「相手のことを想う」人が一人でも増えて、穏やかで豊かな社会への一助になると嬉しいですね。

インタビュー後記
空気を捉えるヒントは、ラグジュアリーホテルから学べると話す中原さん。アマン、パレス、グランドハイアット、それぞれ空気が異なるため、その中で自分の価値観に近い場所から学ぶと良いとのこと。もちろん、価値観に近いホテルを見つけるまで、全国を回ることは現実的ではない。やはり、中原さんに相談だ。
お問い合わせ
名前:株式会社由布企画
住所:東京都新宿下落合3-22-15-93
*ご相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。