まちの仕事人インタビュー
言葉と色で自己実現や目標達成をサポート
校正者 館脇 成美 (たてわき なるみ) さん インタビュー


京都出身、板橋区在住。1996年生まれ。

現在は都内を中心に活動するフリーの校正者。「kotonaru」という名前で言葉と色を使った自己表現をサポートする事業を展開。


趣味は毎年フルマラソンに参加することを目標にランニングをすることや、普段の仕事が座っている時間が多いため、ヨガやフットサル、登山など、体を動かすアクティビティでリフレッシュを心がけている。

今までの職歴を教えてください

関西の大学を卒業して、その後上京しました。

上京後は、日本と中国の文化交流を促進する民間団体で事務職員として働いていました。


具体的には、日本と中国の文化交流の一環として、日本の文化界で活躍する方々で代表団を編成して中国に派遣し、私たちも随行してアテンドをしていました。


反対に、中国側の代表団が来日されたときは、その方々のアテンドや接待を担当していました。


また、その関連事務、さらに通訳や翻訳なども手掛けていました。この仕事には約2年半ほど従事しました。


その後、校正プロダクションに転職し、校正者としてのキャリアをスタートさせました。


現在は出版社などと契約して、校正・校閲の仕事をしています。



現在のお仕事(校正・校閲)はどのようなお仕事なのですか?

現在は、おもに書籍などの紙媒体の出版物やウェブページなど、さまざまなコンテンツやジャンルの校正・校閲を担当しています。


具体的には、ライターや編集者が執筆した文章の誤字脱字の確認、事実確認が必要な箇所のファクトチェックなどを行っています。


また、最近ではポリティカル・コレクトネスなど時代に沿った多様性に関する表現についてのチェックも求められることが増えており、多様な視点で確認を行う必要がありますので、多岐にわたる内容に目を走らせながら業務を進めています。


(お仕事で使用するアイテムを見せていただきました!)



今のお仕事の業界に入った理由は何ですか?

前職での経験が大きなきっかけになりました。


前職では、毎月1回数ページの月刊誌を発行しており、そこで編集や取材の他に、一部で校正・校閲も担当していました。


その業務を約1年半ほど続ける中で、私は自分が文章を作ることよりも、人が持つ言葉を最大限に引き出し、その言葉の持つ意味の面白さに魅力を感じるようになりました。


その興味が高まり、言葉に関するスキルをさらに深めたいと思うようになったため、校正・校閲を学べる学校に通うことを決意しました。

仕事が終わった後に、夜間で半年間その学校に通い、知識と技術を学びました。


そして、その学びを活かして現在の仕事にたどり着きました。



どんなお客様(クライアント)が多いのでしょうか?

基本的に、私たちが直接クライアントさまとやり取りすることはありません。やり取りをしても編集者との距離が一番近いですね。クライアント様とは、書かれている情報から把握することが多いです。


クライアント様の年齢層は幅広く、10代の若い方から、90代の高齢の方まで、さまざまな年代や職業の方の文章の校正・校閲を担当しています。ですので、老若男女問わず、多様なクライアント様の文章に触れる機会が多いですね。



校正・校閲というお仕事にはどんな魅力や特徴がありますか?

先ほども少し触れましたが、この仕事にはさまざまな視点から物事を見る力が求められるという特徴があります。


もちろん、基本的な誤字脱字のチェックは大切ですが、さらに重要なのは事実確認です。

例えば、現実の出来事や歴史的な事柄が作品や記事に登場する場合、それがふまえられているかどうかを確認する必要があります。


また、扱う内容は現代のものに限らず、平安時代〜明治時代など、時代物の作品も多く含まれます。そのため、その時代特有の言葉や文体のチェックも欠かせません。さらに、差別表現や多様性に配慮した表現のチェックも必要です。


本来校正という仕事は活版印刷で出版物が印刷されていたころに、活版印刷で組んだ文字を正確に照合して同じものを複製する作業が中心でしたが、現在ではこうした多角的な視点が非常に求められるようになり、仕事の幅が広がっているのを毎日感じます。



お仕事で大事にされていることは何かありますか?

私が最も大事にしているのは、ライターや作家、そして編集者が書いたものをしっかりと尊重することです。


尊重するという言葉にはさまざまな意味が含まれると思いますが、私にとっては、その方々の思いや意図がきちんと伝わるようにサポートすることが重要だと思っています。


具体的には、文章の校正・校閲を通じて、その方が伝えたいことが正確に、かつ間違って読者に伝わらないようにすることを心がけています。


つまり、ただ誤字脱字を指摘するだけでなく、内容の意図を理解し、それを最大限に引き出すことに重きを置いています。


これが、私が最も大切にしていることです。



お客様やクライアントの方から言われて嬉しかったことは何ですか?

先ほどもお話ししたように、私たちは校正作業のなかではライターさんや編集者さんとは、直接やり取りする機会が少ないんですよ。


ただ、仕事を通じて、編集者さんや同じチームで働いている同業者から「こういう指摘をしてくれてありがとう」とか、「著者の方からお礼のメールがあったよ」と伝えられることがあります。


こういったフィードバックは頻繁にあるわけではありませんが、こういった言葉を頂いたときはこの仕事をしていて本当に励みになります。



通常の仕事ではどれくらいの期間がかかるのでしょうか?

案件によりますが、例えば雑誌の仕事の場合、チームの中で分担して作業を行います。


作業時間としては、雑誌に掲載する10〜20ページほどの、ある程度まとまった、例えばエッセイや小説などの仕事であれば、2〜4時間ほどかかることが多いです。


逆に、書籍(単行本、文庫本、新書など)のような大きな案件は、平均的に1人目で見る場合は2〜3週間、2人目で見る場合は1週間ほど、1冊あたり200〜400ページのゲラ※を校正していますね。


※ゲラとは、印刷物の校正刷りのこと。出版物のレイアウト通りに原稿の文字や図表を組んだもの。



最近取り組んでいることを教えてください。お仕事以外でも構いません。

仕事以外で取り組んでいることとして、私は「kotonaru」という名前で活動を行っています。


ここでは、自己表現をサポートする活動を中心に行っており、その中では言葉や色に関するアドバイスを提供しています。


具体的には、ウェブページやSNSを運営している方々に対し、自分らしい発信の方法についてアドバイスを行っています。


言葉を通じてどのように自分を表現し、伝えていくかをサポートすることが主な内容です。


また、「kotonaru人」というシリーズで、さまざまな業界の方々にインタビューを行い、その活動や自己表現を紹介することにも力を入れています。


これにより、多くの方が自分の活動をより広く知ってもらえるよう、サポートを続けています。


さらに、今後は色に関するサポートにも力を入れる予定です。


例えば、パーソナルカラー診断を通じて、その人の個性を引き出す色を提案したり、ブランドのロゴやウェブページのカラーデザインに関するアドバイスしたりすることを考えています。


このように、言葉と色を通じた自己表現のサポートを両軸に、活動を広げていきたいと思っています。


また、私自身やkotonaruの活動を身近に知っていただくため、今年の3月から、校閲イベントを不定期で開催しています。


2016年に日本テレビ系列で放送された「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」をきっかけに、「校閲」という言葉や仕事がメディアで多く取り挙げられてきたことを取り上げながら、校閲とはなにか?  また実際に、季節に合わせた話題の原稿を校正していただく体験を通して、言葉を発信する面白さや楽しさに触れていただけるものとなっています。



(今年2024年7月に「なってみよう!  校閲ガール」をテーマに開催時のお写真)



「kotonaru」という名前について、由来や意味を教えてください。

「kotonaru」という名前には二つの意味を掛け合わせています。


まず、一つ目は「異なる」という言葉が持つ「さまざま」という意味です。多様性を尊重し、個々の違いを大切にしたいという思いを込めています。


二つ目は、「事成る」という言葉から取ったもので、“事を成し遂げる”という意味を含んでいます。


この二つの意味を組み合わせて、「kotonaru」という名前にしました。


活動のコンセプトとしては、一人ひとりがもつ自分の表現を豊かにし、一人ひとりが自分を理解し、相手を尊重しあい、それぞれの良さを最大限に発揮して、相乗効果が生まれる社会を目指しています。


そのために、一人ひとりの自己実現や目標達成に合わせた支援を行っています。



今後の将来はどのようにしていきたいか、展望はありますか?

今後の展望としては、まずプロの校正者として一人前になりたいと考えています。


この道を極めて、さらに高いスキルを身につけていくことが目標です。


また、個人の活動においては、さまざまな方々の自己表現をサポートし、それぞれの目標や夢を実現できるような支援ができればと思っています。


一人ひとりが自分らしく、自分の目指す方向に進んでいけるように、引き続き力を尽くしていきたいです。



最後に、区民ニュースの読者へ伝えたいことはありますか?

私自身、現在校正・校閲の仕事に携わっており、言葉が持つ力の大きさを日々実感しています。


言葉はただのコミュニケーション手段ではなく、時に人々に大きな影響を与える力を持っています。


だからこそ、日々言葉の力を鍛錬しながら取り組んでいます。


言葉に関心がある方や、興味を持っている方がいらっしゃれば、ぜひ一度お話ししてみたいと思います。


また、言葉や色に関することで何かお困りのことがあれば、気軽にご相談いただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。



インタビュー後記

言葉と色で自己実現や目標達成をサポートする校正者の館脇成美さんにインタビューをさせていただきました。


インタビュー中、館脇さんが言葉を発する際に、適切な表現を慎重に選びながら答えている姿がとても印象的で、日常的に読む書物の裏には、縁の下の力持ちとしての存在があることを実感し、こうした方々がいるからこそ、正しい情報が伝えられているのだと胸が熱くなりました。


私も校閲イベントに参加、自身のサイトの校閲サポートを受けさせていただきました。


(一部をチラ見せ)


初めて見る校正記号に感動しました。

一つずつ、丁寧にご説明いただき、乱雑されていたページが整いました。


また、言葉だけでなく色を使った表現力も持つ館脇成美さんは、まさに「鬼に金棒」と言えるでしょう。


今後のご活躍も心から楽しみにしています。

お問い合わせ

E-mail:tatewaki.narumi@gmail.com

「kotonaru」に関するお問い合わせは、https://lin.ee/TbY3uq4↗︎ まで。


*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました、とお伝え下さい。