創業の経緯を教えてください
高校卒業後すぐに出産し、その後離婚。若くしてシングルマザーとなり、生活の安定と子どもの将来のために「手に職を」と考えるようになりました。家族の支えもあり看護学校に進学し、看護師の資格を取得。関東労災病院の呼吸器科に勤務し、病棟業務や夜勤も経験しました。
子育てとの両立を考え、次に選んだのが在宅看護の道です。地域の生活に密着し、信頼関係のもとで支援を行う在宅の現場には、病院とはまた違ったやりがいがありました。
訪問看護師として働く中で、もっと柔軟で安心して働ける環境を自分自身の手でつくりたいという想いが強まり、2021年11月に株式会社幸を設立。2022年5月には訪問看護ステーションを開設しました。
目指しているのは、質の高いケアを提供するために、働きやすい会社をつくることです。

どのようなことを大切にされていますか?
会社の理念は、「幸に関わるすべての人が幸せである会社」です。ご利用者はもちろん、スタッフやそのご家族、関係者すべての人にとって、温かく、信頼される存在でありたいと考えています。
現在のスタッフの約8割は子育て中の方です。急な欠勤や学校行事など、子育てと仕事の両立が求められる中で、互いに補い合える仕組みづくりに力を入れてきました。たとえば、管理者の受け持ちをゼロにしたり、リーダーの訪問件数を調整したりすることで、誰かが休んでもチーム全体でカバーできる体制を整えています。
また、iPadを用いた情報共有も徹底しており、初めての訪問先でも安心して支援が行えるよう、細かな情報まで全員で把握できるようにしています。
その結果、離職率は業界水準と比べて大幅に低く、スタッフが安心して長く働ける職場となっています。

幸の特徴を教えてください
「その人らしく、自宅で過ごすこと」を第一に考えた訪問看護を実践しています。ご本人やご家族の思いや生活背景に寄り添いながら、必要な支援を柔軟に設計しています。
訪問看護は、治療の場ではなく“生活の場”への支援です。お薬の管理、健康観察、リハビリ支援からターミナルケアまで、ご利用者一人ひとりの暮らしに合わせた対応が求められます。
社内では定期的にミーティングを行い、「この方にとっての幸せとは何か?」を中心に方針を確認し合っています。医師やケアマネジャー、訪問入浴、ヘルパーなど多職種との連携も重視しており、包括的で切れ目のない支援を実現しています。
今後目指されていることを教えてください
現在は、横浜市神奈川区・南区、川崎市の3拠点を展開しています。今後は2028年3月までに10拠点体制へと拡大し、年商10億円規模の経営基盤を目指しています。
この目標は、規模を追うことが目的ではなく、スタッフの雇用と待遇を守り、質の高いケアを安定して提供し続けるために必要な基盤づくりです。経営が安定することで「安心して働ける環境」が継続し、それが結果的にご利用者へのサービス品質にもつながると考えています。
拠点の展開は、車で20分圏内に抑える方針とし、地域密着型の支援体制を維持したまま、横浜・川崎エリアでのネットワーク強化を図っています。
「横浜・川崎で訪問看護といえば“幸”」と自然に思い出してもらえるような存在を目指し、「最高のケアは、最高の職場から」という信念のもと、これからも地域とともに歩んでいきたいと考えています。

インタビュー後記
働きやすい環境こそが、質の高いケアを生み出す——その信念のもとで生まれた株式会社幸。代表の森永さんの言葉からは、現場の声に耳を傾け、スタッフと利用者の双方にとっての「幸せ」を本気で追求している姿勢が伝わってきました。これからも地域の中で、温もりある支援が広がっていくことを願っています。
お問い合わせ
株式会社幸
〒221-0061 神奈川県横浜市神奈川区七島町112-5 パレス日生1階
TEL:045-859-9040
FAX:045-859-9046
HP:会社概要|訪問看護ステーション幸の運営情報
*ご相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。