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店主の羽生です。

今日は、アエル出店中。販売はスタッフに任せて、その間にボディメンテナンスへ行ってきます。

その前に。

ちょっと思うことあり、私のパンについての考えを二つ簡単にお話しします。まず、酵母についてです。

萌芽のパンは大きく分けて、二通りの製法があります。

プライスカードに酵母の名称が記載されているパンは自家製酵母で、それ以外はイーストです。

みなさんはイーストに対して、どんな印象をお待ちでしょうか。
考え方は一人一人異なり、それでいいと私は思います。

ですので、ここから話すのはあくまでも私個人の見解とご一読いただければと思います。

イーストは人工的に生産されたものだから、自家製酵母より味わいが落ちる。そんなイメージがあるでしょうか。

私は、そう思いません。
何を使用するかではなくて、問われるのは製法です。

何故かというとイーストも酵母の一種であり、自家製酵母と何ら変わらないからです。

イーストはパンの発酵に適した単一酵母を自然界から採取し、工業的に純粋培養しているだけであって。そもそも、酵母菌を人工的に生み出すのはできないのです。

イースト、自家製酵母、市販の天然酵母。
結局のところ、どう扱うかで味わいが決まると思います。

私はかつて、フランス大使館のパン職人からワンツーマンで指導を受けた経験もありまして。伝統的製法で焼くパンも好きですし、自家製酵母ならではの面白味もあります。

要するに、自分が仕上げたいパンの最終像によって酵母を使い分けているわけです。

次にお話するのは、萌芽のパンで大切にしていることです。

一言で言うと、テスクチュア。

視覚、触覚、嗅覚の感覚を刺激することも基本としていまして。

一口目が美味しくても、食べ進むうちに飽きたりしないか。
頬張る前から、美味しい予感を抱かせるパンにできないか。
味は美味しくても食べにくい、あるいは大きすぎないか。

お買い求めいただくお客様に思いを寄せて、こういうことも追求しています。

例えば、あんバター。
単調な味わいにならないよう、食感と香りで変化を持たせる。
カロリーを考えると、どのくらいのサイズだと手に取りやすいか。

萌芽のパンは全て、何かしらの一工夫を加えています。

追求したいのは“瞬間的な美味しさ”ではなく、“記憶に残る美味しさ”だからです。

記憶を司る脳に直接刺激するのは嗅覚で、このパンだとどんな香りと組み合わせるのが相性いいだろうか。そういうことも考えるのは実に面白いですし、食材の効用からなる栄養面も意識しています。

萌芽は独創的なパンを焼きたいわけではなく、先に述べたことを追求した結果でしかないわけです。

美味しさの決め手となるのは、母体であるパン生地そのもの。
当たり前のことですが、結局のところはそこに尽きるんですよね。

私は常勤講師の仕事で、仕込みに充てられる時間的制限があります。自家製酵母のパンだけだとどうしても管理が行き届かない場面もあり、そこでイーストを使っています。

出勤前に仕込んでおき、昼休みに手を加えて、退勤後に仕上げる。
そういう計画で日々管理していまして。休みなしのスケジュールで出店できるのは、そういうことです。

話が長くなりました。

どんな状況においても、現状の自分でやれることを最大限に考えることを職人の軸としたい。萌芽はそんなパンであること知っていただけらと、なんとなくお話しました。

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59 いいね! ('24/11/26 12:01 時点)