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事業承継に伴う従業員の解雇について
(1年前の記事です) 掲載日:2023/05/19
私は都内で従業員10名の診療所を経営する医師です。法人成りはしていません。
高齢になったこともあり、医師である息子に経営を譲ろうと考えています。
そこで質問があります。私のクリニックの看護師のなかに1名、服務規律を全く守らない者がいます。遅刻も多く、患者からのクレームも複数あり、他の従業員からの改善の要求を幾度となく受けています。
これまで何度も面談し改善を促してきましたが、その兆しは見えません。
息子への事業承継において、その看護師との雇用関係を引き継がせたくありません。
そこで質問なのですが、事業承継においてその看護師だけ引き継がせないということは可能なのでしょうか。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。

可能ですが、法的紛争に発展する可能性がありますので、慎重に進める必要があります。
個人医院における事業承継においては、旧院長が旧診療所を廃止(閉院)し、新院長により新診療所を新規開業するという形をとります。
その際、旧院長が医業として形成した人・モノ・金を、新院長に引き継ぐことになります。
旧院長と従業員との間の労働契約は、事業承継を機に解消します。そして退職した従業員は、新院長に再雇用されるという流れになります。
旧院長との間の労働契約は解消されるので、理屈上、旧院長は退職金規程に従い、従業員に退職金を支払わなければなりません。
しかし、新院長の再雇用が前提とされていますので退職金の支払いは新院長の方に先送りするという取扱いもなされています。
なお、事業承継のタイミングで、従業員からすると厳しい意見になりますが、旧院長と新院長の協議により、特定の従業員を再雇用しないという判断も可能となります。
この場合、旧院長は当該従業員に対し退職金を支払うか、解雇予告手当を支払う必要があります。
しかし、それらを支払うからといって、当該従業員だけが再雇用されないわけですから、当該従業員との間の感情対立は避けられません。その結果、法的紛争に発展する可能性が高いのです。
したがって、事業承継を機に従業員を退職させたい場合は、事前に弁護士と進め方や証拠の残し方について協議をし、万全を期すことをおすすめします。
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